趣味アカ
俺は宮本裕志、高校2年生だ。暇な時によくSNSの趣味アカで色々呟く。好きな漫画、アニメそして偶に流れで自分の好みのタイプも言ってしまう。
『ナース姿の彼女を見たい』とか、『メイドさいこー』とか『金髪良きかな』みたいな感じで。
そうしたらある日の事、俺の元に知らないアカウントからコメントが来た。
『どんな髪型の女性が好みですか?』
(いきなり何か不思議な内容だな)
俺の内容から察して男と思っているのは分かるが、俺の好みを訊いてどうするのかな?
『普通に伸ばしている髪かな?』
『もしお洒落した髪ならどうですか?』
『ならポニーテールかな?』
『ツインテールじゃなくて?』
『ツインテールは少し子供っぽいかな』
『ところで女性がどんな仕草をするときゅんとすることなんてありますか?』
『俺ので良いの?』
『はい。ユウさんの話を参考にしてみたいです』
ユウとは俺の趣味アカでの名前だ。
『横の髪を耳に掻き上げる動作とか』
『ではどんな動作にドキッとしますか』
『ウインクされると気があるのかなと思っちゃうな』
『なるほど。ところで書いている物以外に好みの漫画や本、アニメありますか』
『うーん、意外に昔の漫画やアニメも好きかな』
『なるほど’90代とかの作品とか』
『そうそう古いけど良いかなーっ』
少しその子と楽しく話し合った。
『ランランハーフや、夢見る季節の花とか確かに聞いたことありますね』
『まぁ、名作だからね』
『分かりました。色々ありがとうございます』
『いえいえこちらこそ楽しかった。ありがとう』
そして俺はまた趣味を色々呟いた。そして次の日。俺はいつものように学校へ登校した。そしたら、
「おはよう裕志」
彼女、巨勢まりが声をかける。彼女とは小学校からの幼馴染みで家の距離も100mほどだ。彼女は腰まで伸びた黒髪で、目はぱっちりしていわゆる容姿端麗、成績優秀の出来る子で、そして『学校三大美女』の一人と言われている。俺は彼女の事が好きで、つい少し斜に構えて、おうと言う。
「何その言い方? まだ思春期なの?」
(きゃー、恥ずかしーっ)
「ところで、最新号の『彼女の憂鬱』やばくなかった。ちょー、続き気になったんだけど」
「分かる。その後真美は告白されるのか? ってな」
「そうそう少年漫画話せる男友達なかなかいないから嬉しいな」
(と・も・だ・ち……)
僕はその言葉に打ちひしがれた。
「どうかしたの? 裕志?」
「べ、別になんでもない……」
そしていつもの学校に行ったつもりだった。まさかこんなことになっていたとは……。
学校に着くとクラスが別なのでまりとは別れて自分の席に座ると、イケメンで親友の間宮と話をする。
「どうだ間宮。部活の調子は?」
「部活は調子良いんだが、どうも最近彼女と上手くいかない」
「そうなんか」
「このままじゃあ別れるかもしれん」
「そうか……、それは大変だな」
内心では別れろコールが鳴り響いている。
間宮隼、成績優秀、スポーツ万能のモテる男。噂では彼女待ちの女子が整理券を持って待っているというほどだ。(勿論ない)
そしてそんな彼と話していると、結城かなが話に入って来る。彼女とは高校からの仲で二年連続同じクラスだ。序でに間宮とも二年連続だ。また彼女は『学校三大美女』の一人だ。少し茶髪がかったショートヘアで目はぱっちりして地区予選に出る程のスポーツ万能だが、脳筋のポンコツだ。体に栄養がいっているのか胸はデカい。あれ?
「どうしたかな。ポニーテールなんかして」
「あ、いやその、偶にはイメチェンかなーっと思って。どう裕ちゃん似合ってる?」
「え? ショートにポニーテールしても……まぁ、変じゃないか。悪くないんじゃないか」
「まぁ、確かに」
いつものノリで二人と話していると、おぉと歓声が広がる。それとともにクラスに入ってきたのは『三大美女』の一人にして成績優秀、スポーツ万能の加納みやだ。まりほどではないがかなりの秀才で、肩まである黒髪に目はきりっとした二重の160cmありそうなすらっとした体付きである。
「加納さん相変わらず綺麗だなーっ」
「あぁ」
あれ? それにしても彼女、珍しくツインテールにしているな。それと座りざまちらっと俺の方を見たような気がするが気のせいか?
そして授業が始まり、しばらく時間が経つと暇になる。キョロキョロしていると、かながもの凄い勢いで短い髪を耳に掻き上げている。いや、そこまでないだろお前。そしてふと加納さんを見ると、彼女も耳に髪を掻き上げている。どうしたんだ二人とも? そして次の授業でもそれをしていた。そして昼休み間宮と話しながらご飯を食べていると、かなと目が合った。そうしたら不器用にウインクをしてくる。なんだあいつ。さっきから変……ん? とふと昨日の趣味アカの内容を思い出した。
──ポニーテール
──髪を耳に掻き上げる
──ウインクする
こいつまさか……。
そして、午後の授業中に右斜め前にいる加納さんが消しゴムを後ろに落として拾った後、俺と目が合い、綺麗なウインクをしてドキッとした。
ま、間違いない。これは明らかに俺のアカウントを二人は知っている。しかし……二人の内どっちが俺の趣味アカに訊いた奴だ!?
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