地球の冷やし方
最近は寒い日が続いているので、私は部屋のふすまを移動させて広さを5畳のサイズにし、寝るときはそこで寝ることにしていた。
結局、私は濡れタオル配達の仕事に就くことにした。
一応正社員待遇で、日当は2500円だった。(ライン都市の外に住んでいる場合は日当4500円)
これに日々のスポーツアルバイトの稼ぎを合計すると、私のライン都市での手取り額は15万円ほどになった。
と言っても、ライン都市内部ではテレビ代と温泉代とボーリング代、手動ウォシュレットのレンタル代、レンタル自転車代に映画代、軽食代くらいしかほとんどお金を使うことがなく、貯金はたまる一方だった。
色々と真剣に考えてみたのだが、欲しいものが全く何もないのだ。
逆に言うとこれは『満たされた状態』にあるとも言えるのだが……。
昼食のソース・コロッケ丼を食べながら、アメリカにいる亜香里とメールのやり取りをする。
本日は【地球の冷却方法】についての講義だった。
地球温暖化が進んで極地の氷が全て溶けると、海水面は100mくらい上昇し、文明は消滅するらしかった。
そうならないために地球を冷やす方法について本気で研究している人々が世界中にたくさんいるとのことだった。
『地球を冷やす方法8選』
1、大気中に特殊な粒子を撒く。
2、赤道上に面積の大きい人工衛星を沢山飛ばす。
3、赤道上の海や陸地に大量の鏡を設置する。
4、全ての屋根や壁を白く塗る。
5、船や飛行機や電車や自動車の天井部位、日傘の表面、帽子の表面、靴の表面を全て白く塗る。
6、人類全員で年間を通じて白っぽい服を着る。
7、赤道付近の陸地に白い石を大量に敷き詰める。
8、アスファルトの道路を減らす。
1は逆に温暖化が進行する可能性があるし、やりすぎると多くの植物が枯れて生物が全滅してしまうので、非常に危険極まりないと言える。
2は効果的ではあるが、打ち上げにかなりのコストがかかり、さらに巨大な人工衛星は隕石の衝突確率が高くなるので、もし衝突すれば無数の宇宙ゴミとなってその回収に莫大な費用が掛かることとなる。
3は設置コストが高額で、さらに嵐によってすぐに鏡が割れてしまい、再設置に再び莫大な費用が掛かってしまう。
4と5と6と8の同時実行が最もコストが安くつくが、効果は限定的である。
7はそもそも論として、それほどの数の白い石が地球上に存在するかどうかが分からないので、まずそこから調査する必要がある。
とのことだった。
「なんて返事すればいいのかわからないけど、色々と壮大な研究テーマね」
「ライン都市はそもそもすべてがコンクリートで覆われて白っぽいので、地球の冷却には役立ちそうですね」
「たしかに。ますます旧市街地を守る人数を増やさなきゃだね」
「はっ……そうですね」
「でも、二段階資本主義経済と言うのが一番安定していると思うわ。
好景気になったら旧型都市へ移動してバリバリ働いて生活して、不景気になったらライン都市に移動して大人しくする。
それで、あとは資源が減ってきたら旧型都市をある程度解体してライン都市を増やして、逆に新しい資源が発掘されたらまた旧市街を増やす。
これがベストなんじゃないかしら」
「私もそう思います。
すくなくとも次の100年間くらいは、こういうスタイルで行くことになると思うんですけどね」
「それにしても、極地の氷が全部溶けると、海水面が100mも上昇するっていうのは本当なのかしら?」
「それについては簡単な計算式で答えが出るそうですよ。張り付けておきますね」
地球の表面積は5億1千万平方㎞。
海と陸地の比率は7:3なので、海の表面積は約3.6億平方キロメートル。
3.6億平方キロメートルは長さ3万6000キロ×幅1万キロの面積。
南極の氷だけでも、その体積はおよそ3000万立方キロメートル。
つまり1立方キロメートルのキューブが3000個×1万個あることになる。
よって並べなおすと、高さ1キロ、幅1万キロ、長さ3000キロとなる。
3万6千÷3千=12。
高さ1キロを12で割ると約83m。
よって、南極の氷だけでも、その全てが溶けると約83mほど海水面が上昇することが予測されるので、その他の氷河などが一斉に溶け出すと、海水面上昇はさらに高まることになる。
「……たしかに、本当みたいね」
100m……すごいわね。
「厚壁円錐型集合住宅の高さがだいたい50mくらいだから、それの倍になるってことね」
「凄まじいですね。
地球温暖化はなめたらダメってことですねー」




