バードストライク問題
11月に入り、私はスポーツ・アルバイトでの貯金が10万円を超えたのを機に、以前から狙っていた薄水色のコートを百貨店で買うことにした。
ちょうどぴったりのサイズのものがあったので迷わず購入。
その帰り道からさっそく着ていくことにした。
今まで風が冷たかったのだが、しばらくはこのコートで凌げそうだった。
ダウンジャケットは14万円から良いのが売っていたので、12月中旬くらいにはそれを手に入れたいところだった。
あるいはもう少し粘って、バーゲンセール価格になるのを待つか。難しいところだった。
このところの私はバードストライクについていろいろと調べていた。
ちょっと信じられない話なのだが、全世界では毎年毎年、ビルの窓ガラスへの衝突で、十億羽以上もの野生の鳥が死んでいるというネットニュースを見たのがきっかけだった。
最初見たときはフェイクニュースなのではないかと疑ったが、日本でもたった一つのビルで年間30羽以上の野鳥が衝突して死んでいるというデータがあったことをきっかけに私は信じることにした。
信じたくはなかったのだが……。
今でも何かの間違いであってほしいと願っているのだが……。
亜香里にこの話を教えてあげると、彼女は目を丸くして驚いていた。
そして、これからますます窓ガラスが無いビルが増えるでしょうねと言う話が展開され、どうせ窓が無いのなら形状は台形に近くなり、巨大化するに決まっているという流れになって、最終的には、
「ライン型幾何学都市の支持者がこれでまた大幅に増えそうですね。
旧型都市を守らなくちゃ」
という一言で締めくくられた。
最近のライン都市での動きはというと、厚壁円錐型集合住宅の表面をすっぽり土で覆って、そこに樹木を植え、本物の山のように見せかけたものが新たに3個、建設されたというのが一番のホットニュースだった。
こういう部分で木を増やして野鳥の数を回復させることができるかもしれないので、私はこの動きには賛成していた。
「それにしても、毎年十億羽以上というのは異常な数ね……どうなるのかしら、これ」
とある有名な占い師によると、【呪いは確実に存在する】とのことだった。
果たして、これまでの累計数百億羽以上にものぼる(と思われる)野鳥のバードストライクによる無意味な死の累積は、人類全体に対していったいどのような呪いをもたらせるのだろうか。
「考えただけで、ゾッとする数ね……」
と言っても、いつまでも後ろ向きなことを考えていても仕方がない。
最近の高層ビルは窓ガラスに特殊なフィルムを張るなりして、被害の減少に努めているとのことだった。
しかし効果は限定的との見方もあり、地球から鳥類が消えてしまわないようにするためにはやはり窓ガラスを全て無くす方向で進めたほうが良いという意見もかなりの数が出てきているらしかった。
「ライン型幾何学都市を発案した人は、このバードストライクのことを知っていたのかしらね?」
いずれにせよ、この大きな問題は、全世界の都市をライン型都市に置き換えることにはかなりの追い風になる要因になりそうだった。
あるいは単なる呪いとなって跳ね返ってくるのを耐え続けるしかないのか……。
人類の行く末に、小さな分岐点が設置されているような気がしてならなかった。




