表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された最強おっさん魔族、女勇者を鍛えていたら国が分裂! 最終課題「魔王にセクハラしてこい」でどうしてこうなった!?  作者: よん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/94

第50話 合同使節団の出発

## 【フェリシア視点】6-6 合同使節団の出発



アルピリア連邦暫定首都ラゴマジョレの中央広場は、春の早朝から活気に満ちていた。


かつてセレスティナ王国の要塞都市として知られたこの街は、今やアルピリア連邦の暫定首都として新たな歴史を刻み始めている。中央広場に集まった市民たちの表情には、混乱と不安を乗り越えた希望の光が宿っていた。


フェリシアは紺色の戦術装束に身を包み、広場に設置された特設壇上に立っていた。アッシュベージュブロンドの髪を後ろで束ね、精悍なツリ目には新たな任務への決意が込められている。17歳の少女とは思えない政治的成熟を見せる彼女だったが、今日は特別な緊張感を抱いていた。


隣には、黒を基調としたゴシックドレス姿のヴァルブルガが立っている。小柄な体躯に竜の角と立派な尻尾を持つ魔王は、17歳らしい好奇心を瞳に輝かせながらも、統治者としての威厳を保っていた。


「両国それぞれに使者を送るより、合同使節団の方が効率的です」


アルマン伯爵が、手入れの行き届いた銀髪を整えながら最終確認を行っていた。50代後半の彼は、アルピリア連邦の実質的政治指導者として、この外交使節の重要性を誰よりも理解している。


「今回の使節団は、我が同盟の結束を世界に示す絶好の機会でもあります」


フェリシアは頷いた。


「アルピリア代表として、責任を持って任務を果たします」


「わらわも、ノクテルヴァルト代表として、フェリシアお姉さまと共に頑張るのじゃ!」


ヴァルブルガの元気な声に、広場の市民たちから温かい拍手が起こった。


二人が向かう先に置かれた豪華な馬車は、まさに両国の統合を象徴する逸品だった。アルピリア連邦の青と銀、ノクテルヴァルト魔王領の深紅と黒。二つの国の紋章が巧妙に組み合わされたデザインが、車体全体を美しく彩っている。


「お姉さま、初めての遠出じゃ! 楽しみなのじゃ!」


ヴァルブルガが目を輝かせながら馬車に乗り込む。その素直な喜びに、フェリシアの緊張も少し和らいだ。


「ヴァルちゃんと一緒なら心強いわ」


フェリシアが優しくヴァルブルガの頭を撫でた。その仕草は、まるで本当の姉のようで、二人の関係の深さを物語っている。


「二人とも、頼もしいですね」


護衛馬車から声をかけたのは、東方で手に入れた絹の着流しを着たドラーゲンだった。140歳の壮年男性は、飄々とした態度を保ちながらも、何故か表情に翳りが見える。


「何故か背筋が寒い……東から嫌な風が吹いている」


ドラーゲンの呟きに、馬車の準備をしていた者たちが振り返った。


「師匠、どうかされましたか?」フェリシアが心配そうに声をかけた。


「いや、なんでもない。気のせいだろう」ドラーゲンは苦笑いを浮かべた。


しかし、その心の奥底では、説明のつかない不安が渦巻いていた。まるで40年前の記憶が蘇ろうとしているような、嫌な予感。


「交易路の可能性は無限大です!」


興奮した声を上げたのは、経済資料を山のように抱えたカルロ・ヴェンティだった。40代半ばの商人は、この外交使節がもたらす経済効果に胸を躍らせている。


「アルカ・ポリス連邦との交易協定が成立すれば、両国の発展は飛躍的に進むでしょう」


カルロの商人らしい実利的な視点は、この使節団の経済面での重要性を改めて強調していた。


「共同元首の初の外遊、失敗は許されん」


グレイウォル将軍が警護部隊の最終確認を行っていた。銀灰色の豊かな体毛を持つ狼型ファウレーンの彼は、魔王軍将軍として、また同盟軍総司令官として、二人の安全に絶対的な責任を負っている。


「護衛兵20名、全員が精鋭です。何があっても、お二人をお守りいたします」


グレイウォルの実直で力強い言葉に、フェリシアは安堵した。


「グレイウォル将軍がいてくださるなら安心です」


「わらわのモフモフ将軍じゃな!」ヴァルブルガが嬉しそうに言った。


グレイウォルは苦笑いを浮かべながら、深々と一礼した。


---


**【視点切り替え:フェリシア → 市民たち】**


---


広場に集まった市民たちの間では、複雑な感情が交錯していた。


「勇者様! 魔王様!」


そんな声が上がるが、市民たちは新しい呼び方に戸惑いを見せている。つい数か月前まで、勇者と魔王は敵同士だった。それが今では、二人並んで同じ馬車に乗って旅立とうとしている。


「本当に大丈夫なのかな……」


「でも、あの二人なら……」


「フェリシア様は、私たちを救ってくださった」


「魔王様も、思っていたより優しそうだし……」


市民たちの声には、不安と希望が入り混じっていた。だが、馬車の窓から手を振る二人の姿を見て、その表情は次第に和らいでいく。


---


**【視点切り替え:市民たち → ヴァルブルガ】**


---


馬車の中で、ヴァルブルガは抑えきれない興奮を見せていた。


「お姉さま、本当に楽しみなのじゃ! 初めてこんなに遠くに行くのじゃ!」


竜の尻尾が嬉しそうにふわふわと揺れている。魔王としての威厳も大切だが、17歳の少女としての好奇心の方が勝っていた。


「ヴァルちゃんと一緒の旅なら、きっと素晴らしいものになるわ」


フェリシアが微笑みながら答えた。外交使節という重責はあるが、ヴァルブルガと一緒にいることで、心に安らぎを感じていた。


「お姉さまと一緒なら、どこまでも行けるのじゃ!」


ヴァルブルガの無邪気な言葉に、フェリシアの胸が温かくなった。


---


**【視点切り替え:ヴァルブルガ → ドラーゲン】**


---


護衛馬車の中で、ドラーゲンは再び東の方角を振り返った。


「……気のせいか」


首を傾げながら呟くが、不安は消えない。何かが近づいている。それも、自分にとって非常に厄介な何かが。


(40年前の東方での出来事……まさか、この西方まで影響が及ぶとは思えないが……)


ドラーゲンの脳裏に、忍者集団の頭領だった女性の姿がよぎった。九尾の狐に変身する妖狐。千景。


「責任取れと言っているだけじゃ!」


あの怒鳴り声が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇る。


(いや、考えすぎだ。40年も経っているんだ。それに、西方まで来るはずがない)


ドラーゲンは自分に言い聞かせるように首を振った。しかし、東から吹く風は、相変わらず不穏な予感を運んでくる。


---


**【視点切り替え:ドラーゲン → カルロ】**


---


カルロは資料を整理しながら、二人の関係を微笑ましく見守っていた。


(あのお二人を見ていると、本当に姉妹のようだ)


商人として多くの人間関係を見てきたカルロには、フェリシアとヴァルブルガの絆が本物であることがよく分かった。政治的な同盟を超えた、真の信頼関係がそこにある。


(この二人なら、きっとアルカ・ポリス連邦の人々の心も動かすことができるだろう)


カルロの商人としての直感が、この外交使節の成功を予感させていた。


---


**【視点切り替え:カルロ → フェリシア】**


---


「それでは、出発いたします!」


アルマン伯爵の声が広場に響いた。


馬車が動き始めると、市民たちから大きな歓声が上がった。


「フェリシア様!」


「魔王様!」


「お気をつけて!」


フェリシアとヴァルブルガは馬車の窓から手を振り続けた。姉妹のように寄り添う二人の姿は、新しい時代の到来を象徴しているかのようだった。


「行ってまいります!」フェリシアが市民たちに向かって声をかけた。


「必ず良い結果を持ち帰るのじゃ!」ヴァルブルガも元気よく応えた。


使節団は、護衛兵に守られながら、北東のアルカへ向けて出発した。


フェリシアの胸には、外交使節という重責への緊張があった。しかし同時に、ヴァルブルガと一緒の旅への安心感も抱いている。二人で乗り越えられない困難はない、そんな確信があった。


ヴァルブルガは、初めての本格的な外遊への興奮に満ちていた。「お姉さま」と一緒にいられる喜びが、竜の尻尾の動きに表れている。


ドラーゲンは、護衛馬車の中で東を振り返りながら、まだ説明のつかない不安を抱えていた。だが、それが現実のものとなるのは、まだ先のことである。


カルロは、新たな商機への期待と、二人の関係を微笑ましく見守る親心で、資料の整理に没頭していた。


春の陽光に照らされた使節団は、希望に満ちた出発を果たした。しかし、同じ大陸の東側では、長い年月を生きてきた妖狐が40年の執念を燃やしながら、彼らを追う準備を進めていることを、この時の誰もが知る由はなかった。


アルピリア・ノクテルヴァルト同盟の未来と、千景の復讐劇。二つの物語が、やがて一つに交わる時が近づいている。


だが今は、ただ希望に満ちた旅路の始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ