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4.王宮侍女は情報収集する



本日の担当区域はトイレです。

…………。

そろそろ本気で職種を問いただした方がいいのではないだろうか。

いや、できる。できるよ、トイレ掃除。

それも貴族子女としてどうよ?って感じだけどさ。

一時期、超貧乏な時があったからね。家事は得意なのよ。料理以外は。

いいでしょ苦手でも。何か欠点があった方が可愛いって言うじゃない?言われた事ないけどさ。


まぁ、いい。仕事だ仕事。

午前中の担当は王宮の端にあるトイレ。

ちなみに各階にあるのでこの棟には4箇所。

まずは1階からと、トイレに入れば1番奥の個室が使用中。

どうしようかと迷っていたら、奥から聞こえる小さな音になんだか嫌な予感しかない。

足音を消して、そっと近づいてみる。


「ああ、奥様、奥様」

「いいっ、イイわ。素敵よ。ねぇ、もっと強くしてっ」

「奥様っ、もう、オレ、もうっ」

「イイの!イイのよ!そのままっ、もっと!もっとぉ!!」


そぉっと、気配を消しながら後退りする。

使用中って、そっちかい。

奥様、声が段々と大きくなってますよ?大丈夫ですか?ここは旦那様の仕事場があるんじゃないですかねぇ。

そろそろ終わりそうだけど、出待ちするのもお互いに気まずいしなぁと迷っていたら、2戦目に突入しやがった。

奥様若いなぁ。

ここは後回しにするかと、入口に清掃中の立看板を真ん中に置いて2階へと上がった。

私の気遣い屋さんめ。ありがたがれよ、2人とも。

2階のトイレには眠気覚ましの栄養ドリンクの空き瓶が18本転がっていた。怖っ。

この階にブラックな仕事場があるよ。怖っ。


ちなみに3階も使用中だった。どっちの声も女性に聞こえたのは気のせいか…。いや、声の高い男の可能性もあるか。どっちでもいいけどな。

用心して入った4階は何事もなく、それが逆にムズムズすると言うか、何もないんかーい!って気持ちになった。

あって欲しいワケじゃないけど、1階から3階まであったんだから、なんかあれよ!って思うでしょ?思うよね?

戻った1階には脱ぎ捨てられた奥様の下着があったので、そっとゴミ袋に入れておいた。

無だ。無になれ、私。


便秘や下痢でもない長時間の使用はお控えくださいませ。




「あら、遅かったね」


休憩室に戻ると同僚のおばちゃんが声をかけてくれた。

あー、ほっとする。


「1階と3階が使用中でなかなか空かなかったんですよ〜」

「あ〜、端のは使用率高いのよ。掃除しにくいのが困り物よねぇ」

「分かる、分かる。私、前に掃除してたら『見てくれませんか?』って言われたわよ」

「やだっ!みたの?」

「見たわよ、それがさぁ聞いてよ」


その時の感想だとか、アレな汚れ具合だとか、2人で出てきたところにかち合ったとか、話は尽きない。

そんなに頻繁に目的外で使われるトイレってどうなの。

ちょっと歩けば客室なりなんなりあるだろうに。

わざわざトイレでってマニアックだよね。

王宮のトイレってお貴族様用だからか知らないけど、個室も広いからヤれない事も無いんだろうけどさ、臭いとこでヤらなくてもよくね?

まぁ、臭く無いけどね。毎日ピカピカに磨いてるし、消臭対策もやってるからね。


「それにしても、奥様と使用人ね。政務府の書記官の奥様かしら?」

「財務府の長官の奥様も来てましたよ。長官不能になったらしくて奥様が欲求不満って聞いたんですけど、本当のところどうなんですか」

「それガセよ。ガセ。お針子の若い子相手にしてるのよ。若い子に搾り取られて、奥様の分が無いって話よぉ」

「あらやだ、お盛んよねぇ。いずれ腹上死しちゃうんじゃない?」

「まぁ、奥さんも若い使用人を食い漁ってるらしいからおあいこでしょうよ」


おばちゃんたちの情報網、さすがです。

いやぁ、聞いてるだけでタメになるわぁ。

オヤツのサキイカを噛みながら拝聴する。

ガシガシと噛み締める度に味が出てくる。長く楽しめていいな、コレ。


「そう言えば、ベネディクト子爵に言い寄られてるって本当かい?アンナ」


ぶふおぉ!!!

ちょっ、はなっ!鼻っ!鼻にサキイカがちょっと入った!

メッチャ痛いっ!

ツン!って、ツン!ってする!


「ゲホっ。どこ情報ですか!?」

「内緒よ。で?どうなの?」


あー、出ない。鼻かんで出していい?いいよね。

ちょっと失礼。フン!フン!奥にあるのは分かるんだ。後は気合っ。おりゃ!


「あ、でた」


スッキリ!はー、爽快ですな。

ズビズビと鼻かんでたらおばちゃんから呆れられた。


「あんたもうちょっと若い女の子らしくしなさいな」

「大丈夫です。猫被るとこは被ってるんで」

「被り切れてない気もするけどねぇ。で?本当はどうなのさ」


新しいサキイカを差し出しながら聞いてくる。

これはちゃんと答えとかないと、私の名誉にかかわるのでちゃんと否定しておいた。


「あのクアニーロ伯爵夫人としけ込もうとしてたんで、趣味知ってんのかな?って確認したら知ってるって言うから客室案内したのに、後日ちゃんと言えって怒られたんですよ。理不尽だと思いません?」

「あら。子爵様ってマニアックなのかい?」

「いや、流石に逃げたっぽいですよ。案内した部屋は綺麗でしたから」

「まぁ、あの趣味に付き合える人は限られるよねぇ」

「ですよね〜。勇者かと思ったら腰抜けでした」

「そりゃ子爵様に悪いよ。ババァの×××を×××するなんて、若い子爵様にゃ気の毒さ」

「そういや、あのババァ×××まで始めたって話だよ」

「えー本当ですか?ヤダなぁ、そういうの家でやって欲しいですよね。掃除する身になってくれなきゃ」

「部屋掃除はまだマシさ。洗濯婦が嫌がるよ、まぁ大抵破棄だけどね」

「違いない」


みんなで爆笑。

話がコロコロ変わる上に尽きない。

ここで働くと要らん知識とか情報が手に入るよね。

楽しいけど、活用できる日ってくるのかなぁ。

貰ったサキイカをもぐもぐと噛みながら考える。

私まだ処女なんだけどなぁ。

濃いマニアック情報に長けた耳年増になっている自分が怖い。


恋人出来てもこの知識は活かしちゃいけない気がするが、恋人が出来る予感も予想もないのが悲しい。


とりあえずサキイカをもう1つ手に取り、おばちゃんたちの会話に聞き入った。



ついに伏せ字にしてしまいました。答え合わせはありません。(ご想像にお任せ ^_^ )

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