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ほとんど異世界転生  作者: マウスノート
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社会主義の落とし穴

挿絵(By みてみん)


3日ぶりに佐野亜香里に会うことになった。

向こうからランチに誘ってくれたのだ。

私たち二人はレストランでトマトジュースと卵チャーハンを食べながら議論を楽しむことにした。


「この世に存在するあらゆる職業の最先端に、有能でやる気のある人物を配置するのに最も適しているのは民主主義であり、自由主義であり、適度な資本主義なのです!」


食事中、亜香里は私に向かって熱心に語った。


「他のシステムはありえないのです!」


「分かったから、どうか落ち着いて……」


アメリカに留学しているからなのか何なのか知らないが、身振り手振りも比較的に大きいように感じられた。


「みんな、分かっていない! 一体これまでどれほどの血と汗と涙を流した結果として今の社会システムが造られたのかを!

この素晴らしい自由主義の社会が! いかにして!」


普通、こういう話をこういう熱気で話す人とは距離を置くタイプの私だったが、佐野亜香里が言う分に関しては話は別だった。

なんというか、悪意を全く感じないので……。

ちょっと変な感じだけどまあいいかと思ってしまう自分がいた。


「問題は、AIを使えば能力の高い、やる気のある人物をあらゆる業界の最先端に送り込めると主張している人たちなんだよね?」


私は亜香里の話を噛み砕き、要点だけを質問してみることにした。


「その通りです」


やや、トーンダウンした。


「AIを使おうが何をしようが、社会主義のシステムでは競争がほとんど生まれない。生まれたとしても意味のない競争になるのが目に見えています。

その歴史的事実を、何度説明しても理解できない人たちがあまりにも多すぎるのです」


「まあ、普通はそうよね。分からないと思うわ。

だって、ほとんどの人にはそういう経験がないから。

頭のいい人であればあるほど、社会主義に傾倒するというのはよく聞く話だしね」



現実とは残酷である。

何か新しいことや新しい技術に挑戦しようとする者はたいてい性格に難があったり、頭のねじが外れている、一言でいうとアホに多い。

要するに資本主義や自由主義はそういったアホに支持されやすく、しかして、前例や伝統を重んじる優等生タイプの秀才たちほど社会主義や共産主義に傾倒しやすいのだ。

そしておかしなことに、社会全体の成長や技術革新で言うと、どういうわけかアホが多い自由主義・資本主義社会のほうが社会主義や共産主義を圧倒したのだ。

これは歴史的な事実である。

最近は自由主義陣営の良いところ取りをした社会主義国陣営が、自由主義陣営の政策ミスも相まって、一時的に自由主義陣営よりも進歩しているような印象を受けるニュースが多数存在するものの、それは本当に一時的なものである可能性が高い。



ただ、自由主義や資本主義にももちろん問題は存在する。

貧富の格差があまりにも開きすぎる状況というものは、決して好ましいものではない。

是正すべき点は是正するべき。

しかしーーーー


「完璧なシステムは、どのみち無理だしね。ある程度の欠陥はあって当たり前だし」


亜香里は大きく頷いた。


「その通り!」


「まあ、私は普通に暮らせれば十分なんだけどね」


もっとも、普通に暮らすこと……これが意外と難しいことなのかもしれないのだが。

私も普通に暮らしていて交通事故にあったわけだし……。


「その普通の解釈と、社会破綻の程度問題の認識の落差によって争いが生まれるんですけどね」


「たしかに、難しい問題よね」




この世に存在するあらゆる職業の最先端に、有能でやる気のある人物を配置するのに最も適しているのは民主主義であり、自由主義であり、適度な資本主義なのです!




……ふむ。




「民主主義、自由主義から余計な無駄を取り除くことができたとすれば、もっと良い世の中になるんでしょうけどね……」


「しかし、それが難しいのですよ。

無駄なものを造るための企業や職場に、もうすでに大勢の人員が在籍していて、実際に働いているのですから。

人が働くということは、そこにはもうすでに歴然たる人間関係が出来上がってしまっているということ。

そこを下手につつくと手痛いしっぺ返しを喰らいます」


「たしかにねー。難しいよねー」


それからは場所を変えて、二人で私の部屋に行くことにした。

5人乗りエレベーターに乗り込み、あとから乗り込んできた若い男女カップルと合わせて4人揃ったところで上昇ボタンを押した。

部屋に入ると、亜香里は初めてだったのか、少し感動したような表情で部屋の隅々を眺めていた。


「私はこの都市の外のホテルに泊まっているので、この厚壁円錐型集合住宅内部に入ったのはこれが初めてなんです。

ありがとうございます。

噂通り、内部はほとんど木造なんですね。

意外と広いです。

これなら窓が無くても窮屈な感じはしないですねー」


「亜香里さんも、この都市の建造自体には賛成なんですよね?

ただ、半分半分にしたいという程度問題的な主張をしてるんですよね」


「その通りです」


「何もないですけど、思いっきり寝転んで大丈夫ですよ」


「それではお言葉に甘えて」


亜香里はフローリングの床の上で三角座りをして、それから両手両足を広げて、思いっきり寝転がった。


「意外と天井が高いのですね!」





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