火山の大噴火
今日は北山先生の問診の日だった。
「調子はどうですか」
「変わりありません。順調です」
「そうですか。何か思い出すことはありましたか?」
「いえ、特にありません」
「そうですか。まあ体調に問題が無ければ良しとしましょう。
薬のほうは、効果が無いようですから、もうそろそろ、やめにしときましょうか」
「そうですね。残念です」
「何かのきっかけで思い出すこともあるかもしれません。
気長に行きましょう」
「ありがとうございます」
「次回は……2週間後の、午後2時からでどうでしょうか?」
「はい、それで問題ありません」
「わかりました。はい、いいですよ」
「ありがとうございました」
「はい、お気をつけて。あ、そろそろ引越しですね。
まあ、荷物のほうはほとんどないと思いますが、一人で運べないようでしたら業者に連絡してください」
「あ、大丈夫です。荷物はコートくらいしかありませんので」
12月に入り、雪がぱらつくことが多くなってきていた。
半強制的なミニマリスト生活も3カ月を迎えた。
この3カ月で分かったことは、人間は適度に栄養を取り、良く寝て、適度な運動さえしていれば、他に特に何もなかったとしても、健康体でいられるということだった。
アメリカに戻った亜香里とはメールのやり取りが続いていた。
授業や所属グループなどで面白い話があると、それを短い文章やイラストにまとめて教えてくれるのだ。
先日にはこんなメールが届いていた。
【破局噴火に対応する方法について】
一般的な噴火の威力をはるかに超える火山の爆発は破局噴火と言われる。
過去には日本の九州で巨大なカルデラが生まれるほどの破局噴火が発生し、縄文時代が終了するきっかけにもなった可能性がある。
上空に舞い上がった大量の粉塵を放置しておくと、太陽光が遮られ、急激な寒冷化と生物の大量死などの問題を引き起こす。
上空の粉塵を強制的に落下させる巨大装置の考案。
巨大なファンを重ね合わせて上空の大気を吸引し、上層部からの放水によって発生した人工雨と人工霧で粉塵を吸着させる。らしい。
「面白いアイデアだけど、どうやって造るの?」
亜香里に聞くと、彼女はテレビ電話の向こう側で首を横に振っていた。
「現在の技術では難しいそうです。
少なくとも人力では不可能なので、まずこれを建設するロボットから作らないといけないそうですね」
「……でしょうね。
それにこれ、ファンに粉塵が詰まって動かなくなるような気がするわね」
「そこも未来の技術で何とかするんだと思います」
「何とかなるのかしら?
そもそも論として、ここまでしなきゃいけないのなら、もういっそのこと、大人しく滅んだほうが良いような気が……」
私が投げやりにそう言うと、亜香里は声をあげて笑って「面白い冗談ですね」と言った。
いや、冗談じゃないのだが……。
「まあ戦争するよりはマシですから、もし暇になったら造ってみるのも一興かと。
少なくとも観光名所にはなりますよ。将来的に考えて」
亜香里から送られてくるメールはこのようなトンデモ技術の解説書のようになっているケースが多く、それなりに楽しませてもらうことになった。




