傍から見ると危険
『やったあー!! さすがはミバル! 一撃で仕留めたね! 私の見る目に狂いはなかったぁ!!』
キュウはミバルの勝利に大喜びである。
炎とともに急成長したモンスターは、黒焦げになった上部と、蔓が生えている下部とに綺麗に切り分けられ、もう動かない。
「……今のモンスターを、本当にもう倒せたのか……? あんなに強そうな奴を、本当に俺が切れたのか?」
『そうだよ。これが君の実力なんだよ、ミバル』
ミバルの頭のすぐ上に、泳ぐようにゆらゆらと漂いながら、キュウはにっこり笑って言う。
『ミバル、君は強いよ』
目の前には、ミバルの一撃の結果がある。
ミバルを認めるキュウの言葉を、ミバルはやっとそのまま受け取った。
(俺は、強くなれないなんてことはなかったんだ……)
「……おーい、君〜!」
そのタイミングで、先にモンスターと戦っていた三人が駆け寄ってきた。
「しまった、もしかして獲物を横取りしたって怒られるのか!?」
ミバルが不安に震えると、キュウは三人に対してそっぽを向いた。
『モンスターとの戦いで勝ちを譲るとか、そんな余裕があることを言い出す奴なんてろくなもんじゃないよ! そんな苦情なら無視してやればいいん――』
「君!! 逃げろ!!」
槍を持つ男がミバルに叫んだ。
「え?」
『え?』
槍を持つ男が真っ青な顔で走ってくる。彼を先頭にして他の二人も走り寄ってきたが、その表情には困惑しか浮かんでいない。
「ちょっとどうしたの?」
魔術師の女が呼びかけると、槍を持つ男は叫んだ。
「女の姿のゴーストだ! さっきのモンスターに気を取られているうちに寄ってきたんだな! ――そこの君、君の真上にゴーストがいるぞ! 早く逃げるんだ!」
「あー……」
『なるほど……』
ミバルとキュウは顔を見合わせた。
「うわああああ! ゴーストと目を合わせるな! 憑いてくるぞ!」
『大丈夫大丈夫、私ごーすとジャアリマセン』
「うわああああ! こっちを見た!」
『大丈夫なんだってば〜』
「何か話しかけられてる気がする! 俺に興味を持つなー!」
キュウは少し面白くなって、ミバルの頭の上をスレスレに浮かんだり、急上昇したりと、槍を持つ男をからかい出した。
「あれ? 誰か女の子がいるの?」
今度は魔術師の女が辺りを見回した。
「声だけがするけど、仲間が隠れてるの?」
「そんなの聞こえないぞ? それよりあのゴーストの動きはやばいだろ! あんなに高速で動いて、誰に取り憑こうか物色しているのか!?」
「二人とも何の話をしてるんだ?」
剣を持つ男は仲間二人の顔を見比べている。
「あのー、モンスターは倒したから、出てきませんかー?」
「でも今度はゴーストが来たぞ!? 出てこいなんて言えないだろ!」
「ゴースト? どこに?」
「いないな。女の子の声もしないぞ」
「『大丈夫』って言ってる声がしたでしょ?」
「いや、聞こえなかったけど」
「女なんてあのゴーストしかいないぞ。なんだか襲いかかってこないし、奇声もあげないけど……」
ミバルとキュウは顔を見合わせた。悲鳴のような声をあげるのは槍を持つ男だけだ。
『実はね、目の前にいるよ〜』
「目の前……?」
キュウの言葉に首を傾げるのは、魔術師の女だけだ。
そして剣を持つ男は、仲間二人の様子を不思議そうに見ていた。




