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万古闘乱〜滅ぶのは人間か吸血鬼か〜  作者: 骨皮 ガーリック
些事万起
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四十五話 楽園

今日、もう一話投稿すると思います。

 地下都市にあるバー。

 カウンター席に座る二人の男。


「今更ですけど毎日こんなんでいいんですかね」

「なにが?」

「この状況ですよ。

 毎日飲んで寝て、気分転換に体動かして遊んだり」

「それのなにが不満なんだ?」

「代わり映えの無い毎日ですよ」

「ほんとに今更だな。もう二十年近く経ってるぞ」

「最初は仕方なかったじゃないですか」

「まあな」

「でも…」

「確かにその気持ちはわかる。

 地上にいた時の方が大変だったもんな。毎日生きるために」

「はい」

「でもよぉ、世の中適材適所ってのがあるだろ?俺たちにとってそれがここなんだよ」

「わかってますよぉ。僕たちは大切な仕事を任されてる。替えの効かない仕事だって」

「そうだろう」

「でも、いい加減飽きましたよ。

 僕は毎日毎日数時間、貯水タンクに水を貯め続け」

「俺は風力発電の羽を風で回し続ける」


「僕たちにしかできないからやり続けた」

「俺たちが地下都市を回してるんだ。誇りを持てよ。地下都市の電気と水は全て俺たちが(まかな)ってる」


「違いますよ。どこまで行っても僕たちは奴隷です。

 二十年前、聖童師として仕事をこなしている時に突然攫われて、気づいたらここに連れてこられた。


 あの吸血鬼たちに負けて働かされている」


「いいじゃねぇか。椅子に座ってラジオ聴きながら風を送って風車だけで生活が保証されて、さらにVIP扱い。最高じゃねぇか」

「僕は刺激が欲しい」

「もう俺たちはそんな歳じゃねぇだろ。安定を謳歌しようぜ。それが人生の正解だ」

「ほんとにそう思いますか?僕が聖童師になる時、大空に羽ばたく未来を夢見てました。

 それが今は空を見ることも出来ずにのうのうと生きてる。これ、生きてるって言いますか?」


「どうしようってんだよ。仕方はねぇだろ、俺たちは負けたんだ。あいつらを倒して地上に行こうってか?

 冗談はよせよ。ここに来てからまともに戦闘訓練してねぇだろ。そんなんで勝てるはずもない」

「でも…僕は……」


「現状を変えたいってんなら動けよ。手繰り寄せろよ。そんなんじゃ、いつまで経っても変わる事なんて出来ねぇ」

(ガシャン!)

 倒れたコップが俺の方に転がって中身がズボンにかかった。

「おいおい、服が汚れちまったじゃねぇか。なんか冷めちまった。

 今日は帰るか」


 急にどうしたんだよ。俺たちはB、C地区では特別扱い。使い切れないほどの給料を貰って使いたい放題。それの何が不満なんだ。


 俺は毎日4、5時間三枚羽を片手間で回すだけでこんなに大金が手に入るこの地下都市が心地いい。


 頼むから面倒事だけはやめてくれよ。





 B地区は工場と運動グラウンドに体育館、ジムにプールも併設されている。

 隣のC地区はショッピングモールに夜のお店。ありとあらゆる娯楽施設が揃っている。





 湘南聖童高校

 一つの教室に生徒が集まる。


 いつもの昼休み、突然昴(すばる)先輩と(たゆ)先輩が教室に入ってきた。


「お前たちを集めたのは他でもねぇ、社会見学に来るかどうかを聞きに来た」

 どういう風向きでそうなったのか皆目見当もつかない。

 一体全体何をするのか。


「今回やるのは吸血鬼の見極めだ。

 簡単に言うと駆除するか見逃すかだ。社会には少なからず悪も必要なんだ。

 世の中、善と悪バランスよく保たれてるおかげで成り立ってるっていうのも事実。

 上に行けば行くほどそれは顕著に現れる。今のうちに知っておいた方がいいってことだ」

(((ゴクリ…)))



「行くか?行かないか?この仕事は俺に一任されてる。責任も全て俺がとる。

 こんな機会は滅多に無いと思え。いつも突然その時はやってくるんだ。

 選択しなければいけない時がな。そんで焦りや不安に押し潰されて正常な判断が出来なくなる」

「「「行きます!」」」


「そうか。そう言うと思ったぜ。

 存分に不安になれ!焦って混乱しろ!もがき苦しんだ先に、自分の信じる道が見えてくる」

「「「はい!」」」


「今回は自分の選択に後悔してもいい。

 だから、頼るな。相談するな。考えろ。


 そうやって己を知れ。

 根幹さえ掴めばブレることは無い。自分の正義を見つけだせ。


 聖童師は己の正義を貫き通す仕事だ」


 己の正義。僕はただ、ヒーローになりたいだけ。正義とか悪とか考えたこと無かった。

 吸血鬼は人間に害を成すから駆除する。ただそれだけ。

 それだけじゃダメなのか?


「今回は特別にお前らの後悔を俺が背負ってやる」

(ガラッ!)


 昴先輩の話が終わりかけた時、教室の扉が勢いよく開いた。


「ダメだ!生徒たちだけでそんな危険なことはさせられない!

 どうしてもと言うのなら俺がついて行く!

 文句があるなら行かせない!」


 勢いよく入ってきた熱血教師。

 有無も言わさず最後まで言い切った。


「後で言おうとしたが手間が省けた。

 アンタがいれば百人力だぜ」

「そうか、ならいい!」


 あっさりと熱血教師の同行が決まった。二人は知り合いなのか。そういえば先輩たちは誰に戦闘を教えてもらったんだろう。



 そんなわけで僕たち三人と先輩二人、熱血教師の六人で行くことになった。

 (まよい)先輩は他の仕事があって行けないらしい。

三年の町田 困と前回出た時に紹介しましたが正しくは


 町田 (まよい)です。どこかで間違えてました。


今回短くてすみません。

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