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切れない敵はない

 ――視点を元に戻して。


 ミバルとキュウはモンスターがいるという場所へとたどり着こうとしていた、のだが。


「あ、あれって……もしかして、これから戦うつもりのモンスター……?」


『先客がいるね~。まあいいや、それなら彼らの戦い方をここで見ていよう!』


 隣の町の登録所から探しに来たモンスターは、一つの巨大な黄色の花を咲かせ、たくさんの紫色の蔓を持つ植物の姿だった。

 モンスターの本体らしき巨大な花は動かないが、たくさんの蔓を素早く動かして攻撃してくるため、なかなか近づけないという情報だった。


 その巨大花のモンスターから少し距離をとった場所に、三人のモンスターハンターが構えていた。


『剣と槍を持っているのが戦士で、魔法道具の鏡を持っているのは多分魔術師かな。戦士二人が蔓を切ったり弾き飛ばしたりしているから、あの魔術師の女の子がその隙に魔法で攻撃して倒す……ってところかな』


 蔓の勢いは激しく、戦士らしき男たち二人を集中して攻撃している。蔓の一撃はどれも重たく、二人が必死に応戦する姿をミバルは固唾(かたず)を飲んで見つめた。


『ところで、ちゃんとモンスターハンターの職分については覚えた?』


 キュウは特に不安そうな様子もなく、ミバルに話を振った。


「剣や弓矢などの武器や拳で戦うのが、戦士。魔法で戦うのが魔術師。聖霊の力を借りて戦うのが、聖霊術士(せいれいじゅつし)


『よし、正解。じゃあミバルはその三つの中のどれ?』


「斧で戦うから、戦士。魔法は使えないし、聖霊の力も借りられないから、他の二つにはなれない」


『そうそう、ばっちりだね。人によっては剣も魔法もできる人とか、聖霊の力が借りられたり、複数のことができることもある。でも名乗るのは一つだけだよ』


「戦士と名乗っても、魔法が使える人もいるってことだよな」


『私がそうだね。魔法も使える。でも戦う時は聖霊さんの力を借りて戦うことがほとんどだから、聖霊術士を名乗ってるんだよ』


 その時、二人の戦士たちに惹き付けられた蔦が、それまで大事に守っていた巨大花から離れた。


『隙ありだ!』


 そのタイミングを待っていたのだろう魔術師の鏡から、巨大花へとまっすぐに炎が噴き出した。


 ミバルはその一撃がモンスターを仕留めるさまを見届け――


『ミバル! 出番だよ!』


 られなかった。


「え? 出番?」


『斧を構えて! 君の一撃ならこの距離でも届く!』


「キュウ!? 一撃って何に向けてなんだ!?」


『もちろん、あの危険なモンスターに、だよ!』


 ――魔術師の炎は、巨大な花を包みこんだ。その後も鏡から噴き出し続けていたが――


「な……なんだ?」


「急に炎が巨大化したぞ!? 威力は変わっていないはずなのに!」


 三人が異変に気が付いた時、モンスターはすでに変異を遂げていた。日の光の代わりとばかりに、大輪の花から火を飲み込んで()()()()()なった姿は、まるで樹齢何千年の巨木のようだった。


「でかいっ……」


 毒々しかった巨大花がさらに不気味な姿となって炎の中から現れる景色は、見る者の戦意を失わせるのに十分だった。


 だが、キュウは(おび)えることも(ひる)むことも、悩むことも躊躇(とまど)うこともなく、ミバルに叫んだ。


『あれは大きいだけの木と同じ! 切れば切れる! 当てさえすれば、君に切れない敵はない!! いけー!!!!』


「……あれは、木か。木なら、切れる。やれる……!」


 ミバルはモンスターから逃げず、斧を掲げ、いつものように()を切った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] キュウを名伯楽と呼ばせて貰おう。 敵は木、敵は木、敵は木……そうミバルに思い込ませる事で、戦い=お仕事だと認識せる…………。 いや、いや、それじゃあ、ワーカーホリックの勇者が誕生しませんか…
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