プロローグ
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目を覚ますと悪臭ただよう浴室の中だった。
やけに長細い形状の浴室。肩までどっぷりつかったヘドロ状の液体。
体臭を濃縮したようなそれから脱出するのは容易かった。
問題はこの状況。
キュイーン・キュイーン・キュイーン
考える暇もなく鳴り響いた電子音に意識を持っていかれそうになる。
とりあえず、口元に装着されている不愉快なカバー、これを外しても息ができるのかどうか。
まず確かめなければならないのはそのことだった。
もしもこれを外して息ができないとすれば、おのずと行動範囲は半径1メートル以下に留められてしまうことになる。
「っぷはーっ」
深呼吸を一回、二回、三回。
どうやら問題なく呼吸はできるようだ。
そうとくれば問題は第二関門。
全裸でウロウロできるかどうか。
これに関しては考える間もなかった。
気が付いた時には、私は薄いビニールのカーテンを蹴り破って外に出ていた。
そこで気づくことになったのは、自分の価値が思いのほか低いという、圧倒的な虚無感だったのだが。
蛮勇気取りに浸っていたのはおそらく2秒かその程度だった。
自分自身をこのような理不尽な状況に追い込んだのは一体何なのかなどと、考える価値も見いだせないほどの【量産体制】。
圧倒的な効率的処理態勢。
ずらりと並んだ同じような形状の浴槽と、それを覆う薄いビニールのカーテン。
乱数的に聞こえてくるのは機械につながれたパイプを介して行われている呼吸音だ。
ここは一体ーーーー……。
考えると同時に背後でガチャリと扉の開く音がした。
そして告げられる運命の言葉----などではなく、まず聞こえてきたのはため息だった。
「はーい、目は覚めましたかー? えーっと、6029号の、時乃小明さん」
トキノ アカリ
どうやらそれが私の名前らしかった。