九十一話 最強の闇使い
大源 総悟。
言うぞ。俺は言ってやる。いつだって俺は口で先陣を切ってきたんだ。
今回だってやってやる。
「俺を嘲笑え、俺を見下せ。俺はあんたを倒してその上を行くんだ」
「深淵を見ない者に明日は来ない。その身正して贖罪しろ」
(ビクっ)
反応したか。
やっぱり俺より強いのかよ。おもしれぇ、ジャイアントキリングを見せてやる。
強者を屠って得た今までの報酬でな。俺には実績があるんだよぉ!
大言上等。退路を絶って一歩を踏み出す。
それが俺の戦い方だ。
「10分だ。10分でお前を片付ける」
「風が山を避けるように、水が岩を避けるように、弱者は強者を避ける。
これが自然の摂理。地球の法則。秩序の理」
(ビクっ)
これも大言判定か。今回の相手は相当強いとみた。その分、色んな発言が報酬対象となる。
強敵はいわばボーナスステージ。ハイリスクハイリターン。
屋外での戦闘では必須の目薬を差す。
『遮陽の目薬』は太陽を見ても目が「んっ」てならない優れもの。
さて、相手は格上なんだからやっぱりまずは様子見として遠距離を保つのが正解だよな。
てことで、よろしく『嬉々とした猟銃』。
それと、予想外に距離を詰められた時用に『燃え盛る手袋』をしておく。
おかっぱなのが妙に存在感を放ってるんだよな。指揮官タイプの風貌だけど、童質を持つものに取って外見は意味無い。
細身でも怪力なやつがいる。俺だってその一人さ。武具を使えば超人さ。
さぁ、かかってこいや兵よ!敗北して俺の糧になってくれ。
そしていずれはボスをも倒す強者へと俺は至る。まだ諦めてねぇぞ!
戦う準備を整えた大源、対して未だ微動だにしないおかっぱの男。
西園寺 久国は無防備に太陽を背にし直立となった。
その時の小さなつぶやきは大源にも聞こえた。
「己が触れた闇はその性を知ることとなる。今一度、その姿を現し力の解放と共に我へ尽くせ」
誰への語りかけか、西園寺の体の影が一層濃くなり、体は完全にシルエットと化した。
『光届かぬ宵留めに黒く染み入る闇の華。
宝剣 耶魅叢雲剣』
一瞬、西園寺のシルエットがブレたように見えたが、それは体から何かが押し出されるように現れたからだ。
正確には体の影を象り顕現した剣。
見事な直剣で鍔は無く、柄頭は西園寺のおかっぱから象られた通り、かまぼこ型をしている。
そして影が映らないほどに黒い。まさに光を遮る闇にふさわしい。
そして、詠唱はまだ終わりではなかった。
『吸彩せよ。招かれざる光の艷を奪え。
宝鏡 耶魅鏡。』
顕現したのは黒い鏡。
黒すぎる鏡は光を通さない。それを盾のように持つ。
右手に剣、左手に盾を携えたその出で立ちはまるで古の戦士の様。
近接主体だよな?とりあえずこっちから仕掛けるか。大体予想はつくけど動いてみないことには変化は来ない。
すぐに銃を構えて発砲する。
「くたばれ、おかっぱ野郎!」
(ダバババババババッ!!)
引き金を一度引くだけで、聖気を流し込む限り弾丸は出続ける。
数十発の弾丸はまるで巨大な蛇のように西園寺へと襲いかかる。
しかし、冷静。
弾丸の嵐を前に体を縮めて盾を前に出す。
(ジュジュジュジュジュジュゥ)
「チート野郎が」
盾に当たらなかった弾丸は過ぎていき、盾に当たった弾丸は闇に吸い込まれたように消えた。
「言ったはずだ、闇は全てを吸収すると。
光は物の存在証明。光が届かない闇の中ではその存在が消え去ることとなる」
物理法則を無視したその妙事。それこそが『耶魅鏡』の能力。
シンプルにして明快。
触れた物を吸収する能力。抜け穴は存在しない。
光の剣とか持ってたら絶対相性抜群でしょ。生憎とそんな都合のいいものは持ってないけどね。
と、銃は無理だな。遠距離だと攻撃が届く前に盾で防がれる。ってことでお役御免だ。
さて、よろしく『霜降りの剣』。
とにかくやれることをやる。俺の一番の力は変化し続けることだ。止まったら最後、実力で差をつけられる。
だからこそ、俺は止まらない。
もういっちょ、『キャンガルーの長靴』。
「はぁあ!!」
『キャンガルーの長靴』はその名の通り、カンガルーの脚力を利用できる。
正二位程度の力量があれば容易に行える、数mを一足飛びで詰める、を誰でも難なくできるようになる。
大源の聖童師としてのセンスと才能は限りなく低く、吸血鬼とは思えないほどに身体能力は貧弱。聖童師としての評価は正三位程度。
が、そのハンデを補い強者と戦える程の優れた童質を持っている。
西園寺の構えた盾を掻い潜るように横を抜けると同時に、新たに出した『飛翼の傘』を広げ風の抵抗を受けて急停止。
その反動を利用した横薙ぎを叩き込む。
「ふん…言っただろ。闇は全てを吸収すると」
(シュンっ)
「なんでっ!」
完全に裏を取って腕を切り落としたはずが手応えは無かった。
腕を通って振り抜いた剣から微かに闇が散った。
「わからないか。我の世界では影も闇も同一なんだ。そこに光は通らない」
どういうことだよ。体の影もその鏡と一緒で攻撃を通さないってことかよ。
やっぱりチートじゃねぇか!ヤバいっ!
確実に当たると思い、剣を振り抜いた大源は無防備になっている。
西園寺は振り向きざまに剣を振り抜く。
「ふんっ」
なんだ…なにで防御すればいいんだ。たとえ防ごうとしても通り抜けるんじゃないのか。
くそ、考えても仕方がない。やるしかないんだ。
頼むぞ『輝輝坊主』!明かりで少しでも弱まれば良し。
それから『金のまな板』!とりあえず耐えろ!
剣と体の間に割り込んだのは、頭が輝く照る照る坊主。かなりの光量を放っているがはたして。
それから光を強く反射する金のまな板。
特別に丈夫で滅多な事では傷がつかない。
できる限りのことをする。それしかできない大源。
しかし虚しいことに、剣は輝輝坊主を通り抜け、金のまな板さえも通り抜ける。
(シュンっ)
「ぐわぁぁぁあああ!」
腕を切られ、訪れるであろう痛みに大声をあげたが。
「あ?」
切られたはずの腕の痛みは一切なく、血飛沫も飛んでいない。腕はついてる。
一体何が。
へへっ。そうか。
俺の攻撃が通り過ぎるんだ。そっちの攻撃も通り過ぎるってことだろ?
くそぅ、驚かせやがって。無駄に叫んじゃったじゃんかよ。俺の雄叫びを返せ。
でも、体勢を整えたいな。
無傷なことに気づき一旦距離をとることにした。西園寺は追う姿勢を見せずに振り抜いた剣を舞台役者のように大きく振り回してから下げる。
「闇は内から侵食する。気づいた時にはもう遅い」
「まさか!」
慌てた様子で取り出したのはエナジードリンク。それをガブっと一気に飲み干し口を拭う。
「ふはっ。俺に状態異常は効かねえぞ。
『漲るエナドリ』は体内組織を活性化させてあらゆる異常を排除する。
それがたとえ、闇だったとしてもな」
「闇に抗う者か。苦しむ姿が目に浮かぶ。
後悔しても知らないぞ」
「望むところだ。後悔の無い人生なんて挑戦しない人生だろ。
そんなの生きてるって言わねぇよ。
歩いて転んで起き上がって走ってまた転んで立ち上がって。
死んだらできない事をやるのが人生だろ」
「ふっ。無垢の戯れ。往々にして未成熟者の思考」
「そうさ、心はいつだって少年だ。
いずれ俺は世界を獲るんだ」
会話をしながら二つの目薬を差す。
一つはさっきも使った『遮陽の目薬』、もう一つは『非灯の目薬』。
夜でも昼間のように明るく見える目薬。
同じ目薬を差したのは『漲るエナドリ』が目薬の効果も消してしまったからだ。
デバフだけではなく、バフも状態異常の範疇となり効果を消してしまう。
闇の明度とかが関係あればこれでなんとか一矢報いれるかもしれない。なんとか影の薄い所を攻撃できれば。
あとは…ドピュドピを打っとくか。
正式名称は『ドピュっとドーピング』。
俺が得た報酬の中で唯一の身体強化で、あと四個しかない超貴重アイテム。
十個纏めてもらえたけどそれきりだった。
先の見えない相手にだけ使ってる切り札的存在。
これでどこまで意表をつけるか。
「色素足りてなくない?出血させて彩りあげるよ」
(ビクッ)
ほんとに?怪我させるのも難しいと思われてんの?さすがに舐めすぎじゃない?
まぁ、もらえるものはもらっておかないとね。
目薬の影響で世界が灰色だ。
「ふっ。ちょっと危ないセリフじゃない?テンション上がるんですけど」
あんたの喋り方が伝染ったのかも。
攻める準備を整えた大源が動き出そうとした時、この戦いが始まって初めて、西園寺が自ら動き出した。
これに反応が遅れ、避ける選択は潰され防御を余儀なくされた。
(できるのか?)
今まで無表情で戦っていた西園寺の表情に変化が現れる。
心の奥底で燃えたぎる何かが鋭い眼光に宿っている。
ついに俺の戦闘力の低さが露呈したのか、無遠慮に攻めてきやがって!
舐めるなよ。
『幻奇の陽炎』。
蝋燭の火が光の屈折率を弄り、幻の左腕を作り出し本物と違う動きをさせる。
そうすることで本来体に到達するであろう剣との距離を離す。
避けれないなら攻撃をずらせばいい。
(ブゥンっ)
「幻影だとっ…!?」
「残像だ」
ホントの事を言ってやる義理は無い。それに言ってみたかったし。
切った腕は空気が揺れてバラバラになる。
一瞬驚くもそれだけで終わらない。
振り抜いた後、前のめりの状態から右手を剣から離し、返す拳をそのまま右腕に叩きつける。
西園寺の体が目隠しとなり、拳が見えずにモロにくらう。
「ぐあっ」
先程の剣と違い、明確に衝撃が伝わった。
衝撃で肘が横腹にめり込みさらなる痛みを受けた。
「光無き所に闇があり、光ある所に影がある。
常在暗影。付け入る隙非ず」
顔を歪める大源に、体勢を整えた西園寺が腹に拳を叩き込むと、大きく吹き飛ばされた。
「闇とは無から存在を許された唯一の状態」
「ぐはっ」
聖気によって強化された拳の一撃は容易に人を吹き飛ばす。
勢いのあまり、減速することなく飛んでいきでいき海を渡る。
止まれ止まれ止まれ!!これ以上はヤバい!
『吸い寄せる程に松脂』を手のひらに付けて…『何処の杭』に『丈夫なロープ』を括りつけて空間に打ち込む。
(グギュッ!!)
「ぐほっ!」
凄い勢いで飛ばされる中での急停止。
腕がちぎれんばかりの衝撃を受けるも、なんとか耐えて留まった。
かなりの距離を飛ばされ、レッドオーシャンは手のひらサイズまで小さくなって見える。
ここから戻る手段を考え、すぐにでも西園寺と戦わなければならない。
他の所へ加戦されてしまえば危ないのは明白。
攻撃無効に防御不能の攻撃。明らかに過剰戦力で戦況が大きく変わってしまう。
大源は頭を働かせる。
『測ルーペ』でレッドオーシャンまでの距離を測って『ハリボテリフト』で想定する高さまで昇る。
そこからは『滑空いいヒーローマント』を付けて『追い風音色』のトライアングルを鳴らしてレッドオーシャンまで風に乗る。
(チーン…チーン…)
とりあえず落ち着いたか。一時はどうなることかと思ったけど案外どうとでもなるな。
やっぱ俺すげぇ。
あれ、腕が黒い……。
もしかして!
やっぱりお腹も黒いぞ!
殴られたからだよな。体内攻撃の次は体表攻撃かよ。めんどくさい攻撃ばっかり!
あのチート野郎!
『清らかなボディクリーム』を黒くなったところに塗りつける。
みるみるうちに黒い模様が消えていった。
ふぅ、たくよぉ。便利なアイテムが多すぎるんだから。
あっと、メモしておかなきゃ忘れちゃうな。使ったアイテムは…と。
(チーン…チーン)
大源は左手にトライアングルと棒を持ち、右手には『刻筆』を握り、腕に文字を綴る。
『刻筆』。
書いた事を完全に記憶することができる。
これにより、今まで報酬で得た1615個のアイテムを完全記憶している。
それから普段使いしている便利アイテム137個も記憶している。
言うなればパッシブスキルのようなもの。
報酬で得た大量のアイテムの完全記憶に脳の大半を持っていかれている為、年々アホになっていっているが、その事に本人は気づいていない。
そのせいで石辺によく怒られている。
頭も体も低スペックな為、戦闘は本当に向いていない。
そのおかげか、童質の『報酬』とはめっぽう相性が良い。
大源にとって大半の相手が強者な為、そのほとんどが大言になるという高システム。
そのため、年月に比べアイテム数が以上に多い。便利道具もあれば強力武具もある。
戻ってきた大源を見つけた西園寺は大きな黒い翼を背中に生やして飛んでいく。
『宝翼 ヤミカロスの翼』。
大源の腕に黒い模様が無いのを確認し、剣と鏡を手放す。
闇の効果が無いことを悟り、力で押すことを決めた。
待って、本気で攻められると勝ち目ないんだが。実力差が出ちゃうんだが。
(グッ…ゴッ…ガッ。バッ!)
西園寺の拳は体にめり込み、大源の拳は空を切る。
ほんの数秒で身体中に黒い模様が浮かび上がる。スーツはボロボロに、ネクタイは結び目でちぎれている。
細いのに拳が重たい。ぐはっ!
空振りが余計ダメージを増やしてる。うっ!
『幻奇の陽炎』の効果が効いてない。だばっ!
やれ。今は避けられない攻撃をされてるわけじゃない。ぶべっ!
『囀る幼鳥』!奇声で隙を作ってくれ!
(ピギャァァアアアア)ぐはっ!
『特濃ぶるぶる振動シート』で足をふらつかせぶへらっ!
これでもくらえっ『わさび』!
闇に吸いこまれた…あ、攻撃効かないんだった。
てか、なんで俺攻撃してたの?あんたはなんで俺の攻撃避けてんの?
当たらないんだから避ける必要ないんじゃ。んはっ!
意地でも攻撃当てたくなった。たとえそれが無意味だとしても。
避けるなら誘導はできるだろ。
『耳栓』をつけて『怒傘』っ!
(パァァンっ!!)
大きな音を立ててめちゃくちゃ勢いよく開く。
からの『超伸棒』×5!手足に向かって伸びろ!
(((((ギュンっ!!)))))
避けられるのも想定内。避けてくれてありがとう。
足下に転がった『怒傘』がいい仕事をしてくれた。俺の足の向きを隠してくれた。
だから、身体能力で劣る俺があんたの先を行けた!
「暴発っ!」
大源の浅く練った作戦は見事にはまり、避けた所に待ち構えていた拳が脇腹に当たる直前、火を吹いた。
(ボフっ)
「なっ!?」
渾身の一撃は西園寺の体を傷つけた。
どういう訳か、無敵のはずの西園寺へと攻撃が通った。
しかし満身創痍の体から放たれたパンチはあまりにも微かな傷口をつけるだけだった。スーツのポケットのポタンが割れ、断面が皮膚に刺さった。
薄皮一枚を切り、ぷっくりと血が出た。
それは傍目からは絶対に見えない傷痕。
痛みよりも驚きが勝る西園寺。
『報酬』を受け取る大源。
「ん」
今までの経験から、突然の報酬にも冷静に対処し、頭に流れ込んでくるアイテムの情報を整理する。
『近場の馬鹿力』。
10分間、近くにいる者の力を自身に上乗せする。一日三回、発動条件はスイッチを押すこと。
これは、一時的に相手を上回ることができる超強力アイテム。
相手の100をもらえば、たとえ自分が1だったとしても数字の上では勝る。
100対101。絶対有利なアイテムを手に入れた。
大源は間髪入れずに手元のスイッチを押した。
(ポチっ)
途端、漲るエネルギー。その変化を西園寺は読み取った。
09:59。
ここで潰さなければヤバいと感じとり、この戦いで初めて声を荒らげた。
「深淵に触れたか貴様ァ!!ゴートゥーヘルだ、禁忌の咎人」
「何言ってるか全くわかんないよ。
自分より弱い相手の言葉って入ってこないね」
力を手に入れた大源は調子に乗った。
09:53。
「研がれた刃は血を啜る。強者の余裕ってやつかな。あんたがこういうの言いたくなる気持ちがわかった気がする。
今ならボスだって見下せる。その資格を俺は持ってる」
「力がどうした。大事なのは━━」
大源は内心焦っていた。発言に頭を回す余裕が無く、自分が何を発しているか全く気にしていない。ただただ湯水のように口から言葉が流れ出ていく。
その間、真剣に思考を巡らせていた。
なんで。なんでなんでなんで!
なんでパンチが当たったの!?理由を教えてよ!この流れ、俺が勝てる流れでしょ!
波が引いていく前に押し切りたい!
当たらないはずの攻撃が当たる。剣は通り抜け、わさびは吸い込まれて拳は避けられた。
拳を避ける理由?分かってたらもっと頑張ってたよ。
当たるから避けてた?通り抜けない、吸い込めないから避けてた?
制限時間は10分だぞ。
やっぱり聖なるファイヤーパンチだからか。
『燃え盛る手袋』全てを燃やす絶対の拳。
炎、火。闇、影。
……ぁ。そうか!そういうことか!
「━━━━んだ。
おい、聞いているのか?まあいい。そういうわけで━━」
でも、本人が弱点を知らないはずないよな。ましてやこんな強いやつがそのままにしてるのもおかしい。
なにか隠してる。
それでも俺に選択肢は無い。やれることをやるだけだ。
「━━━したがって、技術は力に勝る。
出力を完全に制御することは一朝一夕でできることじゃない。
故に勝ち目は無いと思え。本物は死なない」
なんか長いこと語ってたみたいだけどもしかしてあんまり頭よくない?
なら勝った。
かかとを上げた瞬間、凄まじい速度で西園寺の懐に潜り込んだ。うひょっ。
ドピュドピのおかげでクリアに見えてるし、足の指で針の穴に糸を通せるぐらい体を繊細に操れる。
これが強者の生きてる世界。すげぇ。俺にも見えた。
「フルスロットル暴発!!」
見事に顎を捉え、勢いそのまま殴り続ける。
よく見ると分かるのが、西園寺の体の影が異常な動きを見せている。
これは影を操り、拳を防ごうとしている。
西園寺の童質は闇。
闇は全てを吸収してしまう最強の能力。
そして、今回も影を動かし攻撃を防ごうもしてあるが、間に合わない。
そう、西園寺の100に対して大源は1では無い。小さくない開きが両者にはあった。
強力な童質は慢心を生んだ。
唯一の弱点である光。
大源は答えに辿り着いた。
火の光を利用し影を葬る。いくら太陽を背にしても影は照らされる。
拳に宿った火によって。
俺のフェイズは終わらない!
08:26。
戦闘経過時間8:14。西園寺 久国、気絶により戦闘不能。
戦いが終わると同時に二つの『報酬』を受け取り、さらなる強さを手に入れた。
大源は『清らかなるボディークリーム』を全身に塗り、体を綺麗にしてからその場を後にした。




