依頼
アルカディア王国犯罪者収容大監獄
ここは手が付けられない凶悪犯罪者を収監する監獄である。脱獄不可能の要塞となっているこの監獄は攻めいることも帰ることも出来ない難攻不落の監獄となっている。
最下層大監獄【死人】
この最下層では光も音も届かない閉ざされた空間。名を轟かせた重要犯罪者を収監する何も娯楽のない空間。そのさらに奥に収容されているヒルド・エルティーナという男は目を隠され、口を塞がれている。この男の暇潰しは筋トレである。魔力を封じるこの檻では脱獄することは不可能である。彼は300年間の間このような生活を送っている。食事は3日に一度で手錠足枷をされた状態で栄養を注射されるのみ。
そんな彼に一人の面会者が現れる。
「囚人番号105551……面会だ。出ろ」
ヒルドはその言葉を聞くと筋トレを止める。手錠され、魔導監守がヒルドのアイマスクを外して結界魔法で囲いながら面会施設に赴いた。魔導回廊を上がり地上へと立つ。彼にとって300年ぶりの日の光を浴びた。そんな感動を他所に面会施設へと向かう。
施設へと入ると、目の前には一人の老人がいた。ヒルドは無言のままだが老人が口を開いた。
「お主がヒルド・エルティーナであっておるか?わしはマルス・ハイト」
「そうだが何のようだ。こんな俺に……」
「お主に頼みたい依頼があるんじゃよ」
「それはギルドに頼みな。こんな犯罪者に何ができる。それだけなら帰る。」
「依頼を達成できたら自由のみになれるとしたら?」
ヒルドは立ち上がり、扉へと歩き出す。マルスの言葉で立ち止まる。
「なんだと?」
「受けてくれるか?」
「で?その依頼って何?」
ヒルドは方向転換してまた椅子に座る。ヒルドはその依頼について聞き出す。
「簡単なことじゃチームを組んで盗賊を倒して欲しいことじゃ」
ヒルドは一瞬怪しんだが、外に出る機会と思い承諾した。肝心なことを聞くのを忘れているのを思い出した。
「チームっていうけどどこから呼ぶの?」
チームを組むと言っても誰と組むのか、どこのギルドだがも分からないままは嫌であった。
「お主も聞いたことがあるギルド夜桜じゃよ」
「!!」
「かつてお主が壊滅させようとしたギルドじゃよ。なぁ元SSSランク第3位。コードネーム【複写狼】ヒルド・エルティーナ」
「俺を知っている……誰だてめぇは」
「夜桜ギルドマスターじゃよ。っていっても知っているものは儂だけじゃな」
ヒルド・エルティーナは闇ギルド連合【天獄の墓標】に所属していた連合長であり、元最強の称号SSSランク第3位保持者【複写狼】と呼ばれた人物であった。
さらにヒルドの知っているマスターとは違うため交代したと思った。
だが彼にとってうまい話だが信じられない。が引き受けるしかなかった。かなり迷っていたが承諾してしまった。その老人は嬉しそうに笑い、立ち去っていた。そして明後日の仮出所が認められた。