第79話 星空の下の約束
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**【フェリシア視点】**
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調印式前夜。
市庁舎の屋上に、フェリシアは一人で立っていた。簡素な木のベンチが置かれているだけの場所。だが、ここが好きだ。街全体が見渡せる。
石畳の道。商店の明かり。大聖堂の鐘楼。そして、準備に追われる市民たちの姿。
「ここ、私のお気に入りの場所なの」誰に言うでもなく、呟いた。「王宮はないけど、街全体が見渡せる」
風が吹く。銀色の髪が揺れる。
明日だ。明日、調印式が行われる。セレスティナ王国とノクテルヴァルトが統合し、ノヴァ・ステラ民主連合王国が誕生する。勇者と魔王が、共に国を治める。
「不思議だよね」また呟く。一年前まで、想像もしなかった。ヴァルちゃんと一緒に国を築くなんて。
「お姉さま」後ろから声がした。
振り返ると、ヴァルブルガが立っていた。紅い瞳が、こちらを見つめている。
「来てたの?」
「うむ。お姉さまがここにいると思ってな」
ヴァルブルガが隣に座る。二人で星空を見上げた。双子星が、特に明るく輝いている。
ヴァルブルガが街を見下ろす。「民の暮らしが見える。良い場所じゃ」
「でしょう?」フェリシアは微笑んだ。
下の街では、アルピリア連邦の商人とノクテルヴァルトの職人が、一緒に明日の準備をしている。もう、区別はない。皆、ノヴァ・ステラの民だ。
「明日、この市庁舎で調印ね」フェリシアは言った。「豪華な王宮じゃなくて、申し訳ないけど...」
「何を言う」ヴァルブルガが遮った。「民と共にある場所こそふさわしい」
フェリシアは振り返った。「アルピリア連邦とノクテルヴァルト、長い対立だったのに。まさか私たちが、それを終わらせることになるなんて」
「運命じゃな。お姉さまと出会えたことも」ヴァルブルガが頷いた。
二人は手を繋いだ。温かい。
「ヴァルちゃん、約束してほしいことがあるの」
「何じゃ?」
「これから先、どんな困難があっても」フェリシアは真剣な表情で続けた。「王宮ができても、できなくても。贅沢でも、質素でも。必ず一緒に乗り越えよう」
ヴァルブルガの紅い瞳が、じっと見つめてくる。そして、握り返してきた。
「当然じゃ」力強い声。「わらわたちに必要なのは立派な建物ではない。この絆があれば、どこでも統治できる」
フェリシアは涙が溢れそうになった。だが、笑顔で堪える。
「ありがとう、ヴァルちゃん」
二人は立ち上がり、街を見下ろした。
市庁舎を降りる階段で、下から笑い声が聞こえてきた。職員たちが残業しているようだ。
「明日の準備、間に合うかな」
「大丈夫だ、みんなで協力すれば」
「そうだな。もう、敵じゃないんだから」
アルピリア連邦側の職員と、ノクテルヴァルト側の職員が、一緒に書類を整理している。もう、区別はない。
一階に降りると、職員たちがこちらに気づいた。
「あ、フェリシア様!」
「ヴァルブルガ様も!」
一斉に頭を下げる。
「遅くまでお疲れ様です」フェリシアは微笑んだ。「明日、よろしくお願いします」
ヴァルブルガも続ける。「頼んだぞ」
職員たちは顔を見合わせた。そして、一斉に声を上げた。
「こちらこそ!」
アルピリア連邦側の職員も、ノクテルヴァルト側の職員も、一緒に。
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**【視点切り替え:フェリシア → ヴァルブルガ】**
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ヴァルブルガは職員たちの笑顔を見た。もう、区別はない。皆、ノヴァ・ステラの民だ。
「お姉さま」フェリシアを見る。「わらわたち、良い国を作れそうじゃな」
フェリシアが頷いた。「ええ。きっと」
二人は市庁舎を出た。夜風が心地よい。空を見上げると、双子星がさらに明るく輝いていた。
「明日、頑張ろうね」
「うむ」ヴァルブルガは力強く頷いた。
明日。新しい国が生まれる。お姉さまと共に、歩んでいく。
宿に戻り、ヴァルブルガは窓から夜空を見上げた。双子星が輝いている。
明日だ。明日、新しい国が生まれる。わらわとお姉さまの国が。
「頑張るぞ」自分に言い聞かせる。
お姉さまと一緒なら、きっと大丈夫。どんな困難も、一緒に乗り越えられる。
ベッドに横になり、目を閉じた。明日への期待と、少しの不安を抱えながら。だが、心は穏やかだった。お姉さまがいる。師匠がいる。仲間たちがいる。
「きっと、大丈夫じゃ」呟いて、眠りについた。
双子星の光が、窓から差し込んでいた。




