#7 首都
ガウルとエルメスは首都に続いているという一本道まで商人に案内された。取引先の村に向かう彼とはここでお別れ。去り際に手紙を渡される。
「命を救われ、お二人の事情を聞いた身です。力になれることはしたいと思いまして、よろしければ首都でうちの娘が経営する宿にお泊りくださいませ。破格の料金にするようここに書いておりますので」
「いいんですか? ありがとうございます!」
「これで貴様の罪がチャラになったとは思うなよ」
対照的な反応をする二人は首都を目指して再び馬車を走らせた。
「へー、宿屋兼酒場もやってるみたいだよ。三食お風呂付きだってさ」
「ほう。あの変態じじいも役に立つじゃないか」
そんなこんなで――
二日後、到着する。
大きな外壁に囲まれた首都アルカディア。
精霊姫と支持者が治める都。外壁よりも背の高い精霊樹は見上げると首が痛くなるほどだ。
入り口の門で入場料を払い、馬車ごと中に入れる。
エルメスが衛兵に訊いた。
「すみませーん。この馬車を売りたいんですけど、どこに行ったらいいでしょうか?」
ガウルと二人で事前に決めていたことだ。
お金がほとんどないから、首都に着いたらまず馬車を売り払って資金にしようと。
青年の衛兵は、
「それならここで手配しましょう。首都に着いてさっそく馬車を手放す人は多いですから慣れたもんです」
「ありがとうございます!」
「と、ところで……お嬢さん、お綺麗ですね。今晩お時間あったりしますか? 僕が首都をご案内……な、何でもないです! すみませんでしたっ!」
「が、ガウル……顔が怖いって。ボクなら大丈夫だから。落ち着いて?」
「ふん」
エルメスにまとわりつく害虫を顔つきだけで排除したガウル。
馬車売却の手続きを終え、まとめた荷物をリュックに背負い、いよいよ二人は人通りの多い首都の中を歩く。
「えーっと。とりあえず宿屋を探そっか。名前が向日葵の宿屋ってとこみたいだよ」
「……おい、エルメス。あれを見ろ」
「どうしたの?」
立ち止まったガウルの視線を追い、エルメスもまた顔をこわばらせる。
「え、今日まで?」
広場で大きな旗を掲げた衛兵。それには『精霊姫決定戦、出場者本日締め切り!』と書かれてあった。
「宿探しは後でだ。まずはあそこに行くぞ」
「うん」