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#4 エルメス

 自分はズレているんだ。

 物心ついた頃、エルメスはそう思った。


 性別としては男でも――


 可愛い服が着たい。

 ドレスやワンピース。

 おしゃれな柄だったら尚更嬉しい。


 心は――女の子だった。


 母親の衣装室にあったワンピースを黙って着て、化粧道具を使ったことがある。

 顔が綺麗に彩られ、鏡に映る女性っぽい姿を見た時、これが本当の自分なんだと思えた。


 だから男の子よりも女の子と遊んでいる方がホッとする。男友達は異性、女友達は同性。そういう認識。小さい頃に男の子たちと一緒のお風呂に入れられたことがあるけれど、死ぬほど恥ずかしかった。


 耐え切れずにお風呂を飛び出して、女の子たちと入りたい! と泣きながら叫んだら、男の子たちにケラケラ笑われた。

 女の子からは気持ち悪さを訴える白い目で見られ、味方はいなかった。


『エルメス。お前は男なんだ。自分の体を見たら解るだろう? 頼むから恥をかかせないでくれ』


 父親から真剣な眼で告げられた言葉。


 そうか、ボクは恥をかかせているんだ。苦しいけれど自分を変えなきゃ。

 もう女の子っぽい言動はしない。男として性別をまっとうして生きる。

 親にわがままを言って肘辺りまで伸ばしていた長髪をハサミで切り、隠れて化粧するのも辞めた。


 そうしたら――


「なんでだよ!」


 たった一人だけ、エルメスに怒ってきた。


「嫌なら嫌って言えよ! 化粧したいんだったらすればいいじゃねーか! つーか髪、勝手に切ってんじゃねーよ!」


 ガウルだった。


「お前を笑った奴ら全員ぶっとばしてやる。この村にいる女なんてエルメスの足元にも及ばねーんだよ!」


 彼だけは違った。味方だった。

 そういえば一緒にお風呂に入った時、彼だけは笑っていなかった。心配する目をしていた。


 それをきっかけに村全体でエルメスを見る目が変わった。みんなガウルに怯えて優しくなった。女として扱ってくれるようになった。


『さてとエルメス。もうこの村でお前を男だなんて言う愚か者はいなくなったぞ。他に叶えたい望みはあるか?』


『あはは……すごいねガウル、ありがとう。だけどあんまり皆んなを怖がらせないでね?』


『それはエルメスに対する態度次第だな。で、他にないのかよ』


『うーん……あるにはあるけど、ガウルはなんでそこまでボクのために頑張ってくれるの?』


『べ、べべべつにいーじゃねーか気にすんなよそんなことよ! ほらさっさと言えって!』


『う、うん、えっとね……精霊姫に、なりたいな。綺麗なドレスを着て、たくさんの人に褒められたい……かも?』


『よっしゃ任せろ! 精霊姫だな! 喜べ、今この時点でエルメスが精霊姫になることは確定した! なぜならオレは約束を破らねーからだ! 良かったな!』


『あはは……ありがとう? もし叶ったらガウルとってもかっこいいよ』


 これが数年前の出来事だった。

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