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棒状のナニかでゲーム的なアレ

時系列・・・「涙の魔法」完結後のとある土曜日。


いつものカラオケ満喫中。小腹を満たすフードメニューに『よくばりお菓子セット』なるものを発見して、注文してみました。大きなお皿に、チョコやらスナックやら、たっぷり盛られてるみたいです。

菜々「わーいっ、おやつターイム」

豊島「スナックやらチョコ菓子やら、すげー量だなこれ」

茂松「見た目ボリュームあるように見せかけといて、店で買えば半額以下で済みそうなぼったくりメニューだろうけどな」

豊「まあ、カラオケ屋のフードメニューなんてそんなもんだろ」

菜「いっただっきまーすっ」

茂「おーおー。がっつくねえ、さすがスイーツ女子」

菜「あたひ、すいーふやないれふ」

豊「咥えながら喋らないの」

茂「気付いてねーだろうけど、言葉のチョイス際どいぞ裕太」

豊「あ?」

菜「そうだ、ゲームやりません?」

茂「ゲームって、まさか」

菜「そうです。合コンとかでは定番の、アレです」

茂「裕太。こういう時こそ保護者らしくツッコんでやるべきだろ」

豊「は?えーと……食べ物で遊ぶんじゃない?」

茂「保護者としては模範解答だがツッコミどころが全然ちげーよ!」

菜「まあまあ。では手始めにあたしから……はいっ、とよひまひゃん」

豊「ちょ、待っ、把握した!今やっと把握した!そういうゲームはナシ!」

菜「うぇー…」

茂「棒状の菓子の両端をそれぞれ咥えて、手を使わずに食ってく。菓子を折っちまうか口を離したら負けっていう、ただのチキンレースだ。簡単だろ」

豊「ゲームのルールを知らねーからナシって言ってんじゃねーんだよ!」

菜「じゃあ、カナひゃんひゃん、やりまひゅ?」

茂「咥えっぱで呼ばれるとすげー気が抜けんだけど、んなことより…」

豊「……」

茂「……なっちゃん。自分だけこっ恥ずかしい思いすんの回避した誰かさんが、すげー嫌そうな目で見てくんだけど」

菜「あたひ相手に勝てる自信(じひん)ないんでふか?」

茂「あー……相変わらず絶妙に煽ってきやがる」

豊「……やってみれば。勝負は大体、目に見えてる」

茂「うわ、くっそ、余計引き下がりずれー言い方しやがって」

菜「ほらほら、やりまひょー」

茂「ったく。おふざけで事故っても知らねーぞ…」

豊「はい……スタート」

菜「んっ」

茂「……ん」

菜「……」

茂「……」

豊「……」

菜「ん、ん、ん、ん」

茂「ぐっ、ぶっは!ちょっ、容赦なさすぎだろなっちゃん!」

菜「わーい、よゆーの大勝利ぃ!」

豊「どんだけ負けず嫌いだろうが、童貞のシゲがこの手のゲームで勝てるわけねーからな」

菜「おー?そういう豊島さんは、彼女持ちだからって童貞気質からちゃんと卒業できてるんですかねえ?」

茂「いやー、こいつの童貞気質は筋金入りだから永久に無理だわ」

豊「……どんだけ煽ってこようが、俺はやらねーぞ」

菜「えー、つまんなーい。豊島さんに相手してもらえないなんて、萎えるー」

茂「なっちゃんの煽りテクの適材適所ぶりがえげつねー…」

豊「あー……やりゃいいんだろ、やりゃ」

菜「やったあー。じゃあ……ふぁいっ」

豊「ん」

茂「ちゃんと咥えたな?じゃあ、よーいスタート」

菜「んじぃー…」

豊「んぐ…」

茂「裕太。この場合、目を逸らすのもある意味負けだぞ」

豊「んなルールあるかよ…」

菜「……」

豊「……」

茂「……膠着状態だな。思い切って攻めてみろ、童貞裕太」

豊「うるへー外野」

菜「んぇいっ!」

豊「んがっ!?」

茂「あ、折れた」

菜「いえーいっ!らっくしょー!」

豊「はいはい、降参降参」

茂「冷静ぶっても、顔真っ赤だから意味ねーぞ」

豊「……うるせっつんだよ」

菜「さてさて、お次はいよいよ」

豊「待った。次なんてないぞ」

菜「えー。豊島さんとカナちゃんさんの二位決定戦が」

茂「ぜってーやらねーからな!」

豊「ほんっと勘弁してくれマジで!」

菜「仕方ありませんね。じゃあ罰ゲームは別のヤツにしましょう」

茂「罰ゲームの拒否権はねーのな…」

豊「このゲーム以外なら何だっていいから、先に一服だけさせてくれ…」

菜「いいですよ。豊島さんの頑張りに免じて、点火サービスしてあげます」

豊「えっ、ああ、ありがと」

茂「あー、キャバクラなんかでよく見る光景」

菜「どうです?あたしのライターテク」

茂「キャバなんて接待でしか行かねーし、善し悪しなんてわかんねーよ。それよか、俺にも火ぃくれ」

菜「カナちゃんさんはダメでーす」

茂「ああ?この期に及んでぼっち差別かよ」

菜「火種ならほら、豊島さんの煙草」

豊「え」

茂「おい、まさか…」

菜「そうでーっす!罰ゲームは、シガレットキッスぅー!」

豊「何それ」

茂「この状況下で勘の鈍さを遺憾なく発揮できるお前に、改めて尊敬せざるを得ねーわ」

豊「え、だって、要は煙草から火ぃ渡すだけだろ?ライターがうまく点かない時なんかに、よくやる…」

菜「よくやる」

豊「あ、都合のいいとこだけ言葉狩りされたのは、なんとなく察した」

茂「お前が想像してるやり方と、なっちゃんがやらそうとしてるのは全然違うからな。俺らのやり方じゃ…」

菜「俺らのヤり方」

茂「話がろくに進まなくなるから、腐女子の言葉狩りやめろし」

菜「自重しまーす」

茂「俺らのやり方じゃ、火をもらう奴が火種になる煙草ごと借りて、先端くっつけて火ぃもらうだろ?」

豊「それが普通だろ」

茂「なっちゃんが想定してる普通じゃねーやり方ってのは、それぞれが煙草を咥えたままで先端くっつけて、火を渡すってことだ」

豊「……あー」

茂「要するにだ……シガレットキスってのは、さっきやったゲームと大して絵面の変わらねーやり方で煙草に火ぃつけさせる、腐女子好みのシチュだ」

菜「そのとーりっ」

豊「勘弁してください」

菜「えー!精一杯の妥協策なんですよ!?これがダメなら、別のにしちゃいますよ!?」

豊「別のって」

菜「じゃがり」

豊「わかった。煙草でいいです」

茂「まんまと策に乗せられやがって…」

豊「仕方ねーよ。これ以上ごねたって、余計に状況が悪くなるばかりだ。諦めろ」

菜「そうですよ。ほら、ぼさっとしてたら豊島さんの煙草、どんどん短くなっちゃいますよ」

茂「わーったよ、しゃーねーなあ。おい裕太、灰落とせ。点けづれーだろ」

豊「へいへい…」

菜「シャッターチャンスぅー」

茂「撮んなっつの」

豊「ほら、さっさと済ませてくれ」

菜「あくしろよっ」

豊「煽り禁止」

茂「おい喋んな裕太。固定してねーと点けれねー」

豊「ん」

菜「おー……おおおー!」

茂「……ほれ。これで満足か、腐女子なっちゃん」

菜「ふにゃあー!想像以上によかったですうー!」

豊「はあ……昔はここまで、誰かが恥かく姿に喜んだりするような、そんな子じゃないと思ってたのにな」

菜「あたしがこんな風になっちゃったのは、誰のおかげです?」

豊「俺のせいって言わせたいのか知らないけど、絶対に違います」

茂「お前の監督不行き届きも少なからず関わってるだろ」

豊「偏見が凄まじい」

菜「はあー、いいモノ見させてもらったし、お菓子おいしいし、大満足ですね」

茂「好きなだけ食ってていいから、腹満たして少しおとなしくしててくれ。こっちは色々と疲れた」

菜「言われなくても、うまうましてまーす。……おっ」

豊「ん、どした?」

菜「新たなゲームに最適なベストアイテムはっけーん!」

茂「嫌な予感しかしない」

菜「ほらこの、ソフトキャンディをですね」

豊「アウトだ!」

茂「懐かしのCMネタ引っ張ってくんなし!」

菜「ぷー!」

実在の商品名が含まれるので伏せた描写を徹底しましたが、三人が何のゲームをしていたのかおわかりでしたでしょうか。その名を冠した記念日として定着した11/11によく話題に上る、あのゲームでございます。


それこそ本来は11/11に投稿したかったネタですが、リアルが多忙すぎてかなり出遅れました。記念日にちなんだ投稿が間に合わなかったので、せっかくだから11/22の『いい夫婦の日』にちなんでおきました。菜々と豊島が夫婦になる予定は今のところございませんが、もうお前ら結婚しちゃえよ、と言いたくなるようなにやにやするお話を書きたかったので、この日を選んだのです。もう1日ずらして『いい兄さんの日』の投稿でもよかったですけどね。二人のいいお兄さんに遊んでもらう日、というより、好き放題に弄んだ日、が正しいでしょうけれど。

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