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こうして、君たち月宮中学二年B組の三人組は、気が付いたら、白く輝く壁に囲まれた、不思議な空間に立っていた。
そこには、荘厳な衣装を身にまといつつ、なぜかその顔をうまく認識できない、不思議な人物が座っている。その人物は、早口に、長々と説明した。
それは、要約すると、以下のような内容だった。
『私は神のようなもの。君たちはこれから異世界へ転生する。拒否権はない。だが、七つの力から、二つの力を選んで持っていけ。転生した世界で何をするべきか、それは、おのずと分かることだろう。』
その人物が述べると、君たちの前に円卓が現れ、そこには七つの宝玉が並べられている。
どうする?
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上記は、適当に書いたサンプルシナリオのイメージの一部です。
転生物のお約束の流れについて、プレイする場合の流れを考えてみます。
1.キャラ作成(最初にもらうスキルやペナルティを設定)
なろうっぽい体験をTRPGにするとしたら、一段階のメタを挟むのがいいと思います。
つまり、プレイヤー自体に現代人のアバターを設定して、その現代人が転生なり転移なりゲームの世界に入ったり、という扱いです。
上記のサンプルで言えば、中学二年生のキャラをアバターとして作るところから、始めます。
ここは、名前と性格くらいでいいでしょう。どうせ変わるので!
現代の中学生であるそのアバターキャラにとっては、転生先の世界観も、キャラの能力やスキルも、未知のものという設定になります(これは、普通のTRPGには無い要素になると思います)。
持っているスキルや呪文そのものに未知の要素を設定すれば、それについて学んだり考察したりすること自体も、プレイの一部にできます。奇妙な冒険的な感じで。
あと、キャラ作成時にスキルやパラメータを選べる展開にする場合、スキルなどの詳細な仕様が分かるようにしてしまうと、効率や最適解にこだわるタイプのプレイヤーは、選択に時間がかかってしまいます。
こだわっているその人は、悩んでいる最中も楽しんでいるので良いのですが、ほかのプレイヤーとそのテンポが大きくずれると、あまりよろしくありません。
選べるようにするならば、皆で分析したり相談しながら一人ずつ設定する、制限時間がある、選ぶ優先権は早い者順とするなど、GMと特定のプレイヤーだけが長くしゃべっている状況にならないような仕組みにしておきましょう。
神様にもらうパターンのほかには、赤ちゃんで生まれて、でも魂は転生者というものもあります。
この場合、生まれてから旅立つまで、どのような修練を自分に課すかによって、能力やスキルの身に付き方が変わってくるという説明になり、キャラ作成の過程自体をプレイの一部にしてもいいでしょう。
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君たちは、再び意識を失った。
次に目覚めた時、驚くべきことに、君たちは、自分が歩くことさえできない赤ちゃんの体であることに気が付いた。
しかも、まるでゲームのように、ステータス・ウインドウを呼び出すことができるのだった。
では、転生先の肉体の初期ステータスを決定する。
次に、幼少期を過ごすにあたって、転生者である君たちは、当然単なる幼児とは異なる意識や知識を持っている。
効率よく訓練を行ったり、知識を習得することができるはずだが、どんな分野に特に注力したか、パラメーターの割り振りを行ってもらう。
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ちなみに、転生の段階で、ちょっとひねった設定を盛り込むことも考えられます。
「役割」を設定するのです。
「勇者」「上流階級」「モブ市民」「辺境村人」「底辺」などの出自や、「英雄」「ダメ貴族だが財力無双」「無力とみせかけて無敵」「不幸の呪い」などの立ち位置を、最初から差が付く形で決めてしまうのです。
通常のTRPGにも、事前に役割が決まったキャラでプレイする、プレロールドキャラクターという仕組みがあります。市販のシナリオなどでもよく採用されていますが、その役割を大きく外れようとすると、シナリオ崩壊につながるため、通常は受け入れられません。
が、転生ものの場合、「君が転生したこの身体は、勇者の子孫であり、しかも勉学や魔法でも優秀な成績を収めている。国の英雄となることを期待されているようだが、どうする?」と、選択権がある方がむしろ自然です。
また、元の世界の仲間が、異世界で身分を超えてパーティーを組み、外野からワイワイ言われながら冒険の旅をする、というシチュエーションは、通常のTRPGでは割と珍しいパターンです。
こういったパターンのシナリオを作っていく場合、強さに差があったり、目指す目標がずれていたりした方が、アドリブ的なネタが生じやすいと言えます。
例えば、冒険者をやっていても、金のない駆け出し冒険者と裕福な貴族の子弟が一緒にパーティーを組んでいるという状況は、依頼に成功するかどうか、といった視点からは脱線しやすくなり、茶番やギャグマンガ的なプレイに向いていると思われます。