二人のサポート
「な、なんだよそれ……」
「……」
彼女は答えない。俺はムカムカしたが、気持ちを抑える。
「そこまで怒ることないだろ?」
「だって私の料理不味いんでしょ?」
「……」
何も言えなかった。美味しいとは呼べないその味を思いだし、少しげんなりした。俺はつい目線を反らす。
「もう弁当はあの二人に作って貰ったら良いじゃない、馬鹿ーーっ!」
「あ、まっ……」
彼女は颯爽とこの場から離れ急いで走って登校した。
「……」
俺はその場に一人立ち尽くしていた。
「どうしたんだ宮本? 元気ないなー」
「まりと喧嘩した」
「そうかっ、まぁ、喧嘩なんて付き合うようになると日常茶飯事だ。今のうちに慣れとけ」
「……あぁ」
そして時文の席に座ってぼーっとしていると、加納さんが来た。
「どうしたの宮本君元気ないわねっ」
「加納さん……」
昨日の事があったのに穏やかな表情で来るものだから驚いた。
「どうして……君は昨日あんなことがあったにも関わらず俺に近づいて来る?」
「それは……」
彼女は少し考えながら、
「……貴方の助けをしたいから……かな?」
そして昨日のツイートの文面を思い出す。
──だから私は彼の気持ちを聞いてあげようと思って
「君が『ランラ……』」
「駄目ーーーーーーっ!!!」
俺の斜め左前の席から叫び声が聞こえた。見ると強気の顔でかながこっちを見ている。
「わ、私だって裕君の助けになるんだからーーーっ!」
顔を真っ赤にしてかつかつと俺に歩いて来る。
「私だって、……いや私こそ裕君の味方に相応しいわっ!」
「何言っているのかしらこの子は? 私こそ宮本君の協力者よ」
二人はぎゃんぎゃんいがみ合い、俺はどうしたら良いか困っていると二人はこっちを向き、
「宮本君何か困ったことはある?」
「裕君。何か相談にのってあげるわっ!!」
「……とりあえず」
俺は言う。
「いがみ合いは止めてくれ」
そして昼休み二人は弁当を持ってきて、この前一緒に食べた場所でご飯を食べに行った。
「で、元気ない理由は何?」
「そうよ話してみて?」
「……」
どこから話すべきか……。ツイートのコメントがやはり二人の内のどちらかならその内容を察するに俺の好きな人を知っている。
「まりと喧嘩してしまって」
「……あぁ、そう」
「そっかーっ」
「それで気まずくなってしまった」
「原因は?」
「それは俺が悪いんだ」
「どう悪いの?」
「俺が彼女のその……料理を美味しくないと言ってしまった」
二人はあぁと言った。
「それは確かにやらかしたわねっ」
「確かに女性にとってそれはかなり傷つくことね~っ」
「それはそうだが……」
「そんなに美味しくないの?」
俺は首を縦に振った。
「それはそれで女性として致命的ね」
「そうね、女性にとって男子の胃袋を掴むのはかなりの必要条件だもんねっ」
「……」
「ねぇ、巨勢さんのどこに惚れたの?」
かなが訊く。
「それは……幼馴染みで気易いからな」
「……」
「……」
そして黙っていた加納さんがところで、と言う。
「ご飯食べない? 冷めちゃうわ」
「弁当は冷めたものだろ?」
そして二人からまりと仲直りする助言を得た。
(『しばらく冷めるまで待つ』……か)
そして学校を終えてスマホを見ると通知が来ており、見ると『ランラン』からだった。
『最近どうですか?』
白々しいと思いながらも俺は話に付き合った。
『まぁ、まあまあだね』
『私は失恋気味で』
『知ってる』
『そうショックで~』
『まあそうだよな、失恋は辛い』
『だから私は彼の応援をしようと思いました!』
『なんで君は彼のことをそこまで……』
『それは彼に良い縁があるようにと願っていますから』
凄い優しい子だなーっ。あの二人のどっちかなのだろうかと思うと少し嬉しかった。
そして部活終わり帰っていると、前にまりがいた。
──しばらく冷めるまで待つ
俺は彼女の距離を一定にとりそのまま気づかれない様に歩く。そして彼女の背中姿を見ていると少し元気がなさそうだった。少し気にしつつも話かけず家に帰った。そして部屋で寝る前に俺は久しぶりに呟いた。自分の今の気持ちを包み隠さず書く。
『やっぱり女は愛嬌だよな』
翌日。登校しているとまりが前にいた。ゲッと思い昨日みたいに距離を置いておくと、彼女はキョロキョロし始めて後ろを向いた。そしてじっと見て近づいてくる。
「……な、なんだよ?」
「わ、私は……」
彼女はぎこちなくニコ~っと笑い、
「もう怒ってないわよ?」
俺は戸惑った。まりの様子が何か変だぞ?
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