27.王宮侍女は本音を隠す
思いの外デート編が長くなりました。
3話お付き合いください。
本日はお日柄も良く、絶好のデート日和となりました。
ただの買い物の付き添いだけどねー。
付き添いと言えども、男性とお出かけなのですよ。しかも相手はルカリオさん。
イケメンとデートとか照れますな。
買い物の内容が女装関係だけど、気にしなーい。
だが、一つ問題がある。
何を着て行けばいいの?
自分の私服を見ながら悩むなんて初めてかもしれない。
だってね、デートですよ?
自分1人で行くぶらり買い物歩きとは訳が違う。女友達と行くしゃべくり買い物歩きとも違う。
デートですよ?
男の人とお出かけなんですよ?
父さんと行く家畜診察でも、兄と行く視察や買い出しとも訳が違う。
いや、分かってるよ?デートって建前のお買い物ってことぐらい。
でもテンション上がるでしょ。これ上がらなきゃ女じゃないよね。
普段着てる動きやすさ重視の服じゃちょっとダメだよね。数少ないお出かけ着から選ぶしかないんだけど、これが難しい。
実際はデートではないから余り気合いを入れると「え?なに気合い入れて来てんの?」とか思われたら恥ずかしいじゃない。
こう、気合いは入ってないけど、適度にお洒落な服ってないもんか。
いっそ、侍女服で行く?いや、それはドン引きだろう。私も嫌だ。
うーん、難しいなぁ。
結局、去年買った淡いグリーンのワンピースに同色のリボンが付いた帽子にした。
……虫食いとか汚れ付いてないよね。
色々とチェックしてたら時間ギリギリ。
浮かれてるなぁ。って我に返ってちょっと恥ずかしくなった。
待ち合わせは貴族街の広場にある噴水。
迎えに来てくれると言ってくれたんだけど、丁重にお断りした。
誰かに知られたら面倒くさいからね。
定期的に貴族街を往復している馬車に乗り込む。幸い、同乗者に知り合いはおらず、ほっとした。
ヤバいなぁ。緊張する。
待ち合わせ時間の10分前には着いたのに、そこにはもうルカリオさんがいた。
はやっ。
落ち着いたグレーの上下には差し色に深緑が入っていて、とてもお似合いです。
私、この人の横歩いても大丈夫?
回れ右して帰ろうか。いや、約束しといてそれは人としてダメだろう。
ためらってる間にルカリオさんに発見されてしまった。どう反応すれば良いのか迷っているうちに、彼が近づいてきたので慌てて礼を取る。
「申し訳ありません。お待たせしてしまいました」
「楽しみで早く着いたので気にしないで。さあ、行きましょうか」
そう言ってすっと腕を出された。
………………えっと、これは謂わゆるエスコート?この腕を取れとおっしゃる?
無理無理無理。
夜会でもないのに、その腕に手を添えろと!?
「あの、えっと、恋人でもないのに、これはちょっと難しいと言いますか…」
「今日はデートですから難しく考えないてください。さぁ、行きましょうか」
そう言うと、右手で私の右手を取り自分の左腕に添えてしまう。
そこから手を離すのも失礼なので促されるまま歩き始めた。
一連の流れがスマートで、慣れてるんだろうと推測される。某子爵の様な噂は聞かないので、ちゃんと恋愛してるんだろうな。
………相手が女性とは限らないってのが、なんとも言えないけどね。
なんか歩きづらいなぁと思っていたら、左手と左足が同時に出ていた。
どんだけ緊張してんだ。
気がついて一旦立ち止まった私の横でルカリオさんが肩を震わせて笑っていた。
くぅ、恥かいた。
出だしがアレだったものの、デート(笑)は順調に進んだ。
先ずは気になったお店でアクセサリーや小物を見た。
夏用だろう、涼しげな色ガラスを使った安価な物から宝石を使った高価な物まで置いていて、かなり楽しめた。
カウンターの横にガラスケースに入った豪華な首飾りを見たら、国王が王妃に贈った首飾りのレプリカだった。
店員さんの説明によれば、大きなピンクダイヤをイエローダイヤで囲い、小さなダイヤと珍しいピンクサファイアで彩った愛らしくも素晴らしい作品らしい。
もちろん店にあるのは色ガラスで作ったレプリカだが、これでもかなりのお値段がするそうだ。
「国王陛下の愛情の深さを感じさせられますね。さすが真実の愛で結ばれたお二人です」
しみじみと語る店員さんには悪いが、高価な贈り物で愛情の深さが測れるのか疑問でならない。お店的には宣伝にもなるしウハウハだった事だろう。
逆立ちしても贈られることがない妬みや嫉みと言ってしまえばそれまでだけど、これを贈った時はどちらにも愛人が出来るなんて予想もしてなかっただろうね。
国王夫妻はともかく、首飾りはとても素敵でした。ピンクが多いのがアレだけどね。見た目も可愛く作られてるし。
既婚女性に贈るには可愛すぎない?
自分の奥さんに贈るんだから、別にいいけどさ。
国王のセンスというか、願望が透けて見えるような…。そういや愛人も童顔だったわ。
ロリ……いやいや、不敬、不敬。ぷぷっ。
やだ、うちの国王って犯罪者みたいじゃん。キモっ。
ちなみに、このお店では見るだけで購入はしなかった。
ルカリオさんが気になった物があったのはあったんだけど、迷っている様だったので止めようと忠告しといた。
こういうのは直感だと思ってるので、迷う時は買わない方がいいと思うんだよね。
縁があれば手に入るよ。たぶんね。
次に訪れたソレイユ商会の化粧品売り場では楽しさに我を忘れそうになった。
おかげで緊張も吹き飛んだ。
夏も盛りだが、流行の先端をいくソレイユ商会では既に秋物が出ている。
赤色も緑色も黄色も深みがある落ち着いた色でどれも秋らしい。
「この秋の新色綺麗ですね」
「ああ、いい色だね」
「どれが好みですか?」
「コレとか、こっちもいいね」
他人から見れば彼女が彼氏にプレゼントを強請っている様にも見えるが、実際は彼氏(建前)が使う物を選んでます。
ルカリオさん曰く、秋にクリフォード侯爵主催で秘密のお茶会を開く予定らしい。
たぶんお声がかかるだろうと言うので、秋の新色を仕入れる事にしました。
つまり、ルカリオさんやおじさま方用である。残念ながら色気など皆無だ。
カウンターに飾られた宝石粉がすっごく気になって、店員さんから商品説明とかされたけど、悩む。購入したいけど悩む。
宝石粉って売り物にならない小さな宝石を更に細かくしたやつなの。口紅とかお化粧品に混ぜて使うとキラキラして綺麗なの。
でも高いんだよね。屑宝石だけど、細かく粉みたいにする技術ってなかなか無いみたいでさ、手の平にちょこんとなる様な大きさでも私の月収3ヶ月分は軽くいく。
数も少ないからより貴重なんだろうけどさ、高いんだよぉ。残念だけど、今回は諦める。
道具買い換えるし新色買うから予算オーバーだもん。
払ってくれるというルカリオさんを押しきり、お会計を済ませて店を出る。
ルカリオさん専用なら遠慮なく払ってもらうが、生憎と他の人にも使う仕事用なのでそこは申し訳ないが引いてもらった。
それに支度金込みで副業代を頂いてるので、仕事用を奢られると罪悪感あるんだよね。
うん。ここは譲れません。
その後は他の店を覗きつつ、今はお昼ご飯を食べにカフェに来てます。
最近評判のお店らしい。
小洒落た店とか行かないから知らなかったよ。
「よく利用されるのですか?」
「カフェは良く利用しますが、ここは初めてですよ。噂に聞いていたので一度来てみたかったんです」
ちょっと照れながら話すルカリオさんをうっかり可愛いと思ってしまった。
買い物の成果や、昼からの予定を楽しく話していたら、注文した食事が運ばれてきた。
ルカリオさんに勧められるままに頼んだランチプレート。
具沢山のスープ、バゲットに野菜のパテ、彩り野菜のサラダに添えられたチキンの香草焼き。
見た目も華やか。
味も美味しかった。
食後に出てきたパウンドケーキも紅茶も美味しかった。
付き合ってくれたお礼に奢ってくれると言うので、これは遠慮なくご馳走になった。
だから、余計に、言えない。
ガッツリ肉が食べたかった。
なんて。
言えない。かろうじてある乙女心が口を塞ぐ。
サラダの添え物のようなチキンでは物足りない。
せめて牛肉…いや豚でもいい。焼き立てジューシーな塊が食べたい。
なんなら、下町の出店にある串焼きを食べに行きたいなんて言えやしない。
デートって気を使うものなんだね。知らなかった。
そうか。これが乙女心ってやつなんだね。
初?デートに浮かれるアンナがちょこっと可愛くなりました。でも恋愛ジャンルではないんだなぁ。




