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2.酸素惑星

 それから一億年ボタンを何回も押しているうちにある変化が起きた。


「見てくれ。すごい。光合成だ」

「光合成じゃと! それはロマンじゃな」


 バクテリアだらけの世界。

 その中に変化がある種が増えてきていた。

 その一つに二酸化炭素を取り込んで、酸素を排出する光合成をする種が現れたのだ。


「シアノバクテリアじゃな」

「ふむ。それってつまり、のちの葉緑体じゃろ?」

「うむ、もちろん。地球ではこの一回だけなのだ。酸素を出す光合成をする進化をしたのは」

「へぇ」


 そして二酸化炭素は惑星エイシールの海中や水中にも溶け込んでいる。

 それらを分解して酸素を放出するシアノバクテリアは大繁殖していった。


「すごいすごい。シアノバクテリアが大爆発だ」

「いや、これは問題があるのではあるんじゃ」

「そうか? 繁栄けっこうでは?」

「あのじゃな、酸素って毒なのじゃぞ」

「そ、そうか」


 実は古いタイプのバクテリアは酸素に弱いのだ。

 酸素に触れると酸化して壊れてしまう。


「嫌気性菌だな。今でも腸内とかにいる」

「へぇ、そうなのじゃな」


 こうして大気の成分の酸素濃度が上がっていく。



 それから地球では発生した事がない変化が起きようとしていた。


「光合成の一種に、魔力を魔石に変化させるのが出てきたぞ」

「おお、さすがファンタジー世界じゃな」


 つまりこれが将来的に魔物に魔石が出来る理由になるのだろう。


「魔力結晶、つまり魔石じゃ」

「こうしてマジックバクテリアが合成した魔石が堆積して、魔石層ができたりすると」

「そうだな」


 一億年ボタンを押すたびに、この年代から魔石層が出来るようになってくる。

 これが地下に埋もれて、のちに魔石の採掘をするようになるというわけだ。


「なかなかロマンチックでいいではないか」

「いいのじゃ。魔力はよく分からんがそのままでは溜められないのじゃ。魔石にして保存するのじゃな」

「ふむ、なるほど。イッツ、ファンタジー」


 酸素に加え魔石が世界に広がっていく。

 そうして世界のバランスに変化が起きていく。


「一億年ボタン、ぽちぽちぽちぽち」

「おい、そろそろなのじゃ」

「わかった」


 二人は様子を見る。


「ふふふ、ついに、オゾン層ができたぞ」

「おお、やったのじゃ」


 地球の大気の高い所では、強い紫外線が当たっている。

 この紫外線を酸素O2が受けると、オゾンO3に変化するのだ。

 そのオゾン層は強い紫外線を反射吸収する能力があり、地上を守っている。


「これでお肌の手入れも安心じゃ」

「女の子は大変だな」

「おっさんだって真っ黒に日焼けしてしまうぞ」

「おっと、そうだな」


 このシアノバクテリアと酸素の関係でよく注目されるのが、ストロマトライトという石で、シアノバクテリアが表面で活動してできた石なのだとされる。

 今でもオーストラリアの海岸線などで見られる。

 それで古い地層からも発掘されるという話だった。


 一億年ボタンを連打しているうちに悲劇は起きた。


「あああ、隕石が落ちたぞおおおー」

「のじゃあああ」


 二人してホログラムに浮かぶ惑星エイシールの画像に絶句する。

 巨大隕石が衝突し、熱風と塵が広がっていく。

 厚い雲に覆われてしまい、地表に光が届かなくなる。


 こうなると光合成の能力も下がってしまう。


「バクテリア君が死んじゃう」

「そうじゃな」


 地表の三分の一のバクテリアがほぼ全滅した。


「また育て直しじゃ。多細胞生物もそろそろだったのに」

「残念じゃな」


 暗黒の惑星はしばらく続く。


 それでも生物は再び地球を覆うように移動していき、活動をしていく。

 気が付けば、再びバクテリアが世界中に住み着いていた。


 しかし試練は一種類ではないのだ。


「全球凍結だと、スノーボールアース」

「なんなのじゃ?」

「気温が下がって、氷河期になる」

「これは生物にはつらい」


 隕石でも平均気温の低下は起きて苦労したが、再び気温が下がる。

 氷河期で凍ってしまったのだ。


「俺の惑星が氷漬けに」

「かき氷でも食べて待ってるのじゃ」


 見てるほうは呑気なもんだ。

 なんたって一億年ボタンをポチッと押せば解決する。


「やっと終わった」

「温まってきたのじゃ」


 そんなこんなで進化は進んでいく。


「そろそろじゃな」

「ああ、そうだな。じゃじゃーん。真核生物」

「おおおおお、すごいのじゃ」


 今まではバクテリアつまり細菌で、単細胞だった。

 真核生物は単細胞生物と多細胞生物の両方を含む。

 この時点では単細胞生物だ。

 たとえばゾウリムシなどが該当する。


「まずは、真核生物の前にミトコンドリアだ」

「聞いたことあるのじゃ」


 ミトコンドリアは簡単に言えば酸素と栄養素を取り込んで二酸化炭素と活動エネルギーを得る。

 酸素呼吸の基礎を作っている。

 もっと原始的な生物は酸素呼吸じゃないのだ。

 これにより爆発的なエネルギーを得られるようになり、より活動的な生物が誕生していくことになる。


「そうそう、ここは魔法生物とかもいるので、ちょっと違うんだ」

「なるほどなのじゃ」

「えっと魔力機関というのが細胞内にできて、魔力を取り込んでエネルギーを放出する、魔法力系の変換装置も同じころに誕生しておる」

「なるほどの」


 まあここは魔法の世界ではあるが、生物にも魔法を応用した機関が細胞単位であるということだ。

 俺たちの世界からすればかなり不思議だが深く考えてはいけない。


「それでミトコンドリアや葉緑体を取り込んだ、真核生物が生まれたぞ」

「おお、まだ細胞一個だけど、機関が複雑になっていくのじゃ」



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