#3 覗き
とある男女の二人に命を救われた商人は荷馬車を漁っていた。
荷台は二つに区切ってあり、後部に豚、前のスペースには雑貨品や食料を置いてある。
本当は近くの村まで届けに行く予定だったが、恩返しをするためいくつか二人に譲ることにした。
荷物を木箱にまとめて、
「ほれ、食料は干し肉と山菜があるよ。男物と女物でそれぞれ服もあるから持って行くといい」
「助かる。ありがとな」
ガウルがそれを受け取って自分の馬車に向かう。
湖から少し離れたところにそれぞれ馬車を止めていた。
豚に襲われてしまったエルメスはというと、一人で水浴びをしているところだ。
水浴び……。
美少女の水浴び……。
ふいに邪な考えが浮かぶ商人。
(オイラの残り少ない人生、あんな可愛い子と出会える機会はもうないかもしれないぞ……)
汚れを知らない童顔も、抱きしめたら折れてしまいそうな肢体も、それでいて張りのあるお尻も、非常に好み過ぎて気が狂う。
見たい。
服の上からではなくて。
裸を。
ちょっとだけ。
ちょっとだけならいいよね?
「よし……」
決意した商人はタオルを手にする。
そういえば彼女はタオルを持って行っていなかったから、これを届けにきたという名目で水浴びを覗いてしまおう。
作戦は完璧だ。
ガウルの目を盗み、草むらを掻き分け湖の方へ。
「おぉ……」
いた。距離は数メートル。
湖の水をすくって肩にかけているエルメスは背中を向けていた。
濡れた長髪は右肩にかけて前に垂らしており、なまめかしいうなじと背筋の美しいラインが見える。しゃぶりつきたくなるプリっとした美尻からは水が滑り落ちる。
「ふ、振り向け……っ。正面から見たい……っ」
目を充血させ裸のエルメスを凝視する。
その願いが叶ったのか――長髪に含んだ水分を握って絞ったエルメスが、体を反転して向かってきた。
「なっ……」
息を呑む商人。
美しい。
胸はないが、お腹はきゅっとクビレ、引き締まったそそる肉体をしている。
だが。
「な、なぜだ……」
ある筈のないモノがある。
一目惚れした完璧な美少女エルメスちゃん――そう思っていたのに、とんだ勘違いをしていたようだ。
「な、ななななぜだ⁉︎ なぜ君にっ、チ◯コが生えているんだ⁉︎」
「へぇええっ⁉︎」
思わず立ち上がってソレを指差した商人。
エルメスがびっくりして飛び上がる。股部に生える小さな象のようなイチモツが可愛らしく揺れた。