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追放された最強おっさん魔族、女勇者を鍛えていたら国が分裂! 最終課題「魔王にセクハラしてこい」でどうしてこうなった!?  作者: よん


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第47話 連邦会議、揺れる均衡

## 【ソロン視点】6-3 連邦会議、揺れる均衡



アルカ・ポリス連邦の首都アルカ――その中心部に聳える連邦会議場は、大理石造りの円形議事堂として、大陸北西部における政治の中枢を象徴していた。


高い円天井から差し込む午後の陽光が、議事堂の壁面に掲げられた各国の紋章を照らし出している。首都共和国アルカの双頭鷲、シェリフィールの銀森領の古木、ファウレンヘイム森の盟約の狼の群れ、碧海都市国家群タラッサの三叉槍、自由都市ゴルン=アンヴィルの鎚と鋏、緑牙平原共和国の麦穂、そして獅子鷲の辺境伯領レオニスの獅子と鷲。


七つの国家が形成するアルカ・ポリス連邦。その多様性は、円卓に座る代表者たちの姿からも見て取れた。


「では、定期会議を開催いたします」


議長席に座るソロン・クラティスが、手入れの行き届いた銀髪を軽く撫でつけながら会議の開始を宣言した。45歳のソロンは、元大学教授らしい落ち着いた雰囲気を纏っているが、その瞳には政治家としての鋭い洞察力が宿っている。


「本日の議題は『東方情勢とレオニス紛争』ならびに『大陸南部の新情勢』についてです」


ソロンの言葉に、各国代表の表情が引き締まった。特に、レオニスの代表として出席している使者は、緊張で顔を強張らせている。


「まず、レオニス情勢についてグウィン議長からご報告をお願いします」


ソロンの指名を受けて、老狼グウィンがゆっくりと立ち上がった。80歳の高齢にも関わらず、その銀灰色の毛並みには歴戦の戦士としての威厳が宿っている。ファウレンヘイム森の盟約を代表する狼型ファウレーンの彼は、この連邦でも最も信頼される情報収集者の一人だった。


「諸君に報告すべき重大な事件が発生した」グウィンの低い声が議事堂に響く。「一週間前、レオニス王国の国境都市グレンツヴァルにおいて、ツェルニア公信国の支援を受けたザルグ・ウィータ公国群の軍勢300が、たった一人の……東方人によって完全に壊滅させられた」


議事堂に重い沈黙が降りた。


「一人で300人を?」自由都市ゴルン=アンヴィルのバリン・アイアンハンドが、赤茶の髭を撫でながら眉をひそめた。150歳のドワーフである彼は、戦闘力の計算には長けている。「それは……魔導兵器でも使ったのか?」


「いえ」グウィンが首を振った。「目撃者によると、その女性は尻尾が増えて巨大な化け物に変身し、一瞬で敵軍を蹴散らしたとのことです」


今度は、より深い静寂が議事堂を支配した。


「東方の化け物が西方に来るとは……」


シェリフィールの銀森領を代表するエルドリック・シルヴァヌス大公が、1200歳の長寿に裏打ちされた深い憂慮を込めて呟いた。銀色の長髪に包まれた美しい容貌は、まるで30代の人間のようだが、その瞳には長い年月を生きた者特有の侮りと警戒心が宿っている。


「これは不吉な兆しです。東方の勢力が西方に介入を始めたということでしょうか」


エルドリックの発言に、議事堂の空気がさらに重くなった。エルフである彼は、数百年前に起きた人間との戦争を実際に体験しており、異種族への不信感は根深い。


「しかし、その東方人はレオニスを救ったのでしょう?」


碧海都市国家群タラッサの女提督アストリッドが、日に焼けた肌と金髪を無造作に束ねた髪を揺らしながら発言した。32歳の彼女は、この会議では最も若い代表の一人だが、海賊のような豪快な外見とは裏腹に、鋭い戦略眼を持っている。


「グレンツヴァルが陥落していれば、レオニス全体が危機に陥り、ひいては我が連邦にも影響が及んでいたはずです。結果的には、我々にとって有利に働いたのでは?」


グウィンが頷いた。


「確かに、その通りです。現在、その東方人――千景と名乗る女性は、レオニス王宮に客人として滞在しています。ヴァレリウス王は彼女を国賓として遇しているとのことです」


「国賓として……」ソロンが考え深げに呟いた。「レオニスの判断としては理解できます。しかし、我々としてもこの情報は注意深く分析する必要がありますね」


---


**【視点切り替え:ソロン → エルドリック】**


---


エルドリックは内心で苛立ちを募らせていた。


(東方の化け物が西方に現れ、それを歓迎するような風潮……この短命な種族どもは、何と愚かなのか)


1200年を生きたエルフにとって、最近の西方世界の変化は受け入れがたいものばかりだった。特に、魔王と呼ばれる存在が南方で力を振るっているという情報は、彼の古い記憶を呼び起こす。


(千年前の大戦の記憶を、この者どもは忘れてしまったのか)


エルドリックの脳裏に、若き日の記憶が蘇る。魔族の軍勢が大陸を蹂躙し、多くの都市が炎に包まれた時代。その時の恐怖と混乱を、現在の指導者たちは理解していない。


「議長」エルドリックが立ち上がった。「この東方勢力の介入について、我々はより慎重に対処すべきです。未知の力を持つ者が政治的空白に入り込むことの危険性を、軽視してはなりません」


「ご懸念は理解いたします」ソロンが冷静に答えた。「しかし現在のところ、その千景という女性がレオニス以外に影響を与えている事実はありません。むしろ——」


ソロンが言葉を区切り、議事堂を見回した。


「むしろ私が諸君にお伝えしたいのは、別の情報です。大陸南部において、きわめて重要な政治的変化が生じています」


---


**【視点切り替え:エルドリック → ソロン】**


---


ソロンは慎重に言葉を選びながら、次の議題に移った。この情報こそが、今日の会議における真の焦点なのだ。


「諸君もご存知の通り、南方ではセレスティナ王国の分裂により、アルピリア連邦という新興国家が誕生しました。そして先日、驚くべき情報が入手されました」


ソロンは手元の羊皮紙に目を落とした。


「アルピリア連邦と魔王領ノクテルヴァルトが、軍事・経済同盟を締結したとのことです」


議事堂にどよめきが起こった。魔王領という名前は、どの代表にとっても無視できないものだった。


「魔王と……同盟を?」バリンが驚愕の声を上げた。「それは本当なのか?」


「我が国の情報網が入手した情報です。信憑性は高いと判断しています」ソロンが頷いた。「そして私は提案したい。この新同盟に対して、我がアルカ・ポリス連邦から使者を派遣してはいかがでしょうか」


エルドリックの顔が青ざめた。


「使者を……魔王の元に?」


「ソロン議長」緑牙平原共和国のグルカ女傑が、筋肉質な体を前に乗り出した。40歳のオーク型の彼女は、この連邦でも最も実利的な思考をする代表の一人だった。「その同盟が事実だとして、我々にどのような利益があるというのです?」


ソロンの目が輝いた。これこそ、彼が最も説明したかった部分だった。


「地理的な利点を考えてください。我が連邦の各国は北海に面していますが、大陸南部の内海とは陸路で繋がっていません。しかし、アルピリア・ノクテルヴァルト同盟との関係を構築できれば——」


ソロンは議事堂の壁に掛けられた大きな地図を指差した。


「北海と内海を結ぶ陸路の貿易ルートが確保できます。これにより、我が連邦の経済圏は飛躍的に拡大するでしょう」


アストリッドが身を乗り出した。


「それは確かに魅力的です。しかし、軍事的な観点ではいかがでしょう?」


「ノルディア戦団への対抗策としても有効です」ソロンが続けた。「現在、我々は北海における海賊行為に悩まされています。しかし、内陸からの圧力を加えることができれば——」


「その通りだ!」アストリッドが手を叩いた。海賊退治に人生を賭けてきた彼女にとって、これは願ってもない提案だった。「ノルディア戦団は北海を根城にしていますが、彼らの補給線は内陸にも伸びています。アルピリア・ノクテルヴァルト同盟と協力できれば、二正面作戦が可能になる」


「待て」エルドリックが立ち上がった。その声は怒りに震えていた。「魔王など信用できるものか!千年前の大戦を、諸君は忘れたのか!」


議事堂に緊張が走った。エルドリックの発言は、この連邦でも最も重い警告の一つだった。千年という歳月を生きた彼の記憶は、他の代表たちにはない重みを持っている。


「魔族がどれほど残虐で狡猾か、私は身をもって知っている。彼らと手を組むなど、自殺行為に等しい」


「しかし、エルドリック大公」ソロンが冷静に反駁した。「時代は変わっています。現在の魔王領は、かつての侵略的な姿勢を改めているとの報告もあります。それに——」


「時代が変わった?」エルドリックの声に嘲笑が混じった。「魔族の本性が変わるものか。彼らは力によってのみ語る種族だ。平和を口にしても、それは次の侵略の準備に過ぎない」


バリンが咳払いをして発言した。


「政治的な懸念はさておき、実利的な観点から申し上げれば——ノクテルヴァルトのルミナイト鉱山は非常に魅力的です」


ドワーフらしい現実的な視点に、議事堂の空気が少し緩んだ。


「ルミナイト?」グルカが興味深そうに身を乗り出した。


「高品質の魔導鉱石です」バリンが説明した。「我がゴルン=アンヴィルの技術者たちは、長年この鉱石を求めていました。軍事技術、農業技術、両面において革命的な進歩が期待できます」


「つまり」アストリッドが纏めるように言った。「経済面でも軍事面でも、この同盟との関係構築は我が連邦にとって有益だということですね」


エルドリックは深い溜息をついた。


「諸君は目先の利益に眩惑されている。魔族と手を組むことの真の代価を、理解していない」


グウィンがゆっくりと口を開いた。老獪な狼の彼は、これまで静かに議論を観察していた。


「エルドリック大公のご懸念は理解できます。しかし、現実問題として、我々は大陸情勢の変化に対応する必要があります」


グウィンは議事堂を見回した。


「東方からは未知の強者が現れ、南方では新しい同盟が成立している。我々が孤立していては、いずれ取り残されるでしょう」


「それに」ソロンが補足した。「使者を送ることと同盟を結ぶことは別問題です。まずは相手の意向を確認し、我が連邦への影響を慎重に判断する。それが賢明な外交というものでしょう」


議論は1時間以上続いた。革新派と保守派の対立は明確で、特にエルドリックの反対は強固だった。しかし最終的に、ソロンの提案が採択された。


「では、採決を行います」ソロンが議長として裁定を下した。「アルピリア連邦とノクテルヴァルト魔王領に使者を派遣し、両国の意向を確認する。賛成の方は挙手をお願いします」


七か国中、四か国が賛成票を投じた。アルカ、タラッサ、ゴルン=アンヴィル、緑牙平原共和国。反対はシェリフィールのみ。ファウレンヘイムとレオニスは棄権だった。


「可決されました」ソロンが宣言した。「では、使者の人選と派遣時期について、後日協議いたしましょう」


---


**【視点切り替y:ソロン → アストリッド】**


---


会議終了後、アストリッドは廊下でソロンに声をかけた。


「ソロン議長、素晴らしい提案でした」


「ありがとうございます、アストリッド提督。しかし、エルドリック大公の反対は予想以上に強固でしたね」


「彼の懸念も理解できますが」アストリッドが髪をかき上げながら言った。「我々には選択の余地がありません。ノルディア戦団は年々勢力を拡大しています。このまま放置すれば、北海全体が彼らの支配下に入りかねない」


ソロンは頷いた。アストリッドの切実な状況は、連邦全体の問題でもある。


「新しい同盟国との協力で、必ず解決策が見つかるでしょう」


「そう願いたいものです」アストリッドの表情に、僅かな希望の光が宿った。「それにしても、レオニスの東方人の話は興味深いですね」


「ええ。千景という名前でしたか」


「一人で300人を倒すなんて、どんな化け物なんでしょうね」アストリッドが苦笑いを浮かべた。「もしノルディア戦団との戦いに参加してくれたら、心強いのですが」


「それは……どうでしょうか」ソロンが苦笑いを返した。「政治的にはかなり複雑な問題になりそうです」


---


**【視点切り替え:アストリッド → ソロン】**


---


その日の夕方、ソロンは執務室で側近の書記官と向き合っていた。


「今日の会議をどう思いますか?」ソロンが疲れた表情で尋ねた。


「革新派と保守派の対立が、より鮮明になったように思われます」書記官が慎重に答えた。「特にエルドリック大公の反応は……」


「予想通りでした」ソロンが頷いた。「彼の立場を考えれば、当然の反応です。しかし——」


ソロンは窓の外を眺めた。夕陽が大理石の街並みを金色に染めている。


「大陸に変化の風が吹いています。東方の妖狐といい、新同盟といい、我々も変化に対応しなければ生き残れません」


「妖狐、ですか?」


「レオニスの千景のことです。一人で軍勢を倒すような存在を、そう呼ぶのが適切でしょう」


書記官は羊皮紙にメモを取りながら頷いた。


「派遣する使者の人選は、どのようにお考えですか?」


「慎重に選ばなければなりません」ソロンが考え込んだ。「相手は魔王と、新興国家の指導者たち。外交的な駆け引きに長けた者が必要です」


「政治的な配慮も必要でしょうね」


「ええ。エルドリック大公の懸念を完全に無視するわけにはいきません。保守派の意見も反映できる人選が理想的です」


ソロンは立ち上がり、壁に掛けられた大陸地図を見つめた。


「いずれにしても、これは我がアルカ・ポリス連邦にとって、重要な分岐点になるでしょう。成功すれば、我々の影響力は大陸規模に拡大する。失敗すれば……」


「失敗は許されませんね」


「その通りです」ソロンが振り返った。「東方の妖狐、南方の新同盟、そして我々の選択。大陸の勢力図が塗り替わろうとしている。この機会を逃せば、アルカ・ポリス連邦は永遠に二流の地位に甘んじることになるでしょう」


夕陽が沈み、議事堂に静寂が戻った。しかし、この日の議論は、やがて大陸全体を巻き込む大きな変化の序章に過ぎなかった。


千景がレオニスに現れたことも、アルピリア・ノクテルヴァルト同盟の成立も、そしてアルカ・ポリス連邦の使者派遣決定も、すべてが複雑に絡み合いながら、予測不可能な方向へと動き始めている。


だが、この時点でこれらの出来事が最終的にどのような結果を生むのか、それを正確に予見できる者は、この大陸には誰一人いなかった。

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