表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

不二実凛人は殺せない

作者: イッパンジン

これは題名通り不死身つまり何をされても死なない人間が主役の話である。なんで主役が不死身なのかって?それを聞くのは無しという事で。とにかく読んでほしい。


不二実凛人は不死身である。いつどこでなぜ不死身になったのかは明らかになっていない。本人も自分がなんで不死身になったかを語ろうとはしない。高所から落ちても、首をはねられても、毒を飲まされても、体を木っ端微塵に吹っ飛ばされても、驚異的な再生能力によって生き返ってしまうのだ。不二実はそんな再生能力のおかげで、高校2年生にまで進級した。しかし不二実は進路をまだ真剣に考えずにいた。不死身なら死ぬことがないため卒業してもなんだかんだで生きて行けるだからだ。

不二実はこの能力に覚醒したばかりのころは、さすがに困惑したが早い段階で受け入れた。過去にも、通り魔に刺されたり、放火にあったり、熊に襲われたりしたが、いずれも生き返った後は何事も無かったかのようにしていた。死にたくても死ねないことへの苦悩より、死んでも生き返られることへの幸運さが優っていた。

普通の人間ではないことがバレないよう、能力が発動しているところを他者に見られないようにしていたが、ある日大失態を犯してしまう。生き返る瞬間を見られてしまったのだ。その見てはいけないものを見てしまったのは、塚山詞。不二実のクラスメイトの女子だ。不二実も見られたことに気づいていた。もし不二実が冷酷非情だったら塚山は間違いなく口封じで殺されていた。


それ以降の塚山は不二実につっかかるようになった。

「なんであんな状態で生きられたの?」

「死ななかったから」

「私なら死んでたよ」

不二実は自分が不死身であることをなんとか悟られないようにしていた。バレたら一気に拡散して周りに広まって面倒くさいことになるに決まっている。

だか

「もしかして不二実って不死身?」

すぐに悟られた。

不二実は彼女にだけは隠し通せないと判断して自分が不死身であることを認めた。

「もちろん内緒にするよ。でないとあなたも学校にいられなくなっちゃうですもの」

半信半疑だが暴露した以上信じてみることにした。

しかし二人はこれをキッカケに付き合うという展開にいくことはなく、今まで通りのクラスメイトの関係を保っていた。不二実も塚山が興味あるのは自分ではなく、不死身体質の部分であることを自覚していた。彼女と一線を越えるキッカケにならないことを理解はしていた。


「どうせ、学校でしか会うことがないだろ」

そう思った矢先、急展開をむかえた。


不二実はちょいと安めのマンションに家族と過ごしていた。

ある晩、不二実の所へ訪問客が現れた。

「こんばんは。塚山です。お隣に引っ越してきました。」

塚山詞だ。

不二実はあることを思い出した。塚山は今年の新学期から自分と同じ高校に転入したきたのだった。まさか引っ越し先が自分の家の隣だったとは…。

不二実は塚山に関係というよりもはや因縁ともいえるものを感じはじめた。

二人の関係性を家族が知ったこともあり、互いの付き合いは家族ぐるみにもなってきた。

不二実は塚山とたまに一緒に晩飯を食べるようになった親近感と同時に自分が不死身であることをいつか暴露されるんじゃないかという危機感もあった。

親に茶化されて、連絡先の交換までさせられる始末だった。「もうどうにでもなれ」


不二実と塚山がお隣さん同士になってから一週間。不二実は未だに塚山に慣れずにいた。不二実はこれまで女の子に告白したことも、されたこともない。ハグもキスもしたことない。いわゆる童貞なのだ。一方の塚山は成績は学年の上位で、風紀委員を務めるまさに優等生だ。そんな塚山に不二実は学校内での近づきにくさを感じていた。


放課後。不二実はいつものように一人で帰っていた。そんな田中の近くに一人の女性が近づいてきた。

「不二実。今日も一人なの」

この人はアズミさんといって学校の先生を務めており、不二実とも顔見知りなのだ。

「せっかくクラスメイトとお隣さんになったのよ。こんなチャンス逃すわけにはいかないでしょ」

「でも彼女が興味あるのは俺の不死身という部分だけで俺自身に好意があるわけではないよ」

「謙虚にしていればいつかあんた自身も好きになってくれるわよ。たぶん… じゃあね」

自分自身を好きになるか…。恋の経験がない不二実はイマイチピンと来なかった。


それから何日か経った日の放課後だった。いつものように一人で帰ろうとする不二実を塚山が呼び止めた。

「不二実、たまには一緒に帰ろうよ」

不二実は断る理由が思いつかなかったので賛成した。塚山は手を繋ぎたかったが、不二実は拒否した。

いいムードとは言えない状態で歩いていると、空に流れ星のようなものが見えた。それは遠い向こう側に落ちていった。

「不二実、見に行こう」

塚山は不二実にそう言うと、陸上部に入らないかと言われそうな速さで、流れ星のようなものが落ちた所へ走っていった。そこは、ずっと昔に廃墟になった遊園地だった。流れ星のようなものが落ちたところにいってみると、そこには、テレビでよくみるUFOのような形をした物体が、地面にめり込んでいた。

「あれUFOだよね」

UFOだと言う塚山と

「まさか、そんなことあるもんか」

認めようとしない不二実が言い合っていると、物体の一部がドアのように開き、中から明らかに地球上のものではないものが出てきた。

不運にもそれの視界の届く場所に立っていた不二実と塚山は相手にすぐに見つかってしまった。

「お前、地球人だな」

かなり飲み込みが早かった。

「はい、そうです」

塚山は震えた声で即答した。田中を盾にしながら

「我らは異星人。地球を侵略しにきた」

不二実と塚山はいきなり地球侵略を宣言され、どうとらえればいいのか分からなかった。

不二実はとにかく反応を見せることにした。

「なんで地球侵略を…」

そう言っていた途中、不二実は異星人の鋭い爪で身体を一突きにされてしまう。そのまま仰向けで倒れてしまった。目の前で起きた惨劇に塚山は不二実が不死身であることを忘れ、ショックで座り込んでしまった。

「残念だが、次はお前だ」

無抵抗の塚山に異星人が襲いかかろうとしたその時だった、「悪いけど、そうは行かないよ」

不二実が立ち上がった。どうやら再生能力は地球外生命体が相手でも適用されるようだ。異星人は目の前で殺したはずの地球人が生き返ったことに動揺を隠せなかった。

異星人が何度も切りつけても不二実は何度も生き返る。

「そんなバカな…」

異星人にとって自分に殺すことのできない存在がいることなど予想できないことなのだろう。今までの冷静は何処へやら、かなり驚いていた。

驚く異星人に田中が近づいてきた。

「来るな、来るな」

そういってビビる宇宙人の額を人差し指で突いた。

「ひこうを突いた。なんちゃって」

だが今度は異星人が仰向けに倒れた。そのまま全身が泡となって消滅してしまったのだ。不二実は異星人を倒したことになる。あっけない最期だったが…

「攻撃力とは裏腹に防御力はなかったのか…」

そう不二実が呟くと、異星人の死に連動するかのようにUFOは炎を上げながら炎上し、跡形もなく燃え尽きた。地球の平和はまさに人類の手によって救われた。自分の不死身能力がまさか地球を救うことになるとは想定外だった。

「すごいよ不二実。救世主だよ」

「そうだな」

塚山は涙を流し鼻水を垂らしながら、不二実に抱きついた。

事があっという間に片付いたので、二人が帰るのは遅くならなかった。


この日をキッカケに不二実と塚山は距離が縮まった。付き合うとまではいかないものの、今までよりは良くなった。登校や弁当を食べるとき、下校のとき、二人は一緒になることが多くなった。

そんなある日、塚山が不二実に相談を持ちかけた。

「最近、学校内でカツアゲが増えてるみたいなの。風紀委員といてはほっとけないよ」

「なんで風紀委員でない俺に相談するんだ」

「不二実が協力してくれれば心強くなるからだよ」

「俺が心強い?なんで」

「それは不二実が不死身だからだよ」

「不死身とカツアゲは関係ないだろ」

「あるよ。不死身なら注意しても殺されないもん」

「殺される前提かよ。でもカツアゲは俺もよくないと思うな。協力するよ」

「ありがとう、不二実」

不二実は仕方なく塚山に協力することにした。


「頼むよ。不死身人間」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ