#9 失格
ガウルは顔色を変えて審査員の胸ぐらを掴んだ。
「ま、待ってくれよ⁉︎ 失格だって⁉︎ こんなしょーもない審査で、エルメスが精霊姫にふさわしくないって決めんのかよ! あんまりだぜ⁉︎」
「馬鹿が」
審査員はガウルを突き放し、
「精霊姫は大陸を治める者だ。当然強くなくてはならない。この程度の岩も動かせないで人々を護れるというのか?」
「そ、そのための支持者だろうが! エルメスができないことはオレが代わりにするんだよ! こんなんで失格なんてやめてくれ!」
食い下がるガウルに、衛兵がため息をついた。
「はぁ……。いいか、俺は実技審査失格と言ったんだ。まだ大会に出場できないとは言っていない」
「「え?」」
ガウルとエルメスの素っ頓狂な声が重なる。
「次に容姿審査だ。審査員十人、札を上げてくれ」
すると審査員と思しき十人が出てきて、手に持っていた札を一斉に掲げた。札には合格の二文字が書かれており、全員がそれであった。
つまり――エルメスの容姿を美しい、または可愛いと認めたのだ。
「ほう。満点とは珍しいな。よし、エルメス。それから支持者のガウル。君たちに精霊姫決定戦への出場権利を与えよう」
「い、いいのか⁉︎」
「ああ。実技は失格だが、容姿はずば抜けていい。精霊力は美しさに比例するゆえ、今はその実力でも段々と力をつけていくだろう」
「あ、ありがとうございます……!」
エルメスがにぱぁっと笑顔を咲かせると、審査員は顔を赤らめて狼狽えた。
「せ、精霊術に関する本なら本屋に行けば売ってある! 少し勉強すれば、君は強くなれるだろう! 頑張ってくれたまえ!」
足早に去っていく彼もまた、エルメスの美貌に惚れ込んだようである。
「やったなエルメス!」
「うん。ここまで来て不合格だったらどうしようって不安だったから……ほんと良かったよ」
「まあ不合格になってたら脅してでも合格にさせようって思ってたけどな」
「あはは……」
ガウルなら本当にやりかねないと思い、エルメスは心底ホッとした。