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定番デートも三人で

時系列・・・第三章の終わりから、第四章6以前までのとある土曜日。

つまり三人が恋人同士になってからのお話。

 ――たまには、映画館デート。




菜々「映画館なんて久しぶりですよ。すっごい楽しみー」


茂松「俺も何十年ぶりだろうなー」


豊島「何十年ってこたねーだろ。何年か前に俺と来たろうが」


茂「あれ、そうだっけ」


豊「忘れたのかよ。ほら、ロボットものアニメの劇場リメイク作」


茂「あーあー!三部作全部お前と見に来たんだっけ」


菜「四部作目で完結でしたよねあのアニメ。いつ公開されるんだろ」


豊「わからん」


茂「俺らが生きてるうちに完結してくれるかすら」


豊「それは言い過ぎだ」


菜「でも今日はアニメじゃないですからね。実写映画でしかも泣けるラブストーリーですよ」


豊「原作は小説なんだっけ。菜々ちゃんは読んだの?」


菜「映画がよかったら読もうと思ってます。評判いいらしいんですよね。ウチのコンビニでもタイアップ企画色々やってるし」


茂「実写の恋愛映画こそ俺には縁遠いな。やっぱ別のアニメ映画の方観ようってなっちゃん」


菜「駄目です。あたしは実写の方楽しみにしてきたんですから」


豊「諦めろシゲ。俺らに決定権はない」


茂「多数決理念ってもんがあるだろーよ…」




 ――入場時間。




菜「ここですね、三人並びの席。あたし真ん中ー」


茂「じゃあ俺、通路側」


豊「え、俺も通路側がいい」


茂「なんでだよ」


豊「気兼ねなくトイレ行けるから」


茂「俺も同じだわ。先に取ったモン勝ちだ諦めろ裕太」


豊「クソが」


菜「二人ともその歳でもうトイレ事情気にしてるんですか?」


豊「そういうわけじゃないんだけど」


茂「なっちゃんもあと10年もすりゃわかるって」


豊「だから違うっつの」


菜「歳はとりたくないですなあ」


豊「…先に行っとく。ついでに煙草」


茂「あ、俺も吸い貯めすっかな」


菜「もー、これだからヘビースモーカーは…」


茂「こればっかりは勘弁してよ。なっちゃんも行くっしょ?」


菜「行きまーっす」


豊「やれやれ…」




 ――上映開始。そして終了後。




茂「あーやっべ、めっちゃ泣いた」


菜「ボロ泣きしてましたねカナちゃんさん。なんか意外ー」


茂「ジロジロ見んなっつの、恥ずかしいから」


豊「あれだけ楽しみにしてた割に、菜々ちゃんは泣いてないのな。期待外れだった?」


菜「そんなことないですよ。すっごいグッときました」


茂「お前も目ー真っ赤じゃねーか」


菜「あ、ほんとだー」


豊「…いい話だったナー」


茂「ごまかした」


菜「ほんと、いい話でしたよね。やっぱり原作読みたくなったなー。台詞のないシーンのキャラクターの心理描写、どんなト書きで表現されてるのか物凄く気になるし」


豊「なんか物書き視点の深い感想だな」


菜「趣味でちょっとだけ物書きっぽいことしてたことがあるので」


茂「BでLな話?」


菜「そんな頃もありました」


豊「今もだろーが」


菜「今は違いますってば」


茂「腐女子乙」


菜「もー。そういうカナちゃんさんはどうでした?映画の感想は」


茂「百合こそ正義」


豊「別次元で腐ってやがるヤツがここにも…」


菜「百合?映画の中で出てきた花って、桜でしたよね?」


豊「素なのかボケなのか判断しづらいこと言わないでくれ、菜々ちゃん」


菜「ほえ?」




 ――それぞれの胸中。




菜(映画で泣けなかったこと、あんまりツッコまれなくてよかった…)


茂(いい歳して恋愛映画で泣くとか、俺も歳かな…)


豊(煙草吸いてえ…)

「君の膵臓をたべたい」を映画館で鑑賞し終えた後、思いついたネタです。

菜々は映画とか感情移入してめちゃくちゃ泣くだろうなと思ってから、いやそういえば泣きたくても泣けない子だったわと思い直したり。豊島はストーリーに真剣に入り込むだろうけど、途中から煙草が吸いたくなってきて映画に集中できないだろうなと思ったり。茂松は無理矢理に百合要素を見出して食いつくだろうなと思ったり。

もはや筆者の脳内は、この三人の世界ばっかりです。

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