#6 情報
三人は焚き火にかけた鍋を囲み、山菜のスープを食していた。
「おい商人。作ってくれたエルメスに感謝しながら食べろよ。ちなみにおかわりは許さん」
「もうガウルってば……。食材を提供してくれたのはこの人なんだからね」
「ふん、知るか。コイツはエルメスの裸を覗いた変態ジジイだからな。人権はない!」
「タオルを持ってきてたまたま見ちゃっただけって説明受けたでしょ? もう水に流そうよ」
「……反省しております」
謝罪する商人は冷や汗を掻いていた。性欲に負けてわざと覗いたとは口が裂けても言えない。
「許してほしいなら情報を渡してもらおうか」
とガウル。
「……何のでしょうか」
「まず首都までの道のりだな」
「それでしたら簡単です。ここから少し行くと川があります。あとはひたすら下流に向かって進むだけで二日ほどで首都に着くでしょう」
「分かった。次は精霊姫決定戦についてだ。開催はそろそろだった筈だが、何か知っているか?」
「えっと毎年春、三月の上旬までが出場者募集期間となっております。中旬から下旬にかけてがトーナメント戦ですね。もう募集は始まっていると思いますよ」
「そうか。募集が終わる前には首都に着かないとな。のんびりしてられん」
「ガウルさんは大会に出られるのですね。精霊姫決定戦には二人一組での出場にはなりますが、もう相方さんは決まっているのですか?」
精霊姫決定戦に出るペアは精霊姫を目指す女性と、その支持者と呼ばれる男の組み合わせになる。
「相方? 何を言っているんだ。オレとエルメスで出るに決まっているだろ?」
「え? いやしかし、大会には男女で出るものですよ。エルメスさんは男――な、ななな何でもございませんとも! お二人で出場なさるのですね!」
ガウルが木のサジを指でバッキリ折ると、商人は失言に気づいて高速で誤魔化しにかかった。
「と、ところでなぜエルメスさんは精霊術を使えるのでしょうか?」
「おい。その発言はエルメスを男だと揶揄してるのか?」
「そ、そそそうではなくてですね⁉︎ 純粋な疑問と言いますか、何と言いますか……」
「ガウルってば落ち着いて。商人さんにそんなつもりないから怒ったらダメだよ」
「ちっ、わーったよ」
エルメスによってガウルの憤怒は鎮まる。
「精霊術がなぜ使えるかだって? そんなのエルメスが女だからに決まっているだろ。こんなに可愛くて綺麗なんだぞ」
確かに、エルメスはそこらの女性よりも美に優れているだろう。
しかし――性別は男だ。
これは揺るぎない事実である。
なのに精霊術を使えるということは……。
「いいか? 神がエルメスを認めたんだよ。精霊術は女にしか使えない。つまりそういうことだろ?」
「エルメスさんは女性……」
「そうだ。だから今度は人類全員に認めさせる。それをオレはエルメスを精霊姫にして叶えてやりてーんだ。まあ純粋にこいつが綺麗なドレス着てみんなにチヤホヤされたいって言うから協力してやってるんだけど」
「チヤホヤって、そこまでは言ってないよぉ。盛って話すのやめてよね」
むくれるエルメス。
「えっと、物心ついた頃には使えたんです、精霊術。その時あたりからボクは自分が女だって思うようにもなってて……。変ですよね、ボク。あはは……」
困ったように笑うエルメスは、どこからどう見ても女性で、とても男性器が生えているとは思えない可愛らしさがあった。