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万古闘乱〜滅ぶのは人間か吸血鬼か〜  作者: 骨皮 ガーリック
波乱万丈
40/92

四十話 ルーツ

タイトル変えました。

 今日からゴールデンウィーク。

 年末年始以来の実家で今日から二、三日いる予定。


 実家に帰るとやることがなくてずっとソファーでゴロゴロすることになる。

 実家にいた時は何をして時間を潰してたのか、めっきりわからない。



「ただいまー」

 玄関から直接リビングの扉を開けたのは、制服姿で僕と同じ金髪のセミロング、そして大人ぶってウェーブさせてる。

 そう、三つ下の僕の妹だ。

 兵頭(ひょうどう) (いずる)


 中学二年で既にオシャレに気を使い始めてて今では僕の部屋は(いずる)の洋服置き場と化している。あと買ったけど箱から出してない靴もいっぱいある。



「あれ、お兄ちゃん帰ってたんだ。暇人じゃん」

 久々の再会だっていうのに最初から失礼だな。

「暇人じゃないし。部活やってるから」

「えっ!?あのお兄ちゃんが部活を!!」

 そんなに驚くことか?まあ、今まで部活に入ったことなかったけども。

 ていうか実際部活ってよりかはバイトに近いかな。ちゃんとした仕事だけど。


「運動部?」

「まあ、そんな感じ」

 格闘技の方が近いかな。



「あははっいひひっ」

 何故か(いずる)が大爆笑する。



「お兄ちゃん昔から運動神経は良かったもんね。

 小学生の時から去年の夏休みまでずっと庭で遊んでたから。

 一人野球、一人サッカー、一人バスケ、一人卓球、一人スカッシュ、一人パターゴルフ。

 お兄ちゃんくらい運動できるのクラスの男子で見たことないもんね。

 なんで部活入らなかったの?」

 家の庭には大抵の物が揃ってる。そして僕は放課後はいつも庭で遊んでた。


「それはずばり単純明快。人間が嫌いだから」


「そっかぁ。そういえば、あの時はさすがの私もお兄ちゃんの事を心配したよ」

 今にして思えばあの時はまだ子供だった。



 事件は中学二年。

 クラス内でいじめが発生した。犯人はみんなわかってる。


 魔が差して僕はいじめっ子にやめるように言った。別に正義感からじゃない。

 そしたら次の日から僕が対象になった。


 帰りの会でみんなの前で先生にいじめられてる事を言ってみた。

 けれどもそれを先生は無視した。

 別に先生には期待してない。ずっと見て見ぬふりだったから。


 でも今回の事で先生は目を逸らせなくなった。

 僕は言うよ。何回でも。

 先生は日に日にやつれていったような気がする。

 いじめに関わるのがめんどくさい先生に僕はしっかり関わっていく。


 僕はきっと先生のことが嫌いだったんだと思う。見て見ぬふりだけならなんとも思わなかったけど、ついにはいじめる側についた。


 トイレの個室で用を足してたら上から水をかけられた。

 そのまま教室に戻って帰りの会を受けたら先生に怒られた。

 一人残って濡れた教室の床を掃除。


 先生という立場を利用して僕に嫌がらせをしてきた。

 先生は僕を否定した。だから僕も先生を全力で否定する。



 そんな時にいじめっ子立ちから屋上に呼び出された。


 屋上からの景色を堪能してたら間違えて足を滑らせて屋上から駐車場のコンクリートにズバンと落ちた。

 特に何事もなく地面に衝突した、


 落ちたのを見たいじめっ子たち。

 そして車を出そうとしていた先生の目の前に落ちた。


 その時にうっすら見えたのがウーパールーパー。しばらくしたら痛みが引いたから先生に会釈してそのまま家に帰った。


 母さんたちには絵の具って嘘をついた。(いずる)はめちゃくちゃ驚いてたけど。

 次の日学校で噂が流れてた。

 駐車場に大量の血がついていたと。


 当然大事になって結局母さんたちにも知られた。その流れでいじめの事がバレた。


 その日からいじめっ子たちは学校に来なくなった。そしてしばらくしたら転校してた。

 特になんとも思わなかった。


 その年度の終わりに先生が他の学校に異動することになった。

 特になんとも思わなかった。


 元々人との関わりが苦手だったけど、この事件をきっかけに人間を嫌いになった。

 特に立場を利用して弱い者を虐げる人間。


 とまあ、そんなことがあった。




「で、友達出来たっ!?」

「友達っていうか、相棒?の方が近いかな」

「おー!あのお兄ちゃんに友達ができるなんて…。一人、毎日庭で遊んでたお兄ちゃんに友達が……うれしいよ」


「それがさぁ、新しい学校生活で生まれて初めて嫉妬したんだよ」


「えっ!人に全く興味無いお兄ちゃんが!?

 感情に目覚めたんだ!ちゃんと人間だったんだ!お兄ちゃん」


「もうとびっきり凄くてさ。僕より後に始めたのにあっという間に抜かれたというか最初っから抜かれてて。あの時は悔しかったな」

「へ〜」

「でもその後すぐに新しい力に目覚めて距離を縮めたんだ」

「お〜」

「そして今は━━━」

「もうその話いいや。長いよ」

「そ、そうか」

 あんなに食いついてたのに飽きるのが早いな。

 いつの間にかキッチンの方に行ってるし。


 ショッピングのコーナーが流れる。


 チャンネルを取ろうとテーブルに手を伸ばすけどギリギリ届かない。

(くぅ、(いずる)がいなければひょいっと触腕出して取っちゃうのに。出来れば立ちたくない)

 実家にいると何故か自分に甘くなる。


(いずる)ぅ。チャンネル取って〜」

「お兄ちゃん怠惰だねぇ」

 チャンネルを取って持ってきてくれた。


「ありがと。

 って、そんな難しい言葉覚えたんだ。最近知ったのか。最近知って使いたくなったのか!」

「そうだけど?さすがのお兄ちゃんでも知ってたか」

 愚問だな。

「そりゃあもちろん

中学の時に覚えたさ。七つの大罪とか天使、堕天使、神は中学生の必修科目だから」

 当然僕は中学の時に履修済みだ。

「なにそれ」


 (いずる)もそんな時期か。多感な時期だからな。




 チャンネルを変えてると大空を飛ぶハヤブサが特集されてた。

「あ〜。いいなあ鳥は。

 空をぷかぷか浮いて移動できるのいいなぁ。かっこいいな。

 俺も大空を羽ばたきたい」

「人間には出来ないよね。だからこそ私も憧れるなぁ」

 キッチンでお茶を飲みながら(いずる)が何の気なしに答えた。

 そうだ。持っていないからこそ欲しくなる。



(バサッ!!)

「うおっ!」

「ん?」

 背中から突然、一対の大きな鳥の羽が生えて体が持ち上がる。

 (いずる)に見られる前にあわててにしまう。

(あっぶねぇ!)



「どうかした?」

 なんとか見られる前にしまえた。

「な、なんでもない。お茶美味しい?」

「何?いきなり。いつも飲んでるやつと一緒だけど」

「そ、そっか。それなら良かった。あはは」

「なに、もしかしてなんか入れた?」

「いや?ほんとになんでもないから」

 バレたらヤバいぞ。こんなの人間じゃない。



 しかし、僕は手に入れた。

 大地や大海原を見下ろし、天に背を預けることができる偉大なる翼を。


 テレビの画面に映るハヤブサを自分に置き換える。


 早く空を掴みたい。胸が踊る。





少し遡って。


「で、あいつら何者だ?」

 三人と合流した天道は状況を整理する。


「もしかしたら大罪。それくらい強かったんす」

「ねっ。私たち三人をまとめて一蹴するくらいだもんね。大罪じゃなかったら逆に困る」

「あれで大罪の手下なんて言われたら私たちじゃ到底太刀打ち出来ないですよ」

 三人の答えは一致していた。


「え、まさかぁ、まさか?」

「そのまさかだと思うんすよ。そうであって欲しい」

「リーダーは感じなかったですか?」

 天道の額から汗が吹き出る。


 もし大罪だった場合、殺してしまったため新たな大罪が誕生する。

 また同じような力を持った相手と戦わなくてはならない。

 もしくはさらに強いか。現状、それすらも分からない。






 ということでやって来ました万寿(まんじゅ)監獄(かんごく)


「あれっ、ちーちゃん久しぶり」

 万寿監獄で天道の前に現れたのは道楽(どうらく)

 道楽(どうらく) 千尋(ちひろ)の千尋から取ってちーちゃん。


「いい加減それやめろよ。いや、もう慣れたんだけどさ」

「癖なんで無理です」

 ため息混じりに返す道楽。今まで何回も言ってきたであろう文句にはどうにもならない感が出てる。

 それに対して天道も諦めてくださいと言わんばかりにキッパリと断る。



「にしても、なんで私にはその口調なんですか。戦闘モード」

「別にこれ戦闘モードじゃねぇよ。元々こっちが素なんだから仕方ねえだろ?」

「私に対してだけじゃないですか」

「お前が俺をからかうからだろ」

「なんですか?それ。私のせいみたいじゃないですか」

「実際お前のせいだからな」

 楽しそうにくすくすと笑う天道は女性らしい顔になる。

 心なしか道楽の顔つきも若干幼くなったような気がする。



「お前の方こそ俺にだけなんでちょっかいかけてくんだよ」

「ちーちゃんに会うとちょっかいかけたくなるんです。昔から」

「それは俺のこと舐めてるってことか?」

「そうとも言いますかね?へへへっ。

 先輩と後輩の仲じゃないですかっ」

 相変わらずくすくす笑う天道。

 道楽も諦めて肩を落とし、ため息をつく。



「で、なんでここに来たんだ?」

「ちーちゃんの方こそなんでここに来たんですか?」

「事情聴取だよ。強欲の」

「へー。ふーん。美人で可愛いですもんね」


「なっ!?そ、そんなんじゃねぇよ。それよりお前はなんで来たんだよ」

「露骨に話を逸らしましたね。怪しい。

 大事な事を確認しに来たんです。美人で可愛い強欲さんに」

「ほう?」

 その一言で重要さを感じ取ったのか、一瞬で二人の表情が切り替わる。

 さっきまでのおちゃらけた雰囲気はもう無い。普段の引き締まった顔に戻る。





 七つの大罪 強欲。法麗院(ほうれいいん)の部屋にたどり着く。


「なんじゃ。また来たのか…って今回は彼女同伴か」

「「か、彼女じゃっ!!」」

 法麗院の言葉に二人同時に素早く言葉に詰まりながら言い返す。


「ここは退屈じゃから少しからかっただけじゃよ。冗談じゃ」

「「冗談…」」

 胸を撫で下ろす二人。


「で、余になんの用じゃ?」

「俺は後でいい」

「それじゃあ私から」

 それから先程戦った男の特徴を話していく。



「ふむ。なるほどのぅ。

 余も全員を知っておるわけじゃないがそいつは知っておる。正しく余と同じく七つの大罪。

 喧嘩大好き憤怒の厳目じゃな。

 あいつ昔から暴れてたから容姿も名前も広まっておる。少し生きた吸血鬼なら大抵は知っておるはずじゃ、


 そうか。あやつがやられたか」

 淡々と語っていく法麗院。

 二人は静かに聞いている。


「で、殺してしまったと。それはもったいないのぅ」


「助かった、情報感謝する。

 それじゃあ私はこれで先に失礼する」


 聞きたいことを聞いてさっさと帰る天道。



 道すがら。

「やっばぁ。大罪殺しちゃったよ。

 でもあの童質はずるいでしょ。勝利条件が殺す事なんだから捕獲とか無理だし。


 まあ、いっか。

 もう一体、強いヤツと戦えるって事で」


 どうやら厳目との戦闘は楽しかったようだ。

最初の五話を使って描いた前日譚を短編として移しました。

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