表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万古闘乱〜滅ぶのは人間か吸血鬼か〜  作者: 骨皮 ガーリック
些事万起
51/92

五十一話 不完残念勝

(パチン)

 男が指を鳴らすと空が沈んだ。


 この荒野を照らすのは月明かりだ。


「今夜は十三夜。

 少し欠けたこの形が好きなんだ。

 美味しそうだろ?思わず口に入れたくなる程にキュートなお月様だ。

 ネムル様の次に……ね」

 頬に手を添えて恍惚とした表情で夜空を見上げる男。


 ここまでの言動からして控えめに言って変態だ。



枕頭預(チントーヨ)の逆鱗に触れた君はたっぷりと私の力に慄く事を許します」

 腕を前に伸ばして指先を泳がす。

 一々動きが舞台の人みたいで、それを日常でやられるとなんかイラッとする。


 体で感情を表現するタイプか。なんとも鬱陶しいな。


「さて、戦う準備は出来たかな?

 YESかい?NOかい?もちろんYESだよねっ!

 もうこの滾り、私には止められない……ょっ!

 君が原因なんだ。もちろん君で発散させてもらうよ。

 ねぇ、YESだよねっ!」

(うわっ)

 切れ長のツリ目が細められて身の毛がよだつ言葉にならない嫌な寒気を感じ、迷わず前に出た。




 触腕で力強く蹴られた地面は凹み土埃を吐く。


 その勢いのまま男に殴りかかっ━━。



(パチィン!!)

 辺りに響く破裂音。振るった拳に力が入らず、目線を向けると思わず腰が落ちた。


 斜め右下に目線を向けると何故か真後ろの地面まで見える。

 右腕から右胸までの完全消滅。


 あまりの突然の出来事に体が固まる。


(痛くない。僕なら動ける。治れ!早く治れ!)


(スタッ……)

 一歩。


 男が足を前に出したのを見て思わず仰け反る。


(パチィン!!)

 乾いた音が再び響く。


「か……」

 下半身消失。

 仰け反ってて良かった。ビビって良かった……。


 崩れる上体をそのまま左手で地面を押し出し後ろに跳ぶ。


 空中で一回転する頃には全身が元通りになる。


「ふはっ……」

 過去一焦った。息つく暇なく殺されるところだった。


「おやおや、どうしたんだい?私はただ、足元にいたアリを踏み潰しただけなんだけど。

 どうしてそんなに息を切らしてるんだろう?」

 そう言って前に出した左足の靴裏を見せてくる。

 靴底に張り付くアリの死骸。


「もしかして踏まれると思った?

 安心しなよ。私は踏まれる趣味はあっても踏む趣味は無いから。フフ。


 それにしても凄い回復力だ。体の中をしっかり見たのは初めてでね。少しくらっとしちゃったよ。興奮で」


 俺の体が半壊して飛び出た血液が地面を汚し、男の付近に飛び出た血しぶきは凍りついて周囲を漂う。


 まるでスノードームみたいに凍った血粒がフラフラと一定の円形範囲を漂い続ける。




 あの範囲で血が凍って漂うって事は消失させる童質じゃないのか。範囲内に入ったものを即座に消し飛ばすって感じだったけど。


 触れられた感覚も無いし、とんでもなく速く動いたって感じでも無い。


 ほんとに範囲内に入った瞬間、抵抗無く体が消し飛んだ。



(ウーパールーパー)

 今回は消耗品として動いてもらう。ただただ男の童質が不可解。

 とにかく今は情報が欲しい。



 数十体のウーパールーパーを召喚して突撃させる。


(パチィン!パチィン!パチィン!パチィン!)


 範囲に入るや否や、跡形もなく消し飛び、新たに召喚して消えてを繰り返す。



 たくさんの犠牲をはらって少し情報が整理されていく。


 大体、範囲は男を中心として三m。

 それ以内はどうやってもウーパールーパーじゃ侵入できない。

 消し飛ぶというよりも破裂するって感じだ。なんとなく見えたのはウーパールーパーの体が途端に膨張してそれに耐えきれなくなって破裂。


 範囲内に入っても多少は猶予がある?ただほんとにコンマゼロ秒とかだけど。


 既に童質の発動は終わってて男の視認、認識問わず、範囲内に入ってきたものを問答無用で破裂させる。

 さらに凍らせる事も出来ると。ただこれは今のところ俺の血液だけが凍りついて周囲をプカプカと漂ってる。


 ここまで漂い続けるってことは重力が無いのか?それとも聖気の流れができてるか。


 ともかく、なんて規格外の能力だよ。この男。



 数百のウーパールーパーを突撃させてもその場から動こうとしないのは何故か。



「そんなに私に触れたいのかい?でもダメ。

 ネムル様以外がこの私に触れられるとでも?

 私に近寄る事が出来るのはネムル様の他に、誇り高き枕頭預のみ。


 空気の読めない輩に容赦はしないよ」


 男の大して興味の無い話を流しながら、突破口を探す。


 召喚したハヤブサが上空を旋回する。

 視点を借りてなるべく客観的に状況を見据える。

 かなり分が悪い戦いなのは承知で、どうやってその差を埋めるのか。

 近接格闘以外の攻撃手段を持ち合わせていない僕にどうにかできるのか。

 やるしかないのはわかってる。

 だからどうやるかだ。


 範囲内に入ったら自動的に破裂して消失するから範囲外の外から何とかしたいが、空気を焼く雷も辺り一帯を吹き飛ばす爆発も僕には無い。あと熱も。


 限られてる選択肢の中から可能性を見つけないといけない。


 それと多分だけど範囲内に地面は含まれてない。仮に含まれてたとしたら何かしら異変が起きてるから突くとしたらそこの穴。

 だけど、あいにくと地中は僕の守備範囲外だからこの選択は無し。


 例え触腕が地中を進んで行ったとしても、その間に対策されて終わりだ。

 使うなら奇襲で。



 ウーパールーパーの突撃をやめて今度は僕自身で試していく。

 全身を範囲内に入れないように細心の注意を払って動く。




 体を犠牲にしてわかったことがある。一瞬で膨張するけど、僕の体の場合さらにほんの一瞬、破裂するまでに猶予がある。

 最初の時にはそれどころじゃなくて気づかなかった。

 ウーパールーパーの体の大きさだとそれを感じることはなかったけど、体積に応じて違いが出てくるのか。

 それでもほんの一瞬だ。

 男にたどり着く前に当然破裂する。


 ここまでくればあとは簡単だ。


 やることは一つ。膨張しきる前に突っ切る。

 いつだって答えはシンプル。手の届く範囲に転がってるものだ。


 そして僕は新たな作戦に出る。


 

 人類が夢を見る代物。誰もが(ほっ)し、憧れる。自由の象徴とも言え、決して人類が手にすることのできない至宝。


 僕は背中に翼を生やす。

(バサッ)


 大きく広げた偉大な翼が空気を一撫ですると空中へと躍り出た。



 空中(くうちゅう)浮揚(ふよう)する僕は触腕を消して体の面積を小さくし、さらに上昇する。


 地上の男を視界に捉えて逆さまになり急降下。翼を畳んで空気抵抗を最小限に抑えて地上に降りかかる流星の如き一矢となる。

(プヒュン!)


 空気の拘束を剥がしてさらに加速する。

(どぉらぁぁぁあ!!)


 亜音速には遠く及ばないがそれでも時速三百kmは優に超えてる。


 超速の流星。



(ピンっ)

 範囲に入った!


 頭が膨張を始めるも限界はまだ遠い。

 まだだ、まだ届かない。もっと前へ!



 一秒前の自分より前へ。



(パチィン!)

 しかし、伸ばした手は男に届かず破裂し、それは他の部位にも連鎖するように頭それから上半身が破裂する。



 暗黒。




 光を捉えた時、膝を着いてへたり込んでいた。



 ギリギリ足が残ってそこが再生したのだろう。

 結局何も出来ずに帰ってきてしまった。

 できる限りの最速の希望もあっけなく潰えた。



 男の周囲を漂う血粒は増え、爪なんかも凍りついて混じってる。


(!?)


「そうか。それができるなら……もしかしたら」

 たった一つのの妙案が舞い降りた。



「そろそろ終わりにしないか?何度やっても君が私に触れることなんてできやしないさ。一秒でも早くネムル様のそばに。

 いい加減諦めなよ。長時間の拘束は好みじゃない。

 さあ、降参してくれ」


「もう勝った気でいるのか?僕はまだ諦めてないぞ。

 その綺麗な顔に傷をつけてやるよ」


「君が私に?頭が飛んで脳みそ拾い損ねたんじゃない?

 天地がひっくり返っても無理だね。第一私はまだ傷一つついてない」


「天地はひっくり返る。

 それに僕だって傷一つついてない」

「心に傷を負わせてあげようか。ひっくり返らない実力差という絶望で」


 心を落ち着かせ、再び空に舞い戻る。



 さっきと同じように。そしてそこからは賭けだ。一か八か失敗すれば勝ち目は無くなる。

 ただ、成功すれば一気に盤面がひっくり返る。



 二発目の流星が降る。



 ここでもまた、体が膨張を始め伸ばした腕も破裂する。

 体が散り、さっきと同じように意識が暗黒に放り出される。




 意識を保て、まだ死んだ訳じゃない。僕はまだここにいる!

 知覚しろ。自分の体を。可能性を。限界のその先を!



 何も見えない真っ暗な空間の中ではっきりとその先にある未来を見据える。


 覚悟が力となり、形となる。

 目の前の一筋の光に失った腕を伸ばして自分を信じる。



(それは僕だ……)



(ピトゥン)

 それは鉄壁が崩壊した音。僕が内側に侵入した音。体が完全再生した音。


 一筋の光を掴んだ音。




 復活した場所は男の範囲、その内側。


 鉄壁は男を包んでた訳じゃない、囲ってたんだ。

 だから男はデタラメ範囲の影響を受けなかった。


 それと漂ってた血粒と爪が男と一定の距離を保ってたのがそれを確信させた。


 どうにか内側に入ることが唯一の道。

 歩ききったその道の先に勝利がある。



「なっ!?」

 驚愕に染まった男の表情を拳で叩き潰す。


「ぶばっ!」

 思いの外吹き飛んで追撃を入れれず、また振り出しに戻った。


 いや、もう脅威じゃない。通れる事がわかれば躊躇なんかしない。

 何度だって殴ってやる。



 見事に吹き飛んだ男が立ち上がる。


 


「私は満掛(みちかけ) 蓮魔(れんま)

 ネムル様を見守る者。

 こんな事は初めてだ…歓迎するよ。

 『極々小さな(パーソナル)宇宙空間(スペェーィス)ッ』」


 満掛か。いい相手に出会えた。


 再生する時、本体は自由に選択可能。例え体の大部分、下半身が残ってたとしても意識を爪に飛ばせばそっちで完全再生できる。

 こんなことがあっていいのか。

 狂ってる。やりたい放題じゃないか。


 多分、僕はもう死なない。



 ァァ……ィィ……。最高に気持ちィィ……。





「なんて気色の悪い顔をするんだ。

 君は命の上を歩いたことはあるか?

 その先にある光を見たことはあるか?

 私はある。


 命で組み立てられた土台っていうのはすこぶる頑丈なんだ。

 それは恐怖と畏怖、信頼を兼ね備えた優秀な建材。


 それがここ。地下都市なんだ。


 ネムル様を狙う吸血鬼たちを日夜殺し回って築き上げた名声。

 吸血鬼に枕頭預(チントーヨ)の名が広まり、いつしか確固たる地位を手に入れた。

 私たちが殺してきた者たちによって築き上げられた。

 その完成系が地下都市で、吸血鬼は誰も近づかない。

 安寧の地」


 そういえばそうだな。こんなに人間がいるのに吸血鬼が異様に少ない。それに平和な空間。


 こいつらがいるから誰も近づけないんだ。例えどれだけたくさんの獲物がいようと。



「君は吸血鬼を殺す時、何か感じることはあるかな?」

「無い」

「人を殺す時、何か感じることはあるかな?」

「状況次第だけど多分無い」

「ハハッ、狂ってる。吸血鬼にでも育てられた?」

「何も面白いことじゃない。

 常に自分を正当化してれば自分の行いに間違いは無い。

 吸血鬼も人も殺すとなったらそれは仕事だから。ただそれだけだ。

 感傷も同情も必要無い」


「それはとても歪んだ思想だね。

 いつかきっと後悔する」

「僕はどんな傷だって即座に再生する。

 それに心の傷は自分を強くする最高のスパイスだ。是非とも味わいたいね」


「君は将来、必ずネムル様の邪魔になる。

 今、消してしまおう」



 これがゾーンてやつかな。この童質があればどんなことだってやってのける。そんな確信を持って僕は今、新たなステージに立つ。


 童質よ。

 僕の魂を喰らい更なる高みへ連れて行け。

 


「愛に焦がれて君想い 情の渦に飲み込まれ

 流れ行き着くは常世の境界

 後進一切前進合切 進む(あし)()り退く(あし)(あら)

 眼下(がんか)(あくた)に爪を()き 翼を持って地上を制す

 再死(さいし)万生(ばんせい) 流水の如し」


(デュクシッ)

「童質改変。『奇界(きかい)臨獣(りんじゅう) 変態(へんたい)(きわ)ミ』」



 両隣に悠然と佇む異界の化け物。

 鳥の頭と翼を持ち、のペっとした黒い胴体にタコの触腕が生える。もう一方は白い胴体だ。


 二mを超える限りなく異形に近い化け物二体が人のように、翼と触腕を生やした兵頭の隣で立ち構える。



 その二体が放つ異様なオーラに満掛の腰が沈み、目が据わる。

「改めて確信した。

 私は今、君を殺す」


「僕たちの意思は繋がってる。行くぞ!」

「「キィエェェェェェ!!」」

 黒い怪物と白い怪物が空に咆哮を飛ばす。


「機嫌いいじゃん。

 一緒に行こうか、死を超越した怪物たち。

 僕より先にくたばるなよ?」

「「キュエ!」」

「いい返事だ」


 三体の怪物が飛ぶ。


 そしてもう一人、やる気を見せる者がいた。




「無謀。とは言えなくなった」


 童質改変ね。

 それになにその禍々しい怪物は。

 どうせその二体も再生するんだよね?気持ち悪い速度で。ほんと厄介極まりない。だからこそ。



「『宇宙を纏う者(スペースダイブ)

 いいよ。受けて立つよ生狂士(フライブ)


 生きる事に執着せず、死ぬことに恐怖を覚えない。

 にもかかわらず生に囚われている。


 君は最高のイカレ野郎だよ。


 死なない怪物 『生狂士(フライブ)





 拳に聖気の塊。拳で戦おうって事ね。それに多分聖域を出してる。それであの無敵範囲を消してるのか。


 今まで通り舐めてくれてた方が楽だったんだけど。

 拳を最優先警戒で数で押し切る。


 死なない兵隊を上手く使え。


(くっ速い!)

 向かってくるのか!?

 黒を盾にして裏に回るか。


「黒!!」

 言葉にしなくでも僕の意思は届く。

 満掛と僕の間に黒が割り込み、その拳が胴体にくい込んだ。

(ピキンッ)


 瞬間凍結!?

 触れただけで黒の胴体が凍りつき動きに制限がつく。

(砕け!)


(パキンッ)

 黒の触腕が黒自身の凍りついた胴体を砕く。

 頭と足が分かれるもすぐに再生し満掛を掴みにいく。


 満掛はそれよりも速く、僕たちに到達した。


 満掛を迎えるのは十六本の触腕。

「圧し潰す!」


 物量で満掛の童質をすり抜けて、そのまま倒しきる。


「どらぁ!」

「キュイ!」

「ふっ」


 触腕がうねりを上げて襲い込む。

(ブビュンッ)


 そして満掛の余裕めいた表情の真相を知る。

 驚くほど柔軟に動く満掛の腕は的確に触腕に触れていった。

 滞りなく、襲いかかる全ての触腕を。この窮地の中平然とやってのけた。


(パチィン!パチィン!パチィン!)

 そして今度は触れたそばから破裂していく。さっきまでとは比較にならない程の超強力な膨張力。


「くあっ」


 ただし、雪崩のように再生したそばから触腕を放つ。


「さすがに手が足りない。

 『延波宇宙(スペースウェイブ)』」

 胸の前で両手を合わせて広げると聖気の膜が現れた。突っ込んでいく触腕。


(パチィン!パチィン!パチィン!)

「くそっ」

 触腕を一掃された。



 それでも……僕たちにだけ注意を払ってて大丈夫?


 ちょうど満掛の後ろから復活した黒が殴りかかる。


「ぬぁっ!」

 反応するも僕たちで手一杯だから黒は手に負えない。

 さらに集中を欠けばこっちも疎かになる。


「どらぁ!」「「キィェェェェ!」」


 三方向から特大パンチが入る。


「くっ。

 三体同時に攻められると防御に回らざる負えなくなるね。

 『極々小さな(パーソナル)宇宙空間(スペース)』」


 また殻に籠ったか。でもそれはもう攻略済みだ。

 一斉攻撃で畳みかける。


 あの時と同じように最速で突っ切る!!

 お前らもできるよな!


 空から一点突破の一斉急降下。

(ブヒュンッ!!)


(勝てる!)

 あんた最高だよ!!


「これだけめちゃくちゃやっても耐えてくる相手なんて初めてっ。

 頭に留めてたアイデア全部、君で試したい。

 君なら耐えてくれるよね。YESだよねっ!

 さあ行くよっ!

 『並麗宇宙(ザ・ユニバース)』」


 ボウリング球程の数十の黒い球が辺り一帯に散りばめられた。


 誘い込まれた!!まずいっ!

 目の前には避けられない黒い球。

 ここで破裂したら間違いなくやられる!

 黒と白の眼前にも球体が。


 目の前に突然現れた絶対的な敗北。

 例え再生が間に合ったとしても攻撃に転じられない。


 改めて、防御不能の攻撃の恐ろしさを身を持って感じた。


(((パチィン!!)))


 みんな仲良く破裂した。








 しかし、いつまでも訪れない敗北。


 再生した視界に映るのはその場に立ち尽くす満掛。

 予想できなかった現実に体に力が入らない。

 

「なんで……」

 待ってたのか?いや、そんなのはいらない。あるはずない。こんな絶好の機会を逃すなんてことはありえない。


「終わったよ」


「まだだ。まだ戦える!」

 何が。どうなって。


「違う。私の聖気が底をついたんだ。ついてしまった。

 少しハッスルしすぎたかな」

 力の抜けきった顔が力を使い果たしたのを実感させる、


「そんな…」

 言葉が出ない。

 言われて気づく。黒い球は全て消え、聖気を纏っていない満掛に。


「それもこれも全部、君がゾンビすぎるせいだ。

 それとこの私に勝ったんだ。もっと喜んでくれよ。

 こう見えても負け無しだったんだ。

 君に初めてを奪われたっ」





 こんな終わり方なのかよ。あんたのおかげで僕は一歩先に行けた。

 だからこそ、あんたをちゃんと倒したかった。

 その常識外れな童質を正面から破って勝ちたかった。


 僕の童質ならそれが出来たんだ。



 不完全燃焼。



 いつの間にか城の前にいた。



 僕たちの周りを囲むのはお互いの仲間たち。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ