表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/92

13.王宮侍女は勝負に負ける


備品を取りに倉庫に来た私は『使用中』のプレートを前にため息を吐いた。

中から漏れ聞こえる音と声から察するにヤッてるな。

確実にヤッてんだろ。

誰だ、鍵を貸したやつは!?それとも鍵を使える身内か!?

そういう意味で『使用中』のプレートを付けたワケじゃないんだよ。

まさか身内から裏切り者が出るなんて、ちょっとショックだわ。


なんだろう、この脱力感。

別にどこで盛ろうが知った事じゃないんだよ。ただし!私のいないとこでヤれ!

残念だったな、使用中のお二人さん。今の私の機嫌はすこぶる悪い。

傷心な私の前でイチャつくお前らの運を恨むがいい。

ドアノブをむんずと掴み、わざとガチャガチャと回す。


「あれ?開かないなぁ?」


続いてドアを連打ノック。ちょっと力が入るのはご愛嬌だ。


「すみません。誰か入ってますか?」


さぁ、どうするお二人さん?

機嫌よくリズミカルにノックしてみるが反応は無い。

息を潜めてやり過ごすつもりかな?


「おっかしいなぁ。使用中なのに、誰もいないなんて。でも、鍵無かったしなぁ。もう一度聞いてこなきゃ」


わざと足音をたてて側を離れる。

階段を上がって耳を澄ましていれば、しばらくしてから小さくドアが開く音が聞こえてきた。

心の中でゆっくり5つ数えて、階段を降りる。もちろん足音は極力たてない。

階段を中ほどまで降りると、三十代らしき男が階段を上がってくるのが見えた。

文官だな。服装から財務省とみた。

何食わぬ顔をしてすれ違う。

その後ろを侍女服の女が赤い顔をして続く。

やっぱり身内か。


「あ、すみません」


声をかけると女はビクッと肩を震わせた。

面白いぐらいに反応してると、バレるよ?


「な、なんでしょう?」

「もしかして倉庫の鍵をお持ちではありませんか?さっきすれ違った方に聞かれたのですが、私も探していて…」


もちろん、さっきとは声色を変えている。ドア越しだからバレないとは思うけど念のため、ね。


「え、あ、は、はい。持ってます」

「ああ、良かった。お借りしても良いですか?終わったらちゃんと戻しておきますので」

「え、ええ。よろしくお願いしますね」


ポケットを探る彼女にそっと手を伸ばす。

面白いぐらいにビクつく彼女の襟元のリボンを外す。にっこりと笑いかける。

大丈夫。取って食いやしないよ。


「リボンが乱れてますよ。…あら?ボタンも一つ外れているわ」

「あっ!ありがとう!後は自分でやるわ」

「そう?あら、スカートに埃が付いているわよ?やだ、倉庫の中も掃除しなきゃね」

「えっ、ええ、そうね。本当に、埃っぽくて…」


慌てる彼女から倉庫の鍵を受け取る最中、20歳前後の男が彼女の後ろを追い抜いて階段を上がっていくのが見えた。

そちらに気を取られていると、身嗜みを整えた彼女がそそくさと立ち去る。

私は、階段を上がって行く彼女の背中を茫然と見送った。


さ、3人、だと……。


倉庫の鍵を開けると、あの独特な臭いと慌てて片付けたような跡。

ーーーーー ギルティ。

流石に液体は拭いたようだが、匂いは難しかったんだろうなぁ。残ってるし、バレバレだ。

倉庫内に窓は無いので、扉を開けて換気する。


ゴソゴソと頼まれたブラシの箱を手に、なんとも言えないモヤッと感。

なんだろう。この、試合に勝って勝負に負けた様なこの気持ち。


彼女にあって自分に無いもの。

考えて、ふと視線が下に向く。


「………………」


いやいや、まだそうと決まったわけじゃない。

色んな人がいるんだ、あるよりない方が好きって人もいるに違いない。

そうだ。そうに決まっている。

よし、未来にかけよう。

私もまだ成長するかもしれないし。



そんな希望を休憩室のお姉さまが打ち砕く。


「でも、まぁ、男の人の大半は巨乳好きよね〜」


えぇぇぇぇ。やっぱりそうなのか。

ガックリと落とした肩をおばちゃんがポンと叩く。


「一概には言えないよ?大きなお尻が好きって人もいれば、ささやかな胸が好きって人もいるからね」


おばちゃん、女神か。

そうだよね、希望はあるよね。


「でも無いよりはある方がいいでしょ?」

「それは一部の男の妄言だよ。男だって“女は

大きい方が好き”なんて思い込んでるじゃないか」

「あ、それ聞きますよね」

「実際は大きさなんて要らないんだよ。痛いし、苦しいし、そんなデカいのなんてよっぽど緩くなきゃ入らないだろう?」

「そうそう。大きさよりはテクじゃない?ろくに手もかけずに入れようとする馬鹿とか折ってやりたくなりますよね」

「分かるー!大きさ自慢する奴ほどそうでもないの。そんな事より前後を大事にしろっての」

「ええ〜。でも、でも、ある程度の大きさは要りますよ?入っても分かんないと演技しようもないじゃないですか」

「何、あんた。そんな粗末な奴と付き合ってたの!?」

「直前で発覚したんですよ。しかも早いし、もう最低でしたぁ」


ヒートアップしていくおばちゃん方とお姉さま方。

ごめん。聞くだけで精一杯です。

皆さん経験豊富だなぁと感心しつつ耳を傾ける。

後学の為の勉強と楽しく拝聴する。


それより、胸の話はどこに行った……。


前回の反動か下ネタ多め。

休憩室の談話が大好きですが、会話ばかりになるのが難点。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おばちゃんたちの井戸端会議好き。 [気になる点] 身内で裏切った侍女許すまじ、グゴゴゴゴ。 [一言] まぁ、タートルネックをアゴまで引いた男性に象徴されるものの治療の広告に、治さないとモテ…
2020/03/21 16:41 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ