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得られた報酬と、もう一つ

 キュウの姿が見えない登録所の女性は、ミバルの硬直ぶりを報酬についての緊張だと受け取ったらしい。サクサクと手続きを進めていった。


「この(たび)の討伐の報酬は、狂乱ウサギ(パニックラビット)を一体。そして転送された素材の状態がよかったため高値で買い取ることとなりましたので――合わせて小銅貨(しょうどうか)が十枚と銅貨が二枚となりました」


 通貨は主に、金貨、銀貨、銅貨の三種類が流通しており、「小」とつくものの二十枚の価値がついている。つまり小銅貨が十枚なら、銅貨一枚の半分の価値である。


 そして銅貨が五十枚で小銀貨、銀貨が五十枚で小金貨であるため、金貨や銀貨はそれぞれ価値が千倍も違うのである。


狂乱ウサギ(パニックラビット)は一体倒せば銅貨一枚だから、素材だけで銅貨と小銅貨が十枚かぁ。キレイに一刀両断したからね~』


 キュウがふむふむと(うなず)く。


(よかった……)


 ミバルはこっそり安堵(あんど)した。


(ものすごくお金を借りてるのに、これだけしか報酬がもらえないんじゃ、呆れられるんじゃないかと思った……)


 そんなミバルの思いを知ってか知らずか、キュウは言った。


『ともかく――おめでとう、ミバル! これが君がやり遂げた、初めての討伐と報酬だよ!』


 それは何の嫌みも、含む意味もない、祝福の言葉だった。


 強いモンスターを倒したわけでも、冴えた振る舞いが出来たわけでもない。



 ――剣を持ったこともないのに、モンスターと戦えると思うな! お前はこれでもやってろ!



 大きな金額を得られたわけでもない。



 ――これじゃないわよ! ちゃんと確認して買ってこいって言ったじゃないの!



 まだ、何か役に立てたわけでもない。



 ――俺がわざわざお前の練習相手になって、何か得をするのか?



 だが。


『あっちでモンスターの情報を確認しよう! ミバルは木こりだったから、動く物に技を当てるのは慣れてないっていうのはわかった。だから、もっと戦いやすい相手を探して討伐していくよ!』


「……わかった」


(もう少し頑張ってみるか……)


 ミバルはキュウからの期待に、少しだけ前向きになったのだった。


『あ! ぴったりのモンスターの目撃情報がある! 植物のモンスターだって。隣町の近くにいるらしいからさっそく行こう!』


 キュウがミバルにおすすめするのは、どうやらあまり動かないモンスターらしい。モンスターに攻撃を当てるのが苦手なミバルにはいい練習相手だろう。

 だが、そうして訪れた隣町で――


『なっ……なっ……!?』


 ――キュウは怒りに震えることとなった。


 隣町の入り口である、立派な門にかけられた布に書かれているものは、モンスターハンターを(つの)る宣伝文句だ。


「我らは強者を求めている!」

「君こそが!」

「魔王を倒す()()()()だ!」


『ふざけるな~!!!!』


 キュウの怒りの叫びは、ミバル以外の誰にも届かずに空へと消えていった……。

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