二十一話 春が来た
中村 弛
青髪イケメン女。180 詳しくは十一話後半
山本 昴
黒髪リーゼント学ラン。180 十一話後半
町田 困
茶ボブぐるぐる眼鏡巨乳。150 十二話前半
覚えてないと思うので雰囲気を。
後日、万寿監獄というところに大罪の法麗院とそばにいた番丈が収監されたらしい。
なんでも富士の樹海に大罪を閉じ込めるために造られた監獄なんだとか。
そこでは結界が張られてて許可されなければ聖気が扱えなくなるらしい。なんでも有名な人が結界を張ってるとか。らしいらしいが続くけどよく理解してない。
去年、ちょうど一年くらい前脱獄してたらしいけどね。
法麗院の傀儡になってた十一人は親族を探して見つかり次第順次引き渡してるみたい。
それでも大昔の人で親族がいない人はひっそりと燃やすことになってる。
それから今日は先輩たちの狩りについて行くことになってる。これが一年で最後の授業って言ってた。
どんな能力でどんな戦い方をするのか楽しみだ。道楽さんの戦いを見てから体がうずうずしてる。
というわけで郊外の閑散とした廃墟通りに来ている。
ここにいる吸血鬼が人を襲っているということで依頼が来た。
歩きながら先輩たちの紹介が始まる。
「俺の童質は『強制接続無料WiFi』
テレパシー能力みたいなもんだ。頭ん中で会話出来る」
「すごいネーミングセンスですね」
「これは勝手に中村につけられたんだよ。うぜえ能力だなぁ。って言われながら。
でも俺は意外と気に入ってんだこの名前」
コンビニのWiFiのことかな。勝手に接続しちゃって逆に遅くなるんだよね。それでWiFi切ると、切ったこと忘れて家でしばらくWiFi無い状態で色々やって後悔するんだ。
あれをやったのは一回だけじゃない。
「あ?それでもマイルドにしたんだ。
だって記憶も勝手に見られるんだぜ?そんなのウイルスだろ」
酷い言い草だが、確かにそれは恐ろしい。あんなことやそんなことも昴先輩には筒抜けになっちゃうってことだ。
「てことは俺が今何考えてるか分かります?」
弾間がそんなことを聞くと。
「ああ?そういや今初めて目が合ったな。ずっと前髪で隠れてたし今までずっと目逸らされてたからだめだったが今条件を満たしちまった」
「ぎゃっ!?」
「分かるぜ。中村のケツ見て興奮してんだろ」
「ちょっ!!まっ!なななな!言わないで下さいよぉ!ぜ、全然そんなつもりないですよ!」
「見たけりゃ見ろよ。触ったら殺すけどな」
「ひぃぃぃ!ありがとうございます」
弛先輩の男気はすごいな。
「ぎゃははは!いい度胸してんじゃねぇか。
喋んねぇからわかんなかったが頭ん中はうるせぇな。ぎゃはは!」
「俺、内弁慶なので…」
家ではというか男だけだと大きくなってる気がするな。男弁慶かな。
「私の童質は『触らぬ雷に祟りなし』だ。
どうだ?かなり自信作なんだが」
「いや、ちょっと強引すぎませんか?」
「そうか?まあいいんだけど、雷を操る能力だ」
「やっぱりあの時の轟音と閃光は雷だったんですね。それにしてもとんでもない威力ですよね」
「まあな、雷ってのはそういうもんだろ。自然の力を甘く見られちゃ困る」
「それにしてもベレー帽似合ってますね」
「ああ、戦闘装備だ」
青い髪の上に白のベレー帽が乗ってる。それによってかっこいい度がさらに上がってる。主観だがおそらくこの中で一番のイケメンだ。
隣にいるのが女全開の困先輩だからかな、余計そう感じる。
「それじゃあ最後はあたしだね。
えーっとね、あたしは石化の童眼を持ってて。
それと童質は『不乱心操』。相手の心を操る」
「「怖っ!」」
「大丈夫だよ。味方の心はあたしが守るからね。なんてねっ!」
なんだその笑顔!僕の心は癒された!
はっ!これが不乱心操の力!?恐ろしい。
弾間は大丈夫か!
あ、さっきまで全開だった不純な心が浄化されてる。まあ、これはこれでいいのか。
そうして始まった三人の狩りはあっぱれと言う他なかった。
十体の吸血鬼をあっという間に狩ってしまった。弛先輩が雷と共に走りながら狩りまくり、死角は昴先輩がカバーして外から冷静な状況判断をテレパシーで伝える。
戦闘中に吸血鬼の体が固まってるのは困先輩なのかな。放心状態の吸血鬼を弛先輩が狩る。
昴先輩は終始後方で腕を組んでた。
「すごいな」
「これは強すぎないか?まだまだ追いつけそうにないな」
「私、弛先輩みたいになりたい」
戦闘を見た僕たちはそれぞれ感想をこぼす。
「どうだった?」
先輩たちが戻ってきて帰り支度をする。
「もうすごかったです。とにかくすごかった」
「こ、今度中村先輩と戦ってみたいんですけどいいですか?ダメならいいんですけど」
「いいじゃん。しごいてやるから覚悟しとけよ。私手加減出来ないからな」
「ありがとうございます」
「お?いいねぇ、いいねぇ、お二人さん。熱いねぇ」
「茶化すなよ。最近先生しか相手がいなかったからちょうどいいんだよ。色んなタイプと戦っておいた方がいいからな」
「さすが。戦いの事になると真剣だ」
困先輩は意外と場を盛り上げるたいぷなのか?
と、そんなこともありながら一年最後の授業が終わった。
明日から二週間の春休みが始まる。
本日、春休み一日目。
弾間 漠、人生初のデートであります!
お相手はもちろん先日のドラマさながらの誘拐からの救出を行ったあの有名女優、武田 絵麻さん。
ちょっとお高い料亭を予約しておいた。あっちからしたらお高くないかもしれないけども。
そして今、俺はその料亭で待っている。
料亭の名前は「逆月」。結構有名人とか来るらしい。ちょっと調べたらすぐに出てきた。テレビの取材も来たことあるらしいから場所選びは間違い無いはず。
ドキドキと胸から飛び出た心臓を手で無理やり押さえつける。下手すると吐き出しそうになる程に存在感がでかい。
吸血鬼狩りで結構貯金も出来たおかげでお金には余裕がある。
個室だから今はまだくつろげる。はずなのだが足が崩れない。唾を飲み込んでも次から次へと押し寄せてくる。唾液で溺れてしまいそうだ。
と、口の中で激しい攻防戦を繰り広げていると障子に人影が浮かんだ。
なんて美しい影なんだ。影だけでその美しさが溢れるほどに伝わってくる。
お店の人によって障子が開けられると目に飛び込んできたのは絶世の美女。思わず目の焦点がブレる。眩しすぎる太陽を見た時と同じ感覚だ。しばらく黒点無くならない。
気づいたら武田 絵麻さんは目の前まで来ていた。その隣にはマネージャーさんも。
二対一と不利な状況だが乗り切ってみせようこのアウェイな空間を!
「今日はよろしくお願いします。それとこの間は危険な所を助けてもらい本当に感謝してます。おかげで今も支障なく仕事が出来てます」
「いえいえ。こちらこそ今日はよろしくお願いします。えと、マネージャーさんもよろしくお願いします」
「私は竹内と申します。私からも言わせてください。
あの時は本当にありがとうございました。今があるのは弾間さんのおかげです」
「そ、そんな大袈裟な。轢いてきた相手にちょっと一言言ってやろうと思ったら出くわしただけですので」
「いえ、あの日から弾間さんを忘れたことはありません」
「そ、そそ、そうですか」
「「はい」」
二人揃ってすごい真っ直ぐに見てくる。
今日は気合い入れて前髪上げてきたから余計恥ずかしい。家以外で前髪上げるのなんていつ以来だったかな。なんて現実逃避をしてるけどこれ絶対好感度高いでしょ。申し訳ないけどこれ勝ち戦じゃない?経験無いからわかんないけど。
武田 絵麻さんは肩まで伸びる真っ直ぐな黒髪で大きな目と小さな唇。160くらいで小柄ながら女性らしい体をしている。正直言って大好きです。
マネージャーの竹内さんは黒髪ポニーテールでキリッとした目とぷっくりとした唇。160後半くらいでスタイルの良さが目立つ。そしてどこか真面目さを感じる。今もビシッとしてる。
そんな美女二人と同じ空間に俺はいる。人生最大の瞬間だ。おそらくこれ以上のビッグウェーブはもう来ないだろう。ならば当然乗るしかない。このビッグウェーブに!
武田絵麻さんはこの前高校を卒業したばかりなんだと。四月から大学生で近くの大学に行くらしい。今まで大学とか興味なかったから名前を聞いても分からない。
くそう!なんで俺は大学オタクじゃないんだ!
それとなく話を聞いてると今度は俺の話を聞きたいと言われた。
もちろん本当の事は言えないからほとんどぼかして伝える。
一年生ながら空手部の主将を任されてる期待の新星。まあ、格闘技はかすってると思う。
部活漬けの毎日でたまの休みは友達と出かける。
なんとも青春を謳歌してるな。この男は。
料理も進んで会話も弾む。嘘のように弾んで俺は今、告白をした。
なんで!?全然記憶が無い!そんな流れあった!?
「あの日あの場所で会ったのは運命だと思いました。あの日から俺の心はあなたに囚われてしまいました。
俺は一生、あなたに囚われていたい!」
緊張からか自分でも何を言ってるのかよくわかってない。ただ、これは俺にとっての告白なのは間違いない。
そして絵麻さんに手をのばす。
「私もあの日運命を感じました。絶望から救ってくれた。もう今までの自分では居られないと覚悟した。そんな時にあなたが私を救ってくれました。その後も優しく声を掛けてくれて竹内さんが来るまで見守ってくれた。
私の方こそあなたに心を奪われた挙句、包容力という名の檻に囚われてしまいました。
私はもう、あなたに執心刑ですよ」
重い愛と重い愛がぶつかることで二人は想い合う。
それを外から見守る竹内の空いた口はしばらく閉じない。
『拝啓 親父へ。
すっごい可愛い彼女が出来ました。
漠より』




