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8.王宮侍女はやる気が出ない


義姉さんからの宿題はタペストリーを1枚仕上げる事。

モチーフは自由。


ぶっちゃけ面倒くさい。

タペストリーってけっこう大物だよ?

次の帰省は6ヶ月後ぐらいだから期間はあるけど、図案考えて、下書きしたりとか準備をして、仕事もあるからギリだな。

その辺り分かってて宿題だす義姉は優しそうな顔して鬼かもしんない。

うぇぇぇ、めんどくさいぃぃ。



嘆いても悩んでも仕事はやってくる。

なんと、今日からの仕事は天井磨きだ。

意味が分からんだろう?私も分からん。


文字通り天井を磨くんだよ。2週間かけて。

舞踏会とかやる大広間って天井画とか天使像とか装飾とか多いじゃない?埃とか煤とかで汚れるから社交シーズン前に掃除するの。年に一回。しかも、足場組んで。

『天使の間』と、『愛の間』の2会場。

天使の装飾が多いから『天使の間』はわかるけど、『愛の間』って、『愛の間』って………ウケる。聞くたびに腹筋が鍛えられる気がする。

成婚記念に王妃の為に作ったから『愛の間』なんだってさ。

………やめて。笑わせないで。


さて。話を戻そう。……ぷぷぷ。

なんだっけ。そうそう天井磨きだ。

体力勝負だから、若手の仕事なんだよね、これ。

いいなぁ、おばちゃんたち。私も選べるなら情事の跡だろうが、消臭作業だろうが、そっちのがいいよ。

足場高いし、怖いんだよ!


もう、業者入れたら良くない?外部発注しようよ。なんで私たちがやるの?

男性がやれよ、女性の仕事じゃないよね。侍従とか騎士とか、文官とか男が溢れてるじゃん。この際、庭師でもいいよ。

経費削減?こんなとこ削るぐらいなら王族の遊興費を削れよ。王妃のドレス1〜2着諦めれば出せるんじゃないの?

それともうちの国って超貧乏なの!?

ヤッてないで働け貴族!!


足場組むのは騎士団とかがやるんだけどさ、そん時にイケメンとちょっと仲良くなれたりして〜なんて思ったよ。

淡い思いでしたよ。無理。無理。

埃が落ちるから完全防備なのよ。髪を大きめの布で巻いて、大判マスクしてやるから目ぐらいしか見えないし、誰が誰だかわかんないのよ。

服装だって、男性みたいにズボン履いてその上にエプロン装着するんだよ?そんなダサい格好でイケメンな騎士に話しかけられないじゃん。

最っ悪っ!!

つか、騎士団が登って掃除しろっ!



「若いんだから、がんばんな」


おばちゃんたちのありがたい激励と掃除のコツを受けて、くっそダサイ服に着替えて会場入りすれば、煌びやかやな大広間に組まれた無骨な足場がそびえ立っている。


「身バレしたくないわぁ」


お姉さま、その意見、ものすっごく賛同します!

端っこで笑ってる騎士団員の顔は覚えた。

笑いを堪える奇妙な顔を止めないと無い噂と無い噂を立ててやる。けっ。

軍手をギュッと嵌める。

気合は充分、怒りゲージでやる気も容量超えたぜ。

行くぜ戦場に!

やり場のない怒りをぶつけるようにピッカピッカにしてやりましたとも!


ついでにシャンデリアも下ろして掃除するんだけどね、これがもう面倒くさい。

パーツ毎に分解し、こびりついた蝋を取って、煤を払って、布で磨いてまた組み立てる。

こういう細かい作業は嫌いじゃないし、シャンデリアを私たちがやるのは分かる。


再度問おう!

天井の掃除って私たちの仕事か!?




天井磨きで腕を酷使しながら、タペストリーの図案を考えるのは予想以上にしんどかった。

モチーフ、なんにしようかな。

草花は定番だけど、面白くないんだよね。

やるからにはオリジナリティというか、人と違ったものを作りたい。


「なにしてんの?」


休憩室で差し入れの焼き菓子を食べつつ途方に暮れてたら声をかけられた。

振り返ると、同じ天井磨きをやってるお姉さまがいたので、義姉に刺繍の宿題を出された話をした。


「面倒くさいもんやるわね」

「やらないと更に面倒くさいんですよ。でも、やる気でない〜」


疲れもあって、ぐでんと机に突っ伏す。

とりあえず下書きだけでも今月中にやんないと間に合わない。


「6ヶ月後ねぇ……。お義姉さんに見せたら、秋の芸術祭で出品したら?出来が良ければ買い手がつくわよ」

「え?芸術祭ってそんなのあるんですか?」


9月末から10月頭の狩猟祭で社交シーズンが終わり、11月に開催されるのが芸術祭だ。

王都のあちこちで音楽が流れていて、絵の展示会や劇の特別上演だの、路上劇場など芸術っぽいものがそこかしこで開催されるらしい。

興味がないんであんまり知らなかったんだよね。


お姉さまが言うには、貴族街にも市民街にも広場に出品スペースがあって、個人の出品が可能らしい。

貴族街ではご令嬢方のレース編みや刺繍作品が出品されるんだとか。

上手く作れば金になる!

これは、やる気でるわ。

まぁ、ご令嬢方は売り上げを孤児院とかに寄付してるらしいが、そんなもんは個人の自由だもんね。

よしっ!やる気でた。ありがとう、お姉さま!

それにしても、同じ仕事量なのに、なんでそんなに元気なの?


「うん?知りたい?どうしよっかなー。教えちゃおうかなぁ」

「知りたいっ!教えてお姉さま」

「あはは。アンナちゃんだし、教えてあげよう」


すごく腕のいい「揉み解し屋」の店に通ってるんだとか。

聞き慣れない仕事に首を傾げると、体を手で揉んで疲れを取ってくれるそうなのだ。

眉唾もんだなぁとは思うがお姉さまの活き活きしてる姿を見ると、ちょっと興味はある。


「騙されたと思って行っておいでよ。店員さんは全員女の子だから大丈夫よ」


そう言ってお店の名前や場所を書いた紙をくれた。お姉さまの名前を出すとサービスしてくれるらしい。

無料サービスとか大好物です。ありがとう!




後日、ある近衛騎士によって新しい扉を開いた若手騎士がいたとかいないとか。


え?何もしてないよ?ちょっと案内する部屋を間違えただけで。

他意はないよ。本当、本当。


最後に出てきた近衛騎士は1話に落とし物を受け取りに来た彼です。

もちろん確信犯です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全て! [気になる点] 何もない~ [一言] 待ってましたよ、アンナちゃん! おばちゃん、次の更新までお仕事頑張れる! www 本当に楽しみにしています。が、腹黒兎先生 無理せずに更新して…
[気になる点] んんん?若手騎士が近衛に開発された? [一言] あ、そっか。珍妙な姿のアンナに苦笑してた奴のとこに鞭の勇者(仮名)を誘導したのか、故意に。なるほどなるほど。あなるほど……。
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