表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された最強おっさん魔族、女勇者を鍛えていたら国が分裂! 最終課題「魔王にセクハラしてこい」でどうしてこうなった!?  作者: よん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/94

第58話 獣人の森、温かき歓迎

## 【フェリシア視点】7-6 獣人の森、温かき歓迎



銀森を出発してから3日が経ち、使節団の馬車は緑豊かな森の中を進んでいた。


ファウレンヘイム森の盟約——エルフの銀森とは対照的に、ここは温かみのある自然の調和が感じられる場所だった。整備されすぎていない自然のままの小道、古木と若木が混在する森、そして何より、生き物たちの声が聞こえてくる。


「なんだか心が軽やかになるわね」フェリシアが馬車の窓から外を眺めながら呟いた。


銀森の神秘的な美しさも素晴らしかったが、ここファウレンヘイムには別種の魅力があった。自然体で受け入れてくれるような、包容力のある雰囲気だった。


「お姉さま、子供たちが見えるのじゃ」


ヴァルブルガが指差した先には、木陰から好奇心いっぱいの瞳でこちらを見つめる獣人の子供たちの姿があった。


馬車が集落に入ると、子供たちが駆け寄ってきた。


「勇者様だ!」


「魔王様も一緒!」


無邪気な声で手を振る子供たち。その中には狼の耳を持つ子、兎の耳を持つ子、熊のような丸い耳の子もいる。


フェリシアとヴァルブルガは馬車から降りて手を振り返した。


「こんにちは、みんな」


「元気な子供たちじゃのう」


子供たちの純粋な歓迎に、二人の顔に自然な笑顔が浮かんだ。エルフたちの冷ややかな視線とは正反対の、心からの歓迎だった。


---


**【視点切り替え:フェリシア → グウィン】**


---


大樹の根元に設けられた族長会議場で、グウィン老狼が温かく出迎えた。


銀灰色の毛並みを持つ狼の獣人は、既に高齢だが、その瞳には深い知恵と慈愛が宿っている。


「ようこそファウレンヘイムへ。エルドリック殿から連絡は受けている」


グウィンの声は低く、包容力に満ちていた。まるで孫を迎える祖父のような温かさがある。


「なんでも、見事に試練を乗り越えたそうだな」銀灰色の毛並みを揺らして笑った。


「はい、お陰様で」フェリシアが丁寧に答えた。


エルドリック大公からの報告では、二人の絆と協力が特に印象的だったという。試練の詳細も含めて、好意的な評価が伝えられていた。


「それにしても」グウィンが二人を見回した。「実に微笑ましい。まるで本当の姉妹のようだ」


---


**【視点切り替え:グウィン → ヴァルブルガ】**


---


歓迎の宴が始まると、ヴァルブルガは獣人たちの料理に目を輝かせた。


特に蜂蜜をたっぷり使った焼き菓子は絶品で、頬張りながら幸せそうに笑っている。


「おいしいのじゃ!」


その時、口元に蜂蜜がついているのに気づいたフェリシアが、自然にハンカチで拭いてあげた。


「ヴァルちゃん、子供みたいね」


「お姉さまだって蜂蜜好きじゃないか」ヴァルブルガが微笑み返す。


その何気ない仕草を見て、グウィンが目を細めた。


「実に微笑ましい。まるで本当の姉妹のようだ」


周りで見ていた獣人たちも頷いている。熊族のボルグ族長が素朴な疑問を口にした。


「別々の国の代表なのに、不思議な関係だな」


兎族のミーナ族長が温かい笑顔で答えた。


「でも素敵よ。敵対してきた勇者と魔王がこんなに仲良しなんて」


---


**【視点切り替え:ヴァルブルガ → グウィン】**


---


グウィンは長年の経験から、二人の関係の特別さを感じ取っていた。


「二つの国が家族のように結ばれるのは良いことだ」グウィンが哲学的に語った。


「我々獣人も元々は異なる部族だった。しかし共に生きることを選んだ」


その言葉に深い説得力があった。ファウレンヘイム森の盟約は、まさに異なる種族が協力して築き上げた共同体だった。


狼族、熊族、兎族、鹿族、そして多くの小さな部族が一つになって、平和な社会を作り上げている。


ヴァルブルガが「わらわたちも、ずっと一緒がいいのじゃ」とフェリシアに抱きついた。


フェリシアが優しく抱き返す。


「そうね、離れたくないわ」


その自然な愛情表現に、獣人たちは微笑ましそうに見守っていた。偏見のない純粋な目で、新しい関係性を受け入れている。


ドラーゲンが実務的な観点から補足した。


「実務的にも、協力関係の深化は重要ですな」


しかしグウィンは首を振った。


「いや、これは協力を超えた何かだ。新しい形かもしれん」


---


**【視点切り替え:グウィン → リコル】**


---


若き狼戦士リコルは、複雑な気持ちで宴の様子を見守っていた。


フェリシアへの憧れは確かにあった。美しく、勇敢で、優しい心を持つ勇者に惹かれるのは自然なことだった。


しかし、フェリシアとヴァルブルガの関係を見ていると、自分の入る余地などないことがよく分かった。


二人は本当に姉妹のように仲が良く、お互いを心から大切にしている。その絆に割って入ろうなどとは、とても思えなかった。


(あんな風に想い合える関係って、素敵だな)


リコルは素直に思った。恋心を諦めるのは少し寂しかったが、それ以上に二人の幸せを願う気持ちが強かった。


「リコル、どうかしたか?」グウィンが気づいて声をかけてきた。


「いえ、お二人を見ていて、良い関係だなと思っただけです」


グウィンが満足そうに頷いた。


「そうだな。ああいう絆は滅多に見られるものではない」


---


**【視点切り替え:リコル → フェリシア】**


---


夕方、族長会議でグウィンが正式に発表した。


「両国の連邦加入を全面支持する」


その言葉は重く、温かかった。エルフの条件付き支持とは対照的な、心からの歓迎だった。


「ありがとうございます」フェリシアが深く頭を下げた。


「お世話になったのじゃ」ヴァルブルガも一緒に礼をする。


カルロが商人らしい喜びを表現した。


「これで交易路も安定しますね。ファウレンヘイムの毛皮と薬草は、両国で高く評価されることでしょう」


ドラーゲンも満足げだった。


「獣人との同盟は、軍事的にも心強い。特に森林戦では、これ以上頼りになる仲間はいません」


しかし、フェリシアにとって最も嬉しかったのは、政治的な利益よりも、ここで感じられる心の温かさだった。


獣人たちは偏見を持たず、素直に二人の関係を受け入れてくれた。それがどれほど貴重なことか、エルフの国を経験した今だからこそよく分かる。


「今夜はゆっくり休んでいってください」グウィンが優しく言った。


「明日の朝には、とっておきの場所をご案内しましょう」


フェリシアとヴァルブルガは手を繋いで宿舎へ向かった。温かい歓迎を受けて、心も軽やかだった。


獣人の子供たちが最後まで手を振って見送ってくれる中、二人は安らかな夜を迎えることができそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ