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追放された最強おっさん魔族、女勇者を鍛えていたら国が分裂! 最終課題「魔王にセクハラしてこい」でどうしてこうなった!?  作者: よん


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第53話 銀森への道、高慢なる出迎え

## 【フェリシア視点】7-1 銀森への道、高慢なる出迎え



アルカ・ポリス連邦首都アルカを出発してから2日が経ち、使節団の馬車は次第に文明から離れた道を進んでいた。


午前中までは整備された石畳の街道だったが、午後に入ると未舗装の森林道となり、やがて巨大な樹々に囲まれた神秘的な領域へと入っていく。道の両側に立ち並ぶ古木は、どれも樹齢数百年は軽く超えているように見えた。


「すごい森ね……」


フェリシアは馬車の窓から外を眺めながら呟いた。紺色の戦術装束に身を包んだ17歳の少女の瞳には、未知の領域への好奇心と、外交使節としての緊張感が宿っている。


「お姉さま、葉っぱが光っておるのじゃ!」


隣に座るヴァルブルガが、窓に顔を押し付けるようにして外を見ていた。黒いゴシックドレス姿の魔王は、17歳らしい純粋な驚きを表情に浮かべている。


確かに、森の樹々の葉は普通の緑色ではなかった。銀色の光沢を持ち、午後の陽光を受けてまるで宝石のように輝いている。


「シェリフィールの銀森領に入ったのですね」


護衛馬車からドラーゲンの声が聞こえてきた。東方の絹の着流しを着た140歳の男性は、飄々とした態度を保ちながらも、この場所について何かを知っているようだった。


「銀森……確かに文字通りの銀色ですね」フェリシアが感嘆した。


「エルフたちの魔法によって、この森全体が聖域化されているんです」カルロが資料を見ながら説明した。「千年以上前から続く、彼らの叡智の結晶とも言えるでしょう」


やがて、馬車は森の奥深くで停止した。


御者が緊張した声で報告する。


「お客様、前方に検問所が見えます」


フェリシアは馬車から降りて前方を見つめた。森の中に突然現れたのは、半透明の光の壁だった。まるで見えない結界が張り巡らされているかのように、空気が微かに歪んでいる。


そして、その結界の前に立っていたのは——


「止まれ。ここから先はシェリフィールの銀森領。短命種は原則立ち入り禁止です」


冷淡な声で告知したのは、美しい女性エルフだった。長い金髪を後ろで束ね、エルフ特有の尖った耳を持つ彼女は、上質な緑の軍装に身を包んでいる。その立ち振る舞いには、900年という長い歳月を生きた者の威厳があった。


「私はシルヴィア。銀森の国境守備隊長です」


シルヴィアの瞳には、明らかな軽蔑の色が浮かんでいた。人間と魔族の混成使節団を見下すような視線である。


「短命種……ですか」フェリシアが困惑した。


---


**【視点切り替え:フェリシア → ドラーゲン】**


---


ドラーゲンは馬車から降りると、シルヴィアに向かって古代エルフ語で話しかけた。


『我々は連邦の使者として参った。エルドリック・シルヴァヌス大公との面会を求める』


流暢な古代エルフ語に、シルヴィアの表情が僅かに変化した。しかし、すぐに冷淡な態度を取り戻す。


「古い言葉を知っているようですが、猿真似に過ぎません」


シルヴィアがそう答えた時、森の奥から別の声が響いた。


「ほう、猿真似で我らの言葉を話すか」


現れたのは、銀色の長髪を風に靡かせた威厳ある男性だった。1200歳のエルドリック・シルヴァヌス大公その人である。


外見は30代の人間のようだが、その瞳には長い年月を生きてきた者の深い叡智と——そして傲りが宿っていた。荘厳な装束を纏い、手には古代の杖を携えている。


「内陸の魔王と南海の人間」エルドリックが嘲笑するように言った。「どちらも千年生きてから出直すがよい」


ドラーゲンは表情を変えなかった。長年の経験から、エルフの本質を理解していたからである。


(相変わらず高慢な連中だ。だが、これも予想の範囲内だ)


---


**【視点切り替え:ドラーゲン → フェリシア】**


---


フェリシアは深く頭を下げて、外交官としての礼儀を尽くした。


「エルドリック・シルヴァヌス大公、お目にかかれて光栄です。アルピリア連邦代表のフェリシア・アルヴィスです」


その丁寧な挨拶にも関わらず、エルドリックの表情は変わらない。むしろ、短命種が自分に平身低頭することを当然のように受け取っていた。


ヴァルブルガが小声で、フェリシアの耳元だけに聞こえるように呟いた。


「じじいは頭が固いのう……」


「ヴァルちゃん、しっ!」


フェリシアが慌てて窘めたが、エルドリックの鋭い聴力がその言葉を捉えていた。


「魔王とやら、何か言ったか?」


エルドリックの視線がヴァルブルガに向けられた。その瞳には明らかな威圧感がある。


しかし、ヴァルブルガは動じなかった。即座に無邪気な笑顔を浮かべる。


「いえ、千年も生きられて素晴らしいと申しておりました」


見事な誤魔化しだった。フェリシアは内心でヴァルブルガの機転に感心した。


エルドリックは鼻で笑った。


「まあよい。一時的な入国は許可してやろう。ただし、我らの優越を理解するがよい」


結界に杖を向けると、光の壁に通路が開かれた。


「しかし、我が領土での行動には制限がある。勝手な真似は許さん」


---


**【視点切り替え:フェリシア → ヴァルブルガ】**


---


ヴァルブルガは内心でむっとしていた。


(何が優越じゃ。わらわの方が魔王として格上なのに……)


しかし、フェリシアが困らないよう、ぐっと我慢した。お姉さまが外交で苦労しているのに、自分が感情的になってはいけない。


「ありがとうございます、大公様」


ヴァルブルガが一応の礼を示した。その言葉には僅かに棘があったが、表面上は恭順を装っている。


---


**【視点切り替え:ヴァルブルガ → エルドリック】**


---


エルドリックは使節団を値踏みするような目で見回していた。


(短命種の分際で、よくもここまで来たものだ)


1200年という長い歳月を生きてきたエルドリックにとって、人間の17歳など赤子同然だった。魔族の17歳も同様である。せいぜい100年程度しか生きられない存在に、何を期待できるというのか。


(だが、連邦の一員としての義務がある。最低限の礼は払わねばならぬ)


エルドリックの胸の奥には、苛立ちと義務感が入り混じっていた。


---


**【視点切り替え:エルドリック → フェリシア】**


---


一行が銀森に足を踏み入れると、周囲からエルフたちの視線を感じた。


木陰や森の奥から、好奇心と軽蔑の入り混じった眼差しが注がれている。短命種の使節団など、彼らにとっては珍しい見世物に過ぎないのだろう。


「見世物じゃないのに……」フェリシアが小さく溜息をついた。


「お姉さま、気にすることはないのじゃ」ヴァルブルガが優しく声をかけた。「わらわたちは堂々としていればよい」


その言葉に、フェリシアの心が少し軽くなった。ヴァルブルガがいてくれれば、どんな困難でも乗り越えられる気がする。


ドラーゲンが後方から声をかけた。


「エルフというのは、こういう種族なんです。悪気があるわけではない。ただ、長命であることが彼らのアイデンティティなんですよ」


カルロが商人らしい現実的な視点で付け加えた。


「とはいえ、交渉は難航しそうですね。相手の価値観を理解した上で、慎重に進める必要があります」


エルドリックが先頭を歩きながら振り返った。


「我が領土では、我らの流儀に従ってもらう。明日から始まる試練も、その一環だ」


「試練?」フェリシアが首を傾げた。


「そうだ。短命種には我らの価値を理解する能力があるかどうか、確認する必要がある」


エルドリックの言葉には、明らかな挑戦の意味が込められていた。


ヴァルブルガが小声でフェリシアに呟いた。


「面倒なじじいじゃのう……」


「ヴァルちゃん、今度は聞こえちゃうわよ」フェリシアが苦笑いした。


しかし、二人の心には同じ思いがあった。どんな試練であろうと、一緒に乗り越えてみせる。それが、1部から続く彼女たちの絆だった。


銀色の葉が風に揺れ、神秘的な光を放つ森の中を、使節団は歩き続けた。明日から始まる試練がどのようなものなのか、まだ誰も知らない。


しかし、フェリシアとヴァルブルガには確信があった。二人で力を合わせれば、どんな困難も必ず乗り越えられる。その絆こそが、彼女たちの最大の武器なのだから。


エルフたちの軽蔑の視線も、エルドリックの傲慢な態度も、今は気にならなかった。大切なのは、お互いがそばにいることだった。


夕陽が銀の葉を黄金色に染める中、使節団は宿舎へと向かった。明日から始まる新たな試練への準備を整えるために。

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