夢袋
8時15分、着席のチャイムが鳴る。この時間からは着席して、読書をしなければいけない。読みたい本があるわけでもないけど、読まないと怒られるから題名も忘れた本を開く。入学当初に買わされた面白くもない本、すでに一年以上が経ったというのに読み切った記憶はないし、内容も何も頭にない。
「みんな、おはよう。急だけど今から持ち物検査をすることになりました。鞄を開けて机の上に置いて」
急な持ち物検査に教室が一斉にざわめく。別に怒られるようなものは何も持ってきていない私にはあんまり関係ない問題ではある。あるのだが、持ってきてはいけないものは持ってきていない。持ってきていないことは確かなのだが。うちの学校は携帯を持ち込んでもいのだが、後ろにある貴重品よのロッカーに入れなければいけない。じゃあ、それを誰が守っているのかというと誰もいない。そしてそんなことはあちらもわかっているわけでだからたまにこういうことが起こる。
「はい、没収」
次々に生徒が教師の毒牙にかかっていく。どうする、どうすればいい?テストも斯くやという必死さで考える。するとふと横の女子が目に入る。特にあわてることもなく、泰然と席に座っている。
「携帯、しまってるの?」
思わず話しかける。この落ち着きはいったいどこから来ているのか。
「ん?ほら」
急に胸元を見せてくる。制服に身を押し込んでいるとはいえ、やはり大きい子は制服には収まりきることは無い。お世辞にも大きいとは言えない私からすると羨ましい限りでしかない。大きいには大きいなりの悩みもあるのだろうが、羨ましいものは羨ましい。
「ほら、こうやってしまえば・・・。ね?」
「おお・・・」
なるほど、確かに胸の隙間に携帯を入れれば、いくら教師とてそこに手を入れてまさぐることはできない。スカートなどよりずっと防御力の高い聖域だ。
なるほどじゃねぇよ。んなこと出来たらやっとるわ。私だって携帯挟めるぐらいの豊満なバストが欲しいわ。
怒りに打ち震えている私は結局なんのアイデアもないまま呆然としていた。