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1. 王宮侍女は掃除する



一時期、この国では婚約破棄が流行りました。

流行るようなものではないんですけどね。

王立学園に通っていた国王が真実の愛に酔いしれ、公衆の面前で婚約破棄を叫んだのがきっかけだと聞いております。

それに感化された陛下のお友達も次々に婚約破棄を高らかに宣言し、真実の愛へ身を捧げたとか。


       真実の愛。


ときめきワードなんでしょうけど、なぜか薄っぺらく感じちゃうのは私だけですか?

言った者勝ちみたいに婚約破棄して真実の愛を勝ち取る人が多かったみたいですね。

その後離婚したとか浮気したとかちらほらあったみたいですよ。

真実の愛、脆すぎ。ぷぷっ。


まぁ、当人たちはいいとして、困ったのが親達。

婚約破棄すれば違約金が発生したり、醜聞を気にして嫡男を挿げ替えたり、と大忙しだったんだって。

そりゃそうだよね。

この時、いろんな所に影響が出た。市場も混乱した。物価も上がったりして大変だった。

主にうちの家計が。

そんな事があったせいか、今は政略結婚は下火。親達も結婚相手は自分で探せとばかりに知らん顔。


そうなると困るのが私みたいな、嫁に行くしかない立場の娘。

これで美人だとか器量よしだとか一芸に秀でてればお相手なんてすぐ見つかるんでしょうけど、生憎と平凡なんですよ私。

自慢にもならないけどね。


家はそこそこな男爵家。

そこそこってのがポイントね。そこそこだから決定打に欠けるのよ。貧乏ってワケじゃないけど、裕福でもない。歴史が長いってワケでもない。

下級貴族でございましてよ、おほほほほ。

嫡男もスペアの弟もいる。器量の良かった姉が伯爵家に嫁いだ時に持参金を頑張ったせいか、私の分はなかなか難しい。


そんな平凡な私に縁談も告白もあるはずはなく、いいなぁと思った人はあっという間に肉食女子や草食を偽装する肉食女子に持っていかれ続けてます。

もうさ、職業婦人に、なろうかなぁって思ったんだけど、どんな仕事なら出来んのさ?と自問自答の日々。


その結果。王宮侍女になりました。

下っ端だけどね。

最低限のマナーと常識があればなんとかなる。

空気読むのは上手いよ、下級貴族だからね。

まぁ、もしかしたらイケメンとワンチャンあるかな?と思った事もある。そりゃあるっしょ?ここでありません。って言うほど枯れてないつもりよ。

騎士とかカッコいいし、文官さんもキリッとした方多いもんね。

そんな人達はもれなくお手つきだけどね。

王宮こそ肉食女子の園だったよ。

まぁ、人気物件と交流出来そうな仕事はサッサっと掻っ攫われて行くので、出会いなんてないのが現状。

ガツガツしてないと出会いなんてないんだよ。

水面下の戦いがマジで怖いよ。


怖いのは若い子だけじゃない。おばちゃんこそ真に恐ろしいものだと知った。

笑顔で毒を吐き、他人のお家の内情を物語る、その情報力は侮れない。

私の仕事仲間のほぼ半数以上がおばちゃんだから立ち位置は大事。派閥に入る事なく、弾かれる事なく、程々の位置をキープ。


そんなわけで、私に与えられた仕事は主に掃除です。

掃除嫌いじゃないけどね。家でもやってたし。

むしろ家事の中ではトップに入るぐらい好きな方です。目に見える成果っていいよね。やりがいあるわー。

人目に付いちゃいけない仕事なんで、益々出会いから遠ざかってます。

ていうか、侍女として入ったのに、なんで掃除してんだろう。これってメイドの仕事じゃないの?

まぁいいか。お給料はちゃんと出てるし1人部屋ももらえている。

老後用にガッチリ蓄えますか。

しかし、人目につかない仕事って言うのはいくつか難点もあるんですよ。


その一つがこれ。

庭の東屋の床に飛び散った愛の残骸。

良さげに言ってみたけど、ぶっちゃけ情事の跡です。

外でやるとか、勇者か。

とか、くそどうでもいい感想が浮かぶ。

お盛んだねぇ。ヤルだけやってる方はいいけどさ、片付けする身になろうよ。臭いんだよ!

東屋ならまだ匂いはマシだ。

室内はキツい。

アレな匂いと女性の香水の臭いがミックスされてんの。真っ先に息を止めて窓を全開する事から始めます。

頼まれて普段使用してないはずの客室に掃除に行くと8割の確率でやった跡がある。

普通の情事ならいいんだけどさ、たまに血とか汚物が飛び散ってる時がある。

………………何をした。

ベッドだけならシーツの交換で済むけど、たまに窓や扉にまで飛び散った跡がある。

何をどうしたらこんな惨状になるのか、本当に不思議だ。


ベッドの下や床に落ちている物も酷い。

下着ならまだいい。

拘束具に縄までは許そう。

大きめのよだれ掛けとおしゃぶりを見つけた時は時が止まった。

本当に何してたんだ。

深く考えちゃダメだね。とりあえず洗って保管する。

落とし物だからね。受け取りに来る人は滅多にいない。

裏を返せば、数人はいたんだよ勇者が。

思わずガン見したわ。優しげな彼は爽やかに微笑んで鞭と蝋燭を受け取って帰って行った。確か、彼は近衛騎士だった気がする。

鞭と蝋燭の使用方法は考えちゃいけない。副隊長と怪しい噂があったとか考えちゃいけない。


ちなみに保管期限は2年です。それ以降は処分させて頂きます。


あれ。私の職場って王宮だったよね。

なんか闇ばかり見ている気がするよ。

そうか、お城は魔窟だってこういう意味か。



さて。そんな日々を送る平々凡々な私です。

あ、名乗って無かったわ。

アンナです。アンナ・ロットマンです。

え?モブっぽい名前?

ほっとけ。

不定期更新として、だらだら続けたいと思ってます。よろしくお願いします。

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