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10.転生勇者

 さて選定された勇者は果敢に戦ったものの、やはり魔王軍を前に勝つことはできなかった。

 どうしても強さという点で今一歩だったのだ。


「じゃじゃーん。そこで転生勇者を用意しました」

「転生勇者とな」

「前回は召喚だったので、今回は転生だ。貴族の息子に転生してチートを授けておいた」

「もうやったなのじゃ?」

「もう、やった」

「じゃあ、なにも言えないのじゃ」

「まあそうだな」


 その家は王国の侯爵家の三男坊だったという。

 伝説では千年前の勇者の血を引くとされる。

 王国ではこの勇者由来の家は何軒か現存しているが、その真相は今となってはよく分かっていない。

 だがしかしおそらくは本当なのだろう。

 そこへ転生してきたのが三男のバージであった。


 幼いころから聡明で天才だと噂されていた。

 そのくせ妙に大人っぽく、決して実力を見せびらかしたりしない。

 どちらかというと能力を隠してさえいるように見えた。


「転生者だとバレたら大変だ」


 実に慎重であったが十歳の時、神殿に呼ばれてしまったのだ。

 神託が降りると事前通告があったので出頭するようにと。


「ぐは。マジか」


 ということではじまりの神殿で祈りを信者と共に捧げていると女神が脳内に降臨してきた。

 周りの人たちにも同じように見えているようだった。


「転生者バージよ。見えているか。めちゃんこかわいい女神アイテールなのじゃ」

「はい。見えております。女神様」

「そなたは勇者としてこの世界にきた。魔王を倒してくれ、頼んだぞ」

「はい、嫌ですけど、女神様がそういうなら、なんとか頑張ってみます」

「今すぐではなくてもよい。万全を期して、仲間と共に魔王を倒すのじゃ」

「わかりました」


 転生するときにも伝えられていたが、あれから十年経っていた。

 もう無効になったかと思っていたが、そうは問屋が卸さないらしい。


 念のため体を鍛え、剣の稽古は欠かさずしてきた。

 小さいころから頑張っていただけあって、かなりの実力なのだろう。


 現場では右へ左へと忙しそうにしている。

 まさに天手古舞だが、バージは冷静だった。


「前例に倣い、聖女、女魔法使い、女賢者を揃えます」


 賢者はすでにいた。

 あの前回の勇者と行動を共にしたものの、惨敗をして唯一生き残っていたのが賢者だったのだ。


「私にもう一度チャンスをお願いします。仲間の敵を討たせてください」

「いいよ、エルフのお姉ちゃん」


 こうして賢者はあっさり決めることができた。

 聖女と女魔法使いは、勇者がまだ十歳であることから、適齢期を考慮してまだ将来性のある若い子の中から美少女が選ばれた。

 もちろん勇者の趣味である。

 エルフもなかなか幼い容姿だったので、許容範囲だったのだろう。


 こうして今までで稀に見る幼い勇者一行は、王国の学園へと入学することになる。

 これが歴代の中でも違うところだった。


 英才教育を受けた彼らは神様の成長チートを授かっており、メキメキと頭角を現していった。


「うふふ、俺、エライ」

「はいはい、今、話がいいところなのじゃ」

「すまぬ、続けてくれ」


 強力な魔法から最強レベルの剣技まで、貪欲に身に着けていった。

 そうして王国学園を卒業すると同時に、魔王領へと旅立っていく。


「行ってらっしゃい」

「頑張れよ」


 その出発のパレードには王国中が歓喜したとされる。

 魔王を討伐すれば、落ちぶれていた王国が帝国に一泡吹かせることができる。

 帝国ばかり強い一方的なパワーバランスは王国民の長年の不満であった。

 やる気は十分だった。


 魔王領へと到着した勇者たちは千切っては投げ千切って投げ、大活躍をしていく。

 数々の魔物、初めて目にする上位種などもいたものの、どんどん倒していった。


 そしてついに魔王城へとたどり着いた。


「魔王、覚悟はいいか」

「ああ、千年、待っていたぞ。次の勇者」


 どうやら前の勇者は魔王のところまで到達しなかったようだ。

 それほどまでに強い敵。

 一世一代の大イベント。


「うりゃああ」

「ていやああ」

「力を合わせて、倒すのです」


 勇者一行の全力の猛攻撃にあい、魔王はついに倒される。

 ついに、ついに、封印ではなく、完全に倒されたのだった。


 その巨大な魔石を持って勇者一行は王国へと帰ることとなる。



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