第74話 勇者の応戦、それでも誤解は解けず
## 【フェリシア視点】9-6 勇者の応戦、それでも誤解は解けず
戦闘開始から10分後。
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**【視点切り替え:フェリシア → 千景】**
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千景は攻撃を続けながら、怒りを募らせていた。
フェリシアは光の障壁を展開しながら、必死に説明を続けていた。
「誤解です!私たちは師匠の弟子で、修行のために一緒にいただけです!」
千景が九尾を振り回した。尻尾が地面を叩き、衝撃波が広がる。
「嘘じゃ!修行でこんなに匂いが染み付くか!朝から晩まで一緒におったろう!夜も一緒じゃったろう!」
フェリシアの顔が赤くなった。
「それは修行で...夜は別々の部屋です!でも師匠は私の部屋によく忍び込んで...」
千景の目が吊り上がった。
「忍び込む!?やはり!」
フェリシアが慌てて訂正した。
「違います!夜襲の訓練です!突然襲われても対応できるようにという修行で...」
千景が激昂した。
「夜這いを修行と言い張るか!」
巨大な尻尾の一撃が、フェリシアの障壁を粉砕した。
フェリシアが吹き飛ばされ、荒野の岩に激突する。
「く...!千年級の妖怪相手では...」
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**【視点切り替え:千景 → フェリシア】**
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フェリシアは内心で愚痴った。
(説明すればするほど悪化してる!師匠のせいでとんだとばっちり!)
ドラーゲンが助けに入ろうとした。
しかし千景が妨害した。
「お主は後じゃ!まず小娘を片付ける!」
フェリシアが《光の一閃》を放った。光の剣が千景に向かって飛ぶ。
しかし千景はひらりと避けた。
「その程度の魔法、千年前から見飽きておる」
ヴァルブルガが駆け寄ろうとした。
「お姉さま!」
フェリシアが手を挙げて制止した。
「来ないで!これは私が何とかしないと」
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**【視点切り替え:フェリシア → 千景】**
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千景が鼻を鳴らした。
「健気じゃな。ドラーゲンに騙されて哀れじゃ。お主のような小娘、あやつは100人は弄んでおるぞ」
フェリシアが憤慨した。
「師匠はそんな人じゃありません!確かに修行と称してセクハラはしましたけど...」
千景の動きが止まった。
「セクハラ!?」
フェリシアが必死に弁明した。
「い、いえ!戦闘訓練の一環で...急所の位置を教えるために触っただけで...」
千景が冷笑した。
「急所ねぇ。胸とか尻とかかの?」
フェリシアが真っ赤になって黙り込んだ。
千景が確信した。
「図星じゃな!やはりドラーゲンめ!」
やはり、ドラーゲンは若い女に手を出していた。40年前のあの言葉は真実だったのだ。
九本の尻尾が同時に襲いかかった。
フェリシアが必死に回避する——しかし、次第に追い詰められていく。
グルカが遠くから見守っている——街は無事だが、戦いの激しさは尋常ではない。
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**【視点切り替え:千景 → フェリシア】**
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フェリシアが焦った。
(勝てない...千年級の妖怪は、私の力では...)
フェリシアが最後の力で大規模な光の結界を張った。しかし、結界にひびが入り始めている。
千景が止めを刺そうと、巨大な妖狐火を作り出した。青白い炎が、月よりも大きく膨れ上がる。
「これで終わりじゃ、ドラーゲンの愛人よ」
フェリシアが観念した——その時。
竜の咆哮が響き渡った。
「わらわのお姉さまに手を出すな!」
紅い竜が空から降りてきた。体長20メートル——ヴァルブルガの竜化形態だった。
竜の炎が、千景の妖狐火を相殺する。
ヴァルブルガがフェリシアを守るように前に立った。
「お姉さま、大丈夫か?」
フェリシアが立ち上がった。
「ヴァルちゃん...ありがとう。一緒に戦いましょう」
二人が頷き合った。
フェリシアが光の剣を構え、ヴァルブルガが竜の炎を準備する。自然と連携が始まった。
ヴァルブルガが上空から炎のブレスを放つ。フェリシアが地上から光の矢を放つ。完璧なタイミングでの挟撃——互いの攻撃を邪魔しない、絶妙な間合い。
千景が九尾を器用に使い分けて両方を防いだ。
「ほう、息が合っておるな。どれだけ親密なのじゃ。二人とも!ドラーゲンを誑かしおって!」
フェリシアが叫んだ。
「だから違います!私たちは姉妹のような...」
千景が鼻で笑った。
「姉妹?それがもっと怪しい!ドラーゲンの好みじゃ!姉妹丼というやつじゃろう!」
ヴァルブルガが首を傾げた。
「姉妹丼?何じゃそれは」
フェリシアが真っ赤になった。
「そんな関係じゃありません!」
二人が《調和の螺旋》を発動しようとした。
光と炎が螺旋状に絡み合い、強大な力を生み出す——
しかし千景が尻尾の一本で地面を叩いた。衝撃波で陣形が崩れる。
「甘い!千年の経験を舐めるでない」
千景の九本の尻尾が、それぞれ異なる妖術を発動した。幻影、呪縛、魅了、炎、氷、雷、風、土、闇——九種類の攻撃が、同時にフェリシアとヴァルブルガを襲う。
フェリシアが幻影に翻弄され、ヴァルブルガが呪縛に捕らわれる。
「くっ...多彩すぎる!」
千景が感情を爆発させた。
「40年も想い続けたわらわの気持ちを踏みにじりおって!東方から西方まで追いかけて、やっと見つけたと思えば、若い女を二人も侍らせて!」
ドラーゲンが叫んだ。
「だから誤解だと言っているだろう!」
千景が振り返った。
「黙れ!お主の言葉など信用できぬ。『若い女の子が好み』と言って逃げたくせに」
フェリシアとヴァルブルガは必死に戦うが、次第に押され始めていた。
千年級の妖怪——その力の差は、絶望的なまでに大きかった。




