ミバルのモンスターハント生活、本格始動!
『――よし。これで一通りの装備は揃った! 買い物はここまでにして、日が暮れる前に宿屋探しするよミバル!』
「待ってくれ、あの鎧も結構かっこい――」
『あれは役に立たない物だからダメ。夜になったら宿屋が満室になっちゃうんだから時間がないよ! 行くよ!』
キュウの案内によって無事に森から出たミバルは、森とニオン国の間にあるセンドー国の町へとたどり着いていた。そしてキュウの予想通り、世間知らずを見抜かれ商人たちに言われるがままに散財しかけていた。
「この魔法武器でモンスターなんて丸焼けにしちゃえばいいんだよ! 兄ちゃん!」
「す、すごい……! 俺も魔法が使えるのか!」
『それ、手品もどきのオモチャだよ。その炎って全然熱くないでしょ?』
――といったやり取りを幾度も繰り返して、やっと。
まともな斧とまともな衣服とまともな防具と、他にも性能に嘘のない様々なアイテムを一通り購入した頃には、日がすでにオレンジ色に変わっていた。
『ミバルって、ああいう子供のオモチャとかは持ってなかったの? 聖霊協会が面倒をみてる子供達も知ってるような物なのに、初めて見たって言ってたよね』
「持っていたとしても、覚えてないな。ちょっと文字の勉強とかした以外は、切った木を売りに行くくらいでしか町に行くこともなかったから。あとはずっと山で親父と木を切ってたから、町にあるものを買うのも見るのもなかったな。親父は町が嫌いだったし」
『あんまり町に行ったことがないんだね。あとこの宿屋は、作りは派手だけど奥にはものすごい数のお酒が転がってるから、よくないと思う。違うところね』
「ここもダメなのか……」
『……ねえミバル。一番派手で大きな宿屋から順番に見て回ってること、気が付いてるからね』
こうして先輩モンスターハンターは、初な期待の新人を支えるのであった!
翌日から、いよいよミバルのモンスターハントの修行が始まった。実戦型という名目の、ぶっつけ本番の戦いが。本番に勝る経験なし、なのだ。
もちろん、ミバル一人でモンスターの群れに飛び込ませるような無茶はさせない。今のキュウは魂だけとはいえ、聖霊術士としての力は万全に発揮できるのだ。
『この草原なら敵も少ないし、見通しもいいから戦いやすいよ。今からモンスターの群れから一匹だけ誘導するから、しっかり構えてね!』
危険の少ないモンスターを選び、聖霊の力を借りて助けながら、ミバルに戦いに慣れてもらおうという作戦は――
ギッ! ギギッ!! ギッギギー!!!!
「うわあああああああ」
――ミバルとモンスターの追いかけっこが始まってから進まなくなった。
『こらーミバル逃げるなー! 狂乱ウサギは歯と蹴り以外は怖くないんだぞー!』
「だってなんだよあの気迫はああああ!! 山のウサギはあんなに怒ってないぞおおおお!!」
『落ち着いて! 君のあの技なら一撃で仕留められるから! ほらせーの! 必殺「切り倒し」!!』
切り倒しとは、ミバルが一度に広範囲の木を両断した技にキュウが着けた名前である!
「くそー! はっ!!」
その言葉に従い、真後ろのウサギ型モンスターに一撃を繰り出すミバル。
が、狂乱ウサギはひょいと跳び跳ねてミバルの切り倒しをあっさりと回避し、またミバルを追いかけ始めてしまった!
ギギッギー!!!!
「うわあああああああ」