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2-11 曇り空でも

 午後からは田村さんが重機で支柱を立て、俺が電線を架け、レオさんが周りの魔物を警戒するという分担で電気作延伸の作業を進めた。3台の小型火山灰スイーパーが工事現場の周囲を巡回し、360度カメラで周囲を警戒してくれる。島中をドローン3台が巡回し、今までより精度が高い魔物の位置情報を送ってくれるようになった。そして早速、森の西側にレア種を一体発見できたりもした。


 作業は順調に進み、夕方までに一番近い中規模山小屋までの道沿いに電気柵を延長することができた。そして、その範囲内の魔物は全て倒し、明日まで通電して様子を見ることになった。


「よし、これで前線基地として使えるな。明日は、逆側の中規模山小屋までの道を確保しよう」


 田村さんが満足そうに山小屋の屋上デッキから周囲を見渡していた。俺も座り込んで、水を飲みながら額の汗をぬぐった。


「それじゃあ神崎君、短機関銃サブマシンガンのUZIを出すから森に向かって実弾練習をやってみるか」


 田村さんは、ニヤニヤと笑っている。


「やります!」


 俺は即答したものの、内心では不安が渦巻いていた。


 大丈夫だろうか。俺は射撃センスが、あきらかにない。射撃訓練でも、銃の分解組立でも、俺だけがみんなより劣っている。


 田村さんも俺の苦手意識をわかっているのか、「お?」と意外そうな表情をしつつ、すぐに30挺のUZIを物質化した。27挺分のマガジンを外して、練習のリロード用にする。

 三人とも、ヘルメットのヘッドセットを降ろし、ゴーグルを装着した。


「これがUZIですか......」


 けっこう重い。3.5kgほどあるらしい。金属製の細い折りたたみストックを伸ばすと、小さなライフルのような形になった。


「構え方はショットガンと同じだ。ストックを肩にしっかり当てて、グリップを握れ。ショットガンほどの衝撃はないが、反動は単発じゃなく連続で来る。銃身がじわじわと持ち上がるから、腕と体幹で押さえ込み続けろ」


 田村さんの説明は、いつも通り分かりやすい。

 森に向かって構える。

 的が無い分、少し気が楽だ。


 トリガーに指をかけて、深呼吸。


「いきます!」


 引き金を引いた瞬間、ドドドドドッ!


 ヘッドセットを通して、くぐもった射撃音が聞こえる。連射すると銃口が浮いていくのがわかる。必死にストックを肩で押さえ、姿勢を崩さないよう耐える。だが、あっという間に、カチッと音がして射撃が止まった。


「え、もう終わり?」


「32発だからな。フルオートなら3秒ちょっとで撃ち尽くす」


「ショットガンよりは......なんとかなりそうです。でも3秒じゃ、すぐリロードですね」


「そうだな。だから撃ち方を使い分けるんだ」


 田村さんが別のUZIを手に取って説明を始める。


「ここがセレクターレバーだ。『S』がセミオート、『A』がフルオート。で、こいつにはバースト機能はねぇが、指切りって技術テクニックで2~3発ずつ撃てる」


 タン、タン、タン。セミオートで一発ずつ。

 タタタン、タタタン。指切りで3発ずつバースト。

 ドドドッ。6~7発ほどの短いフルオート。

 ドドドドドドッ。完全なフルオート。


「距離と状況で使い分ける必要がある。今回の対中型魔物作戦だと、神崎君は30m地点で足止め役だ。基本は2~3発のバーストで脚を狙って動きを鈍らせる。32発あるから、10回はバーストできる計算だ」


「硬くて貫通しない場合は足元を狙うんですよね? その時もバーストですか?」


「その時は指切りを長めにして、5~6発まとめて地面を撃て。ドドドドッてな。土や石が跳ねれば、魔物も一瞬ひるむ。陽菜乃ちゃんの狙撃の時間を稼ぐんだ」


「なるほど。戦闘中はフルオートのまま、指の操作だけで調整するんですね。セミオートは使わないんですか?」


「セミは精密射撃用だから、足止めには必要ねぇな。だが、もし魔物が横に回り込もうとした時は、セミで牽制しながら位置を調整してもらえたら助かる。タン、タン、って撃ちながら、正面に誘導するんだ」


「精密射撃はいらないと安心してたけど、正確な指の動きが必要なんですね……練習しないと」


 田村さんがマガジンを外して、リロードの方法も教えてくれる。


「こいつのマガジン交換は簡単だ。キャッチを押して、下に引き抜く。新しいマガジンを差し込んで、コッキングハンドルを引く。今は5~6秒かかるだろうが、練習すれば4秒台に縮められるぜ。3秒でできたら特殊部隊クラスだ」


「4秒ですか......それでも魔物相手だと長く感じそうです」


「だからこそ、無駄撃ちは禁物なんだ。特に神崎君は、パニクってトリガー引きっぱにしそうだからな、ははは」


 豪快に笑う田村さんに、図星を突かれて言葉が出ない。


「まずはセミオートで練習して、次に指切りバースト、最後にフルオートだ。順番に慣れていけ。狙いは正確じゃなくていい。脚を撃って、動きを止める。それが神崎君の役割だ」


 俺の隣で、レオさんがUZIを手に取っている。最初はぎこちなく構えていたが、田村さんの説明を少し聞いただけで、すぐに指切りをマスターしてしまった。2発でも5発でも、楽しそうに自在に撃ち分けている。


 俺は、そんなレオさんを見ながら複雑な気持ちになっていた。


 中型魔物の作戦で俺が「足止め役」なのは、田村さんが俺の射撃センスの無さを考慮してくれたのだろう。精密射撃が必要な「額狙い」ではなく、「脚の辺りに当てればいい」という役割。ありがたいとは思う。


 元々、俺一人で避難プランを考えていた時は、事務棟の中から拳銃かボウガンで撃つことしか考えていなかった。それで、数ヶ月で魔物を駆逐できると思っていた。

 だが、そんなに甘くないことを、魔物が発生してからのこの5日間で痛感した。

 前世より、明らかに魔物の数が多い。モノリスを壊すまで湧き続けるなんて知らなかった。前世では言われるまま囮として逃げるだけだったから、逆に、魔物に対する考えが甘すぎた。




 そんなことを考えていると、田村さんが声をかけてきた。


「そういえば神崎君、昨日、ボウガンの話をしてたけど、試してみるか?」


「あ、はい! ボウガンなら、弾丸を改良するより簡単に塩分を増やせるかもって思ったんですよ」


「確かにな。弾詰まりの心配がいらないから、工夫はしやすいかもな。ボウガンも自分で発射準備をするところからやってみるか?」


 田村さんがボウガンを1階から持ってきて、使い方を詳しく説明してくれる。塩分増量のアイデアを証明するチャンスだと思い、俺は張り切ってボウガンを使おうとした。


 だが、俺は弦を張るのすら手間取り、なかなかできない。前の試し打ちの時は、田村さんが矢を番えた状態で渡してくれたので、コッキングがこんなにコツと力が必要な作業とは思ってもみなかった。撃つ以前の問題だ。


「練習すれば、5秒くらいでできるようになる。ただ、魔物が勢いよく近づいてくる状態で、冷静にリロードするのは難しいかもな」


 田村さんの言葉に、俺は正直に答えた。


「多分、俺は無理ですね......」


「ボウガンは風や重力の影響も読まないといけねぇし、連射もできねぇ。距離が離れるほど難しくなる。だが、そこが面白い武器なんだ」


 田村さんは楽しそうにボウガンを構えているが、俺は自分が情けなくなった。


「ボウガンでも十分に魔物と戦えると思っていたなんて……無意味でしたね」


「いやいや、そんなことはねぇぞ」


 田村さんが慌ててフォローしてくれる。


「例えば、トドメの一撃として使用するのはありだ。それに、電気柵で囲んで魔物が動けない状態だったら、ボウガンの方が塩分を多くぶち込みやすい。適材適所で使いどころはあるんだ」


 それでも落ち込んでいる俺を見て、田村さんが少し心配そうな表情で俺の肩に手をかける。大きな温かい手だ。


「神崎君、最近、色々と気にしすぎてないか? 大丈夫か?」


「だ、大丈夫ですよ!」


 俺は慌てて明るく答えたが、内心では複雑だった。田村さんはいつもフォローしてくれて優しい。でも、その優しさが少し辛い。戦闘訓練が始まってから、自分の不器用さがコンプレックスになっている。


 もしも、俺、一人で避難していたらと考える。


 例え銃を手に入れていたとしても、燃料備蓄庫までたどり着けていないだろう。そうなると悪天候が続くと電気は止まり、食料を腐らせる。インフラの調子が悪くなってもメンテができず、事務棟から一歩も出られないまま、1年くらいで死んでいたかもしれない。さっきのドローンだって、陽菜乃ちゃんが魔物マップに位置を落としてくれるからこそ真価が発揮できる。俺一人だったら、「魔物があそこにいるな」と確認して終わりだ。


 死に戻ったのが俺じゃなくて、みんなだったら、もっとうまくやって、多くの人を助けられたかもしれない。


 みんながいてくれて、本当にありがたい。


 でも、みんなの足でまといになりたくない。


 俺は、これからどうしたらいいのか......答えは出ない。




 田村さんが俺の様子を見て、励ますように肩をポンポンと叩いてくれた。


「神崎君がいなかったら、何の情報も知らずに、今ごろ、魔物の餌になってたかもしれねぇんだ。本当に感謝してるんだぜ?」


「そうですよ。今までの2年間、神崎君が一生懸命に準備してきたからこそ、私たちはここで生き残る戦いができているんです。この島も、食料も、武器も神崎君のおかげです」


 レオさんまで、近寄ってきて慰めてくれる。だが、二人の温かい言葉でも、俺の心のモヤモヤは晴れず、どこか卑屈になっていた。

 そんな俺を見て、田村さんが提案してくれる。


「もっと気晴らしするか? せっかくだから、M240も試してみようぜ」


 田村さんが物質化したのは、UZIとは比べ物にならない大きさの機関銃だった。全長1.2m、重量は10kg以上ありそうだ。


「これがM240......」


「UZIは個人携行用だが、こいつは本格的な機関銃だ。制圧射撃が目的で、威力も射程も段違いだぞ」


 田村さんが重そうに抱えながら説明する。


「でも、これ、どうやって撃つんですか? 手に持って撃つのは無理ですよね」


「ああ、腰だめで撃てるが数秒が限界だろうな......あ、そうだ! 神崎君、あそこに撮影台みたいなのがあるだろ? あれを使おうぜ!」


 山小屋の屋上テラスの四方には、星空観測や野鳥撮影用として設置された、高さ調整可能な頑丈なスチールの台がある。もちろん、そういう偽装で、ここから攻撃することを想定していた。


「これなら、高さもちょうどいいし、強度も十分だ」


 田村さんがM240を架台に据え付ける。銃身の下の二脚を立て、車に積んでいた荷締めベルト3本で固定する。さすがに機関銃は想定していなかったが、まさにピッタリの高さと安定性だった。


「ほら、これだって神崎君が用意してくれていなければ、すぐには使えなかったんだぞ。あつらえたように、ピッタリじゃないか」


 田村さんの言葉に、少しだけ心が軽くなった。確かに、戦闘は下手でも、準備や環境整備では貢献できているのかもしれない。


「操作方法はUZIより単純だ。こいつはフルオートオンリー。トリガーを引けば撃ち続ける。ただし、反動は比べ物にならないから、しっかり構えろ」


 俺がM240の後ろに構える。UZIの3倍以上の重量感と、鋼鉄の塊のような存在感がある。


「いきます!」


 トリガーを引いた瞬間──


 ドドドドドドドドドッ!!


 UZIとは次元の違う振動が体を貫く。森の向こうで木々の枝がバラバラと舞い散り、まるで目に見えない巨大な鎌で薙ぎ倒されるように折れていく。

 10秒ほど撃ち続けて、俺はトリガーから指を離した。

 ヘッドセットをしていても耳が少しジンジンしているような気がする。硝煙の匂いが鼻を突く。まだ熱い薬莢が、カチャカチャと音を立てて足元に転がった。


「機関銃って、ほんとに『快感』ですね」


 俺は田村さんに向かって笑いながら言った。

 田村さんも笑いながら「映画もドラマも、撃ってるのは短機関銃サブマシンガンだけどな」と言う。みんなであげた笑い声が、今日も曇っている空に吸い込まれていった。


 曇り空でも、その上には青空が広がっている。


 俺のウジウジした葛藤なんて、この圧倒的な火力の前では些細なことに思えてきた。これが脳筋だろうか。とにかく、目の前のできることを頑張るしかないと素直に思えた。


 さらに、帰り道で遠回りして、4日ぶりに軽油を物質化して燃料タンクに注ぐことで、俺の小さな自尊心はあっという間に回復した。適材適所。いい言葉だ。






 夕方のミーティングで、陽菜乃ちゃんが嬉しそうに報告する。


「めっちゃ集中できた! 明日の午前中には完成すると思う~!」


 すごくいい笑顔だ。陽菜乃ちゃんが技術開発に没頭している時は、本当に生き生きしている。


「俺たちも一番近い中規模山小屋までの道沿いに電気柵を張れたぞ」


 田村さんも作業の成果を報告する。

 その時、桐島博士も控えめに手を上げて、何かを取り出した。


「私も、麻酔弾の試作品を作ってみました」


 桐島博士が手にしているのは、ショットガンの弾だった。


「レオさんがアドバイスしてくださったように、12ゲージの散弾ケースに、獣医用の麻酔薬を封入したゼラチンカプセルを詰めてみました。通常の1/4の火薬量で発射すれば、カプセルが割れずに魔物の体内に撃ち込めるようです」


「なるほど、これなら生け捕りできそうだ」


 田村さんが興味深そうに麻酔弾を手に取る。


「通常弾で弱らせてから麻酔弾に切り替えるといけそうだな。麻酔が魔物に効くかどうかは、試してみないと分からねぇし、捕獲する檻も電気フェンスでしっかりしたものを用意しないといけねぇがな」


「魔物の生体を研究できれば、新しい発見があるかもしれません」


 桐島博士の目が輝いている。研究者としての探究心が全身から溢れていた。


 みんな、自分の専門性を活かして生き生きと活動している。俺は戦闘では役立たずになりつつあるが、この環境を維持する知識は一番詳しい。みんなの活躍を支えることならできるはずだ。自分の役割がわかった気がした。




 続いて、陽菜乃ちゃんからは掲示板の定例報告があった。


「モノリスからレア種が湧いた追加報告はないよ~。モノリス自体がなかなか見つからなくて、諦めてる人も多いみたいなんだよね。だからさ、モノリス探知機をアプリ化して配信できるようにしてみる。200mは無理だけど、もっと狭い範囲ならなんとかなると思うんだ~」


「陽菜乃さん、範囲が狭くてもアプリ化されたら助かる人も多いと思いますよ」


 桐島博士に言われて、陽菜乃ちゃんは更にやる気を出していた。






 会議後の自由時間の後、夕食の時間になり、みんなが食堂に集合した。今日は桐島博士が夕食当番だ。


「今日は和食にしてみました」


 桐島博士が準備してくれたのは、とても冷凍食材を使っているとは思えない、バランスの取れた美味しい和食だった。

 メインは冷凍鮭の幽庵焼き。ふっくらと焼けた鮭の身が香ばしく、皮もパリッとしている。付け合わせには、大豆から作った手作り豆腐の冷奴。なめらかな舌触りで、大豆の甘みが口に広がる。副菜は、莉子ちゃんのキャベツと乾燥昆布で作った浅漬け。昆布の旨味とごま油の風味が効いていて白ご飯が止まらないやつだ。それに、椎茸とワカメの味噌汁。すごくホッとする優しい味だ。

 ご飯は悠真君の白米を土鍋で炊いたもの。一粒一粒がふっくらとしていて、甘みもある。なんというか、丁寧な食卓と言う感じだ。


「桐島博士、本当に美味しいです。和食もお上手なんですね」


 俺が素直に褒めると、桐島博士が少し照れたようなかわいらしい表情を見せる。


「冷凍食材でもコツがあるんですよ。誰でもできますから」


 慌てて、冷静な表情に戻るのもかわいらしい。横で陽菜乃ちゃんが「桐島ママはツンデレ属性か~」と失礼なことを言っていた。

 デザートは、莉子ちゃんの牛乳と悠真君の小豆を使った、小豆入り抹茶ミルク寒天だった。抹茶の苦みと牛乳のまろやかさ、小豆の甘みが絶妙なバランスで、上品な味わいだ。


「わぁ、美味しい~! 莉子ちゃんの牛乳と悠真君の小豆が入ってるんだね」


 陽菜乃ちゃんが嬉しそうに食べている。


「うん! ママと一緒に作ったの!」


 莉子ちゃんが誇らしげに胸を張る。


「僕の小豆は、1時間もグツグツしたんだよ~」


 悠真君も嬉しそうだ。

 そんな和やかな雰囲気の中、田村さんが久しぶりに娯楽棟に行った子供たちに声をかけた。


「莉子ちゃん、悠真君、今日は娯楽棟で何をして遊んだんだ? ピアノかい? カラオケかい?」


「あのね、VR訓練したのよーー!」


 莉子ちゃんが元気よく答える。


「大人の10レベルをクリアしたんだよ~」


 悠真君も得意そうに言う。

 二人の爆弾発言に、食堂が静まり返った。


「え……10レベル?」


 田村さんが驚きの声を上げる。


「大人モード?」


 俺も思わず聞き返す。大人モードは俺たちでも苦戦するレベルなのに、6歳の双子がクリアしたなんて。


「一人じゃ無理だったから、悠真と二人でクリアしたんだよ~」


 莉子ちゃんが説明してくれる。


「二人だってすげぇじゃねぇか! 俺だって10レベルは3回に1回しかクリアできねぇぞ」


 田村さんが感心する。


「莉子ちゃん、悠真君、すごいね~! 私も負けてられないなぁ」


 陽菜乃ちゃんも気合を入れている。

 桐島博士は少し複雑そうな表情で話を聞いている。6歳の子供たちが、遊び感覚とはいえ、戦闘訓練をしているのは、母親として複雑に思うのも当然だろう。


「莉子たち、陽菜乃お姉ちゃんより強いも~ん!」

「ガオーッて来たらエイッてするだけだよ? 僕が教えてあげよっか?」


 得意そうに言う二人に、陽菜乃ちゃんがイタズラっぽい笑顔を浮かべた。


「あれぇ~? そう言えば、2人とも100マス計算の10レベルはクリアしたのかなぁ? アリス先生が、二人とも引き算が苦手って言ってたような~?」


 その質問に、莉子ちゃんと悠真君は急に目をそらした。


「あ、この寒天、すっごく美味しいね~」

「うん、莉子の牛乳が最高だね~」


 2人で顔を見合わせながら、必死にデザートの話にそらそうとしている。

 その様子を見て、大人たちは大笑いした。戦闘訓練は得意でも、算数は嫌いらしい。6歳らしくて、微笑ましい。


「明日は、算数も頑張りましょうね」


 桐島博士が優しく言うと、2人は「えへへ」と照れ笑いを浮かべながら頷いた。

 夕ご飯は、いつも子供たちに癒されてる気がする。


 それにしても、俺、VR戦闘は7レベルがギリギリなんだけど……はぁ。

 俺の小さな自尊心は、また少し削られた気がした。



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