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双方、ストーカー

シェルド公爵令息。

あなたのことが好きです。

どんな人にも積極的に挨拶するところも、将来の夢のために勉強をたくさん頑張っているところも、よく飲むのがキャラメルラテなところも、後ろ姿までカッコよくて。

そう今、目の前(前方20m先)にいるあなたの後ろ姿にドキドキしすぎて、写真を撮る手が止まりません。

「…………ああ。カッコいい。本当にカッコいい」

真っ暗な夜道であなただけがキラキラと輝いています。


へ?私がストーカー?

もう。なにを言ってるんですか。

私はただ見守っているだけですよ。


シェルドさんのような国宝級イケメンが護衛もつけずに歩くなんて、ダイヤモンドをガラスケースに入れず展示するような物です。

そんな危険な行為、警察が許しても私が許しません。

あなたが出歩く時は遠くから見守り。

いざと言うときは差し違えてでも守ってみせる。


心の底から愛しています。シェルドさん。




ミア伯爵令嬢。君のことが好きです。

寝言で俺の名前をたくさん呼ぶところも。

毎朝俺に挨拶する練習をたくさんしているのに結局緊張してできないところも。

毎日欠かさず俺とデートしてくれるところも

(距離はいつも20mくらい離れてるけど。照れてるのかな?

俺は手を繋いで歩きたいけどミアのペースでいいよ)


後方20mから感じる君の気配が可愛すぎて、今すぐ婚姻届を提出しに行きたいよ。


へ?俺がストーカー?

もう。なにを言ってるんだ。

そんなの当たり前だろう。


家族構成。君の通っていた学校の教師と生徒のプロフィール。飼っていたペットの名前。俺を隠し撮りした写真を自宅の壁一面に貼っていること。俺に渡せなかったラブレターが昨日1000通を超えたことも知っている。

盗撮盗聴。位置情報の把握。携帯機器のモニタリング。

ストーカーっぽいことは大体やってる。



『…………ああ。カッコいい。本当にカッコいい』

ああ。君の可愛い声が魔道具から聞こえてくる。 


でもなにか問題ある?

俺たち両思いだし。そのうち結婚して末長く幸せに暮らすんだ。

向こうだって俺のストーカーだし。

似た者カップルってすごく素敵だよね。


それに銀河系で一番可愛い、ミアがストーカーなしで一人暮らしなんて、飢えたライオンと血まみれの人間を同じ檻にいれてるようなものだよ。

そんな危険な行為、警察が許さなくても俺がストーカーして守ってみせる。


君の生活音は一秒も余さずに聴いていたい。

君に害をなす人間がいたら、地獄以上の苦しみを与えて精神を壊してやる。


何百回生まれ変わっても、ミアを愛すからね。




「おい。後ろ。また後つけてるぞ」

「分かってるよ。お義兄様」

「誰がお義兄様だ!ミアに告白すら出来てないくせに」

「声でかい。ミアに聞こえたら。殺すよ」

「……お前が言うと冗談に聞こえないんだよ」

こいつはミアの実兄のライアン。


「お前らいい加減、お互いをストーキングするの辞めろよ。実の妹と友達がそんな訳の分からない関係な俺の気持ち考えたことあるか?」

「別にライアンの気持ちなんてどうでもいいし」

「おい。……いい加減にしないとお前がミアを盗聴したりしてることミアに言うぞ」

「好きにしたら?ミアがライアンの言うこと信じるとは思えないけど」

「ク、クソッ!その内昔みたいに仲良し兄妹になって、お前への恋心なんて粉々にしてやるからな!」

「せいぜい頑張って」


「クソッ!俺お前のそういうとこ嫌い!」

「俺はライアンのそういうところが好きだけど」

「え……。ま、まぁ俺も嫌いって言うのは嘘で……。好きじゃなかったら友達なんてしてないっていうか」

「少し褒められただけで気を許しちゃう。単純なところ大好き」

「は!?おま……ふざけんな!!やっぱ嫌いだ!大嫌いだ!」

「そういう幼児みたいなところも大好き」

「……もう一生、口利かない」

「そうか。今までありがとうな」

「ちょっとは粘れよ!!」

「お前と友達でいれて楽しかったよ。俺とミアの結婚式には兄として参列よろしく」

「友達辞めねーし!!結婚もさせねぇ!!」



シェルドさんとクソ兄が、仲良さそうに会話している。

なに話してるんだろう。死ぬ程羨ましい。

……盗聴でも始めようかな。

いやいや。ダメ!盗聴はさすがに人として最低すぎる。

盗撮で我慢しないと。




こんな三人の、ドタバタラブコメディです。



「ライアン。今週の土曜日暇?暇ならこれ観に行かない?」

シェルドは演劇のフライヤーをライアンに見せた。

「いいけどロマンス物じゃねぇか。俺は好きだけどお前の好みじゃねぇだろ」

「うん。ミアが観たいって言ってたからさ」

「なんで兄の俺も知らない情報を当たり前のように知ってるんだよ。……ミアを誘えばいいだろ」

「誘うまでもなく俺が演劇観に行くならミアも隠れてついてくるに決まってるだろ。なに言ってるの?」

「いや。普通にこっちがなに言ってるの?だけど。そんなまどろっこしいことしなくても普通に本人誘えよ」

「俺たちには俺たちのペースがあるんだ。あまり急かさないでくれよ」

「両片思いの男女がストーキングしあうのはペースとか言う問題じゃないだろ。行くにしても一人で行けよ。俺を巻き込むな」

「俺はミアとライアンの三人で演劇を観たいんだよ。俺が一番好きなのはミアだけどライアンのことも好きだからさ」

「え……。ふ、ふん。そこまで言うなら、行ってやるしかないな」


俺とミアがストーキングしあっているのを目の当たりにして、なんとも言えない顔をするライアンを見るの面白いんだよな。

これを言うとまた拗ねるだろうから黙っておこう。



土曜日

「おはよう。待たせたか?」

「おはよう。まだ時間じゃないし。ミアの足音聞いて待ってたから大丈夫だよ」

「それは全然大丈夫じゃないんだが。……お前の言った通りミアの奴ついてきてるよ」

「だろうね。いやー。楽しみだなぁ。演劇デート」

「……デートではなくないか?」

「細かいことはいいから。さっさと行くよ」

「細かくねぇだろ」


「はい。これチケット」

「ええ!?最前列じゃねぇか!意外だな。役者と目があったりするの嫌いそうなのに。まぁ俺は前の方が嬉しいけど」

「そうだね。後ろの方が好みだよ」

「じゃあ、なんでだよ?」

「俺が前の方にいる方がミアがストーキングしやすいだろう?

後ろの方に座るとミアが席選びに困るだろうから」

「なにそのストーカーならではの気遣い……。

ていうかミア。俺達の席分からなくて困ってるんじゃ」

「ああ。大丈夫。双眼鏡でちゃんと確認してるみたいだから」

「ちゃんとの意味分かってる?」



シェルドさん達は最前列に座るみたい。

シェルドさんより前の座席に座ったら、バレる確率も格段に上がるしすごく助かる。


それにしてもクソ兄が羨ましい……。

陽向さんの隣の座席で演劇を観れるなんて。

すごく悲惨な前世を送ったから、神様が同情してるんだろうな。

私もいつかシェルドさんの隣で観劇を……。


いや。無理だろな……。

私みたいなのはシェルドさんの彼女どころか。友人にもなれない。

友達の妹ポジションにいれるだけ。悔しいけどクソ兄に感謝しないといけないかもしれない。

本当に悔しいけど。


「演劇までまだ時間あるし、近くのカフェに寄ってもいいか?喉乾いた」

「いいよ」

近くのカフェに入る三人。

「飲み物は?」

「オレンジジュース」

「……甘い物好きだっけ?いや。悪い訳じゃないんだけど。普段はコーヒーだろ?」

「別に好きな訳じゃないけど。乃愛は好きでしょ。俺と同じの頼むだろうから」

「……そこまでして合わせなくてもいいだろ。本当に嫌ならミアだって別の物頼むだろうし」

「俺はミア以外に好きなものなんてないから。別にいいんだよ」

「……そんなに好きならさっさと告白しろよ。お互いをストーキングなんてせず普通に付き合えばいいだろ。お前もストーキングさえ辞めたら良いやつだし」

「……今付き合ってもうまくいかないよ」

「は?なんでだよ」

「なんでも。ほら店員さん呼ぶよ」



シェルドの予想通り、オレンジジュースを頼むミア。

飲み終わるとすぐにカフェを出て行った。


「あれ。ミアのやついつの間にかいなくなってるぞ」

「ああ。3分26秒前に出て行ったよ」

「気持ち悪ッ!!なんでそんな正確に覚えてんだよ!!」

「俺にミアに関することで知らない事なんてあるはずないだろ」

「なんでこんなすぐに出て行ったんだろうな?」

「劇場内で俺たちと鉢合わせる可能性を少しでも下げたいんだろう。劇場内の通路はあまり広くないし、思うように身動きが取れないことも少なくないからね」

「な、なるほど」

「それよりライアン。一人でいる妹が居なくなったことに気づかないなんて兄失格なんじゃないの?」

「う、うぐっ!そ、それは!お前との会話が楽しかったから!」

「まあ頼りないライアンの分も俺が常に見守ってるから問題ないけどね」

く、悔しい!!

でも今回に関しては反論しづらい!!



ニ十分程経ってからシェルドとライアンも入場する。

「やばい。めっちゃ楽しみだわ」

「男でこんな王道ロマンス作品好きなのも珍しいよね。別に悪いことではないけど」

「良いだろ別に。好きな物は好きなんだ」

「特等席で俺とミアのロマンスを毎日見てるのに。よく他のロマンスまで観ようと思えるよね」

「……お前たちがドロドロしすぎてるから。フィクションに癒しを求めてるのかもな」

「ドロドロってどこが?俺たち程ピュアに愛し合ってる男女も珍しいと思うけど」

「……タチの悪い冗談はやめろ」

「冗談じゃないけど」

「なおさらタチが悪い」

「あ、始まるよ」

「ん」



演劇終了後

出口に向かう三人。


「ぐす……うぅ……」

「なんであんな型にハマったロマンスで号泣できるの?」

「お、お前こそ。なんで目が潤んですらいないんだよ。めちゃくちゃ感動しただろうが」

「しなかったけど」

「血も涙もないんだな」

「あるに決まってるでしょ。失礼だね」

「いや。絶対にない!お前みたいな血も涙もないストーカーに妹はやらん!!」

「そんなに拗ねないでよ」

「拗ねてない!俺は本気だ!」

「はいはい。そうですか」

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