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追放された最強おっさん魔族、女勇者を鍛えていたら国が分裂! 最終課題「魔王にセクハラしてこい」でどうしてこうなった!?  作者: よん


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第72話 平原の夕暮れ、運命の瞬間

## 【フェリシア視点】9-4 平原の夕暮れ、運命の瞬間



国旗決定の日の夕刻。


豊穣の砦の野外テラスで夕食会が開かれていた。


テーブルには緑牙平原の豊かな収穫物が並んでいる。黄金色の麦のパン、採れたての野菜、熟成されたチーズ。


フェリシアはヴァルブルガの隣に座り、同じ皿から料理を分け合っていた。


「お姉さま、このチーズ美味しいのじゃ」


「本当ね。グルカ領の食べ物は素朴だけど、心がこもってる」


グルカが上機嫌で言った。


「今日は実り多い一日だった。国旗も決まり、統合への道筋も見えた」


アルマン伯爵が資料を見ながら言った。


「統合の準備は順調です。民衆の支持も高い」


カルロも頷いた。


「各地から好意的な反応が届いています」


ヴァルブルガが急に不安そうな顔をした。


「でも、不安もあるのじゃ。わらわにできるかな」


フェリシアが優しくヴァルブルガの頭を撫でた。


「大丈夫よ。ヴァルちゃんと一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。だって、私たちは双子星でしょう?」


ヴァルブルガの目が潤んだ。


「お姉さま...」


ヴァルブルガが立ち上がってフェリシアに抱きついた。


「お姉さま大好き!」


フェリシアは苦笑しながらも、ヴァルブルガを優しく抱きしめた。


周囲が温かい目で見守っている。


ドラーゲンが苦笑した。


「まったく、人前でも遠慮がないな」


カルロが微笑んだ。


「でも、これが国民に安心感を与えるんです。二人の絆の強さが、統合への信頼を生んでいます」


フェリシアは夕日に染まる緑牙平原を見た。


黄金色の麦畑が地平線まで続いている。


美しい景色、温かい仲間、そして愛する妹。


すべてが完璧だった。


---


**【視点切り替え:フェリシア → 千景】**


---


同時刻、街を見下ろす丘の上。


千景が狐の姿で丘に到着した。舌を出して荒く息をしている。


「はぁ...はぁ...街じゃ、やっと街じゃ」


緑牙平原を3日間走り続けて、疲労困憊だった。


「ドラーゲンめ、どこにおる...」


風向きが変わった。街から夕食の香りが漂ってくる。


千景の鼻がぴくりと動いた。


「この匂い...」


それは食べ物の香りではなかった。影魔法の残り香——ドラーゲン独特の魔力の香りだ。


千景が人型に戻った。狐耳をぴんと立てて集中する。


「影魔法の残り香...間違いない、ドラーゲンの魔力じゃ」


さらに風に乗って、より濃い魔力の香りが届いた。


「いや、一人じゃない...複数から同じ匂いが?」


千景が目を凝らして街の野外テラスを見下ろした。遠くに人影が見える。フェリシアとヴァルブルガが抱き合っている姿が見えた。


「あの二人から特に強く...長期間一緒におったな」


そして、テーブルの端に座っているドラーゲン本人の姿を確認した。


「おった!あそこじゃ!」


千景の尻尾が一本、二本と増えていく。


「40年...50年か?とにかく長かった。今度こそ逃がさぬぞ、ドラーゲン!」


しかし、千景はすぐには動かず状況を観察した。長年の修行で、少しは慎重になっていた——ほんの少しだけ。


「む、宴の最中か。あの女どもは弟子か?まあよい、油断しておる今が好機じゃ」


千景が九尾まで増やして気合を入れた。


「突撃じゃ!」


千景が勢いよく駆け出した——そして、足元の石につまずいた。


「あっ」


バランスを崩した千景が、派手に転がり始めた。


「きゃああああ!」


叫び声が平原に響く。丘を転がり落ちながら、千景は必死に方向を制御しようとした。しかし、勢いは止まらない。


「あああああ、止まらぬぞ!」


---


**【視点切り替え:千景 → フェリシア】**


---


野外テラス。


ドラーゲンがピクリと反応した。


「この気配...まさか」


グルカが尋ねた。


「どうした?」


ドラーゲンが立ち上がった。


「ちょっと、確認してくる」


フェリシアが不思議そうに尋ねた。


「師匠?」


遠くから何かが転がってくる音が聞こえてきた。


そして、女性の叫び声。


「きゃああああああ!」


フェリシア視界の端に、何かが高速で転がってくるのが見えた。


銀色の髪——いや、狐の耳?


そして、九本の尻尾。


「え——」


フェリシアが反応する前に、転がってきた人物がテラスに突入した。


テーブルを吹き飛ばし、料理が宙を舞う。


千景が派手に転んで、ドラーゲンの目の前で停止した。


「いたた...」


千景が顔を上げた。


目の前には、40年ぶりに見るドラーゲンの顔。


「...ドラーゲン」


ドラーゲンが深い溜息をついた。


「千景...お前、まだ追いかけていたのか」


千景がゆっくりと立ち上がった。


九本の尻尾が怒りで逆立っている。


「40年じゃ、ドラーゲン。40年間、わらわを逃げ回りおって」


フェリシアは状況が理解できなかった。


師匠の知り合い?九尾の狐——それはかなり強力な妖怪のはずだ。そして、その怒りの矛先は完全にドラーゲンに向いていた。


千景が拳を握った。


「覚悟するがよい、ドラーゲン。今のわらわは、40年前のわらわではないぞ」


ドラーゲンが両手を挙げた。


「落ち着け、千景。話せば——」


「問答無用じゃ!」


千景の全身が、強大な妖力で輝き始めた。


フェリシアは本能的に戦闘態勢に入った。


状況は分からないが、師匠が危険にさらされている——それだけで十分だった。


運命の邂逅が、最悪の形で始まった。


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