夢と希望溢れる、二つの何か
時系列・・・「涙の魔法」完結後のとある土曜日。
菜々と豊島が付き合うようになってからも、飲み会は仲良く三人で。いつものようにお気楽平穏トーク、と思いきや、豊島がトイレに立っている間に何やら不穏な雰囲気になった様子。
菜「もーっ!カナちゃんさんのわからず屋!」
茂「いくらなっちゃんといえど、こればっかりは俺も譲れねーよ」
豊「……何を痴話喧嘩してんだ。人が便所行ってる間に」
茂「誤解を招く言い方すんなし」
菜「そうですよ。真剣に議論しあってたんですから」
豊「議題は」
茂「貧乳ロリと巨乳ロリのどちらが王道か」
豊「んなもんクソ真剣に議論してんじゃねえ!」
菜「だから、ロリの特徴の一部を奪う要素を入れちゃうことで、ロリとしての品格が損なわれるってあたしは言いたいんですってば」
茂「わかってねーな。低身長や童顔でロリ要素を保ちつつ、あえて不釣り合いな要素を加えることで生まれるギャップ萌えは、ロリっ子であることを前提としなければ生まれねーんだぞ?」
菜「ギャップ萌えなんて必要ないです」
茂「馬鹿言え。めちゃくちゃ需要あるぞ」
菜「とにかく、ロリはロリらしくないとロリじゃない!」
豊「あんまりロリロリ言わないで菜々ちゃん。ゲシュタルト崩壊してきたわ」
茂「そう言う裕太はどっち派なんだよ」
菜「そうですよ。真のロリコンさんが支持した方が王道ということで、この話に決着をつけましょう」
豊「俺はロリコンじゃありません」
茂「今世紀最大の嘘乙」
菜「もはや偽証罪レベル」
豊「誰一人俺の無実を信じてくれない…」
菜「豊島さんって胸フェチなんですよね?だとするとやっぱり、巨乳ロリ派ですか?」
豊「いや、どっちかってーと体格に似合うサイズで設定されたキャラの方が、視覚的違和感がなくて受け入れやすい」
菜「さあっすがロリコン先生」
茂「なんだよ。お前なら俺に味方してくれると思ったのに」
豊「味方する気はないが、シゲの意見も一理ある。キャラの性格によってそこだけが自慢できる要素だったり、逆にコンプレックスだったりして、個性を引き立たせる意味ではアリ」
茂「ロリコン伝道師のお言葉は説得力あるわ」
豊「言い回し変えられても結局ロリコン扱いなんだよな…」
菜「つまり豊島さんとしては、巨乳だろうと貧乳だろうとロリは等しくロリであると」
茂「ロリコンにとっては胸の格差なんて大した問題じゃねーってことな」
豊「さすがにもうツッコむ気にもなれねーわ…」
茂「じゃあなっちゃんの場合はどうなのよ」
菜「んえ?」
茂「裕太的に現状維持で満足なのか、夢と希望を詰めてボリュームアップして欲しいなーって本当は密かに期待してんのか」
豊「んなこと本人の前で言えるか!」
菜「豊島さん」
豊「は、はい」
菜「返答次第では、どうなるかわかってますよね?」
茂「こわっ」
豊「…誰のせいでこうなったと思ってんだ」
菜「さあ!豊島さん的にあたしは巨乳であって欲しいのか貧乳であって欲しいのか、どっちなんですか!?」
豊「ぐっ…!」
茂「……もしかしなくても俺、お前らの初修羅場の原因作った?」
豊「……責任取れよ馬鹿シゲ」
菜「さあさあさあ!」
豊「待て、一旦落ち着こうか菜々ちゃん。なっ?」
菜「落ち着いてられっかですわ!」
茂「血が上りすぎてキャラぶっ壊れてんぞ」
豊「わかった、正直に言おう。菜々ちゃんにどっち寄りであって欲しいとか、俺は一切気にしたことがない」
菜「ふーん…?」
茂「要は胸に関してなっちゃんに期待はしてないと」
豊「わざわざ癇に障る言い方すんのやめろ!」
茂「ぼっちの性分だ許せ。リア充に亀裂入れたくなる衝動が無意識に湧くのは、ちょっと前のお前なら理解できんだろ」
豊「……不本意だが、わかる」
茂「まあ気にしなくていいってことだ、なっちゃん。裕太のなっちゃん愛は、ちっぱいだろうがデカパイだろうが揺るぎねーってこった」
菜「でも、大きいに越したことはないって思ってはいますよね?」
豊「…………」
茂「そこで答えに詰まるな馬鹿正直者が。せっかくフォローしてやったのに」
菜「結局ただの胸フェチだった豊島さんはさておくことにしましょう」
豊「さておかれた…」
菜「ちなみにカナちゃんさんは、ちっぱいとデカパイのどっちのあたしがいいですか?」
茂「そりゃあそのどっちかって言われたら、一択しかねーだろ」
菜「夢と希望ですか?」
茂「いっぱい詰めて大きくなるんだぞ、なっちゃん」
菜「カナちゃんさんなんて大っ嫌いです!!」
茂「なーっ!冗談だってなっちゃん!」
豊「正直者が馬鹿を見るってのは、まさにこのことだ。反省しろ」
オタク気質な三人は、持論を主張し合って徹底的に討論するのが大好きです。相手を論破してドヤりたいんです。どれだけ仲がよくても、自分と相手の主張に食い違いがあることに気付いた時は、時々こんな風に白熱したやりとりを交わすこともあります。
個人的に気に入っている部分は、菜々が茂松に対して「大っ嫌いです!!」とさらっと言えたところです。おふざけトーク中に、その場のノリで好きとか嫌いとかは言えるものの、豊島と付き合うまでの菜々はその言葉を軽々しく使うことが出来ませんでした。今では豊島だろうと茂松だろうと、好きでも嫌いでも堂々と伝えられるようになった、彼女のわずかな成長を窺わせる台詞なのです。
今回のネタを提供してくれた、作中に登場させた奈津美のモデルにさせていただいた友人に感謝です。書いてて物凄く楽しかったです。ちなみにその友人は茂松ファンであり、彼をどうにか幸せにしてやってくれと頼み込まれてます。もう少し我慢してもらうことになりますが、いずれ幸せにさせますので。




