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追放された最強おっさん魔族、女勇者を鍛えていたら国が分裂! 最終課題「魔王にセクハラしてこい」でどうしてこうなった!?  作者: よん


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第43話 傀儡の王と新たな聖女、そして始まる"静かなる侵食"

第43話 傀儡の王と新たな聖女、そして始まる"静かなる侵食"


 セレスティナ王国の首都、王城の玉座の間。


 北部地方の分離独立と「アルピリア連邦」設立、そして魔王領との軍事同盟締結という衝撃的な報告は、王国中央を大混乱に陥れていた。


 玉座の間には、貴族たちが集まり、今後の対策を巡って醜い言い争いを繰り広げている。


「アンドレアス宰相の責任は重大だ!」


「ガスパールの暴走が全ての元凶ではないか!」


「このような屈辱的な敗退を招いた責任を、どう取るつもりか!」


 怒号が飛び交う中、玉座に座る病弱な影——レミュス国王は、これまでと変わらず、まるで飾り物のように静かに座っていた。


 誰もが彼の存在を無視し、権力闘争に明け暮れている。


   *   *   *

 玉座の間の片隅で、アンドレアス・ラーセンは青ざめた顔で立ち尽くしていた。


 アンドレアスは内心で絶望していた。完璧だったはずの計画が、根本から崩れ去った。聖なる使節団の虐殺事件を魔王に擦り付ける策略は見事に暴かれ、逆に自分たちの悪行が全て白日の下に晒された。そして今、全ての責任を押し付けられようとしている。


 ガスパール・ロレンスもまた、絶望的な表情で壁際に立っていた。アンドレアスは苦い思いで同僚を見つめた。二人とも、完全に詰んでいる。


   *   *   *

 その時、これまで一度も動くことのなかった玉座の人影が、すっと立ち上がった。


 レミュス国王である。


 その場にいた誰もが、彼の突然の行動に驚き、静まり返った。言い争いをしていた貴族たちも、一斉に振り返る。


 レミュス国王は、どこか虚ろでありながら、それでいて全てを見透かすような異様な雰囲気を纏っていた。やせ細った体躯からは想像できないほど重い威圧感が、玉座の間を支配する。


「静粛にせよ。騒がしい」


 その静かな、しかし有無を言わせぬ声に、貴族たちは恐怖に近い感情を抱き、慌ててひれ伏した。


 アンドレアスも、思わず膝をついてしまう。心の中で悪寒が走った。何かが決定的に変わった。王の雰囲気が、これまでとは全く違う。


 王の傍らには、いつの間にか、慈愛に満ちた笑みを浮かべるマリーネ・アクィナス大司教が立っていた。彼女が実質的に次の権力を握ったことを、その場の誰もが直感する。


   *   *   *

 レミュス国王は、まるで予め用意された台本を読むかのように宣言した。


「アンドレアス・ラーセン。虐殺計画の首謀者として、また全軍を率いて屈辱的な敗退を喫した責任により、宰相の座を解任する」


 アンドレアスの顔が蒼白になった。


「陛下……それは……」


 その時、アンドレアスは気づいた。王の傍らに立つマリーネの満足げな表情。そして、王の虚ろな瞳と、まるで操り人形のような不自然な動き。全てが繋がった。


「まさか……マリーネ……貴様が王を……!」


 アンドレアスが声を上げようとした瞬間、衛兵たちが彼の両脇を掴んだ。


「ガスパール・ロレンス。騎士団から追放とする。」


 ガスパールもまた、同様に衛兵に取り押さえられながら、絶望の表情を浮かべていた。


「離せ! 陛下! 真実をお聞きください! マリーネが……!」


 アンドレアスの叫び声は、衛兵たちによって玉座の間から引きずり出される途中で遮られた。


「そして……」


 レミュス国王の虚ろな瞳が、玉座の間を見回した。


「北部の反逆者たち、そして魔王領……彼らとの無益な争いは、今はこの国の消耗を招くだけだ。一時的な不戦条約を結び、時を稼ぐ」


 貴族たちがざわめく。だが、誰も王の決定に異を唱えることはできなかった。


 マリーネが満足げに微笑んでいるのを、アンドレアスは怒りと屈辱の中で見つめていた。


   *   *   *

 その夜、マリーネ・アクィナスの私室。


 豪華な調度品に囲まれた部屋で、マリーネは窓の外を見ながらほくそ笑んでいた。


 椅子には、まるで魂が抜けた人形のようになったレミュス国王が座っている。彼の瞳は虚ろで、意志というものが全く感じられない。


 マリーネは深い満足感に浸っていた。全ての計画が理想的に進んでいる。


「ふふ……」


 マリーネの笑い声が、静寂の私室に響いた。


「アンブロジウスを始め、邪魔な和平派の者たちは、皆そろって北部の新国家へ行ってくれましたわ。アンドレアスのような小賢しい男も、ガスパールのような脳筋ももういない」


 マリーネは振り返ると、人形と化した王を見下ろした。これほど完璧な道具はない。


「ようやく、この国で、私の、そして"神"の望む通りに、やりたい放題できますわね」


 王は何も答えない。ただ、虚ろな瞳で天井を見つめているだけだった。


   *   *   *

 マリーネは部屋の奥に目を向けた。


 そこには、セラフィナと、もう一人、同じように虚ろな目をした少女が控えている。二人とも美しい顔立ちだが、その瞳には意志も感情も宿っていない。


 マリーネは内心で満足していた。計画は順調に進んでいる。セラフィナの成功例があったからこそ、二体目の製作も順調に進んだ。


「北部との不戦条約は、我々が"あの計画"を完成させるための、最高の時間稼ぎですわ」


 マリーネは二人の少女に近づき、セラフィナの頬を、続いてもう一人の頬を愛撫するように撫でた。二人とも人形のように無反応だった。完璧な作品だ。


「我らが"聖女"たちの軍団が完成した暁には……アルピリア連邦も、魔王領も、全てを平らげ、この大陸を真に聖なる光で満たして差し上げましょう」


 彼女の瞳には、狂信と、世界そのものを実験台としか見ていない、底知れぬ悪意が燃えていた。


「神よ……あなたの御心のままに」


 マリーネの祈りの声が、暗闇の中に響いた。



 翌朝、王城の一室で、マリーネは新たな勅令の草案を眺めていた。


「アルピリア連邦との不戦条約締結の件」「新たな聖職者制度の改革」「異端審問所の設置拡大」……


 マリーネは一つ一つの項目を確認しながら思った。どれも、彼女の野望を実現するための布石だった。


「時間はたっぷりありますわ」


 マリーネは満足げに微笑んだ。真の戦いは、これから始まる。


 表向きは平和を装いながら、裏では人類史上最も恐ろしい計画が、静かに、着実に進行しようとしていた。


 一時的な平和の裏で、さらに大きな破滅の種が蒔かれた。


 物語は、不穏な余韻を残して、次の章へと続いていく——

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