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甘いチョコと、甘やかさない彼女

時系列・・・「涙の魔法」完結後。バレンタインデー目前の土曜日。

いつものように飲みに集まって、のっけから何やら企み顔の菜々。なんとなく察しが付いている茂松と、まったく察していないので戸惑うしかない豊島。

菜々「さて、今年の14日はド平日なわけですよ」

茂松「14日?」

豊島「何かあったっけ?」

菜「もー、これだから魔法使いさん達は……バレンタインですよバレンタイン」

茂「まあ忘れてたわけじゃねーけどよ。今までてんで無縁だったもんだから、毎年気付かねーふりする癖ついただけ」

豊「……そうそう」

茂「しれっと便乗すんじゃねー、ガチで忘れてたくせに」

菜「まあ何はともあれ、ちょっと早いですけどチョコ持ってきちゃいました。手作りなんですよお。はい豊島さんっ」

豊「ああ……ありがとう」

茂「……もうちょい気の利いた返事ねーのかよ」

豊「な、何言やいいんだよ」

茂「ただありがとうじゃなくてさ、その前に『俺のために』って付け足すだけでも、全然違うだろーが」

菜「おおー。カナちゃんさん、わかってますねえ」

豊「……言えるかよ」

茂「シャイボーイ乙」

菜「まあまあ、豊島さんのデレツンはいつものことですから。はい、カナちゃんさんもどうぞっ」

茂「へいへい、本命の裕太のついでチョコだろーと、嬉しいよ俺は」

豊「人の返事に文句付けときながら、自分だってろくに感情こもってねーじゃねーか」

菜「何言ってるんですか。豊島さんのもカナちゃんさんのも、両方本命チョコですよ」

豊「はっ!?」

茂「へっ!?」

菜「開けて確かめてみてくださいよ。中身ほぼ一緒なんですから」

豊「…………本当だ」

茂「待て待て待て。いつぞやのW彼氏状態の頃ならまだしも、彼氏が裕太オンリーになった今となっちゃ、俺に裕太と同じチョコ渡すってどうなのよ」

菜「まるっきり同じじゃないですよ?使ってる材料がほとんど一緒なだけなので」

豊「……見た目は、まるで一緒だけど」

茂「まさかとは思うけど、俺のだけ中身が激辛とかいうドッキリチョコ?」

菜「惜しい」

茂「うわ、食うのが一気に怖くなってきた…」

豊「シゲにドッキリ仕掛けると思わせて、俺の方がドッキリってことも…」

菜「もー、そんなことしませんよ。いいから食べてみてくださいって」

茂「……」

豊「……」

茂「……腹括れ、裕太」

豊「……おう」

菜「二人とも疑り深すぎです」

茂「だって、なっちゃんだし…」

豊「……とりあえず、いただきます」

菜「わくてかー…」

豊「……」

茂「……」

豊「……うまい」

茂「……うん。普通にチョコじゃん」

菜「最初からそう言ってるじゃないですか」

豊「中に入ってるの、いちごチョコ?」

菜「そうですよ」

茂「えっ、俺のはチョコミントだったぞ」

菜「周りのチョコは同じの使ってますけど、中のチョコだけ違うの入れてみたんです」

豊「あー、そういうことね」

茂「疑ってかかったのが申し訳ねーわ。普通に店で売ってるチョコみてーだ」

菜「本当ですか?カナちゃんさんのは味見してなかったんで、出来栄え自信なかったんですよ」

茂「あー。なっちゃんミント系駄目なんだろ。煙草もメンソール駄目だって言ってたし」

菜「そうなんですよ。カナちゃんさんメンソール吸ってるから、チョコミント好きかなーと思ってそれにしたんですけど、作ったあたしがチョコミント苦手なんで味見できなかったんです」

茂「てことはだ、裕太のは味見もバッチリした自信作、ってわけな」

菜「もちろんですよ。大本命なんですから」

豊「お、おう…」

茂「変な妄想すんなよ?」

豊「するかボケェ!!」

茂「ツッコミの勢いが普段より割増しですなあ」

菜「……変な妄想って、何ですか?」

茂「あまーいいちごチョコだけ特別、味見すんのになっちゃんが直接指ですくったのかとか、あわよくばそん時にちょびーっと唾液混ぜたかもとか…」

菜「そそそそんなことしてませんっ!!」

豊「……二口目が食いづらい」

茂「裕太のはなんでいちごにしたの?」

菜「特に理由はないです。あたしがいちごチョコ好きなだけです」

茂「本命がそんなんでいいのかよ」

菜「駄目ですか?」

豊「いや、俺も普通にいちごチョコ好きだし、チョコに特別こだわりなんてねーし」

菜「あまり凝ったもの渡されても反応に困るでしょうし、シンプルな方が喜んでもらいやすいかなーと思って」

茂「両方本命とか言い出すから、どのみち反応には困ったけどな」

豊「ほんとそれ」

菜「さーてっ、ホワイトデーには何がもらえるのかなー。今から楽しみだなー」

豊「……あまり期待しないでね?」

茂「三倍返しが基本だぞ裕太。本命ならなおさら、そこそこのモン用意しねーと釣り合わねーからな」

豊「だよな…」

菜「豊島さんの場合、ホワイトデーを覚えていられるかどうかの次元ですし、お返し用意してくれてたら何だって嬉しいですよ」

茂「ハードルどちゃくそ低いな」

菜「ただし、カナちゃんさんに『そろそろホワイトデーだぞ』って教えてもらったりするチートは使用禁止ですからね」

豊「うっ…」

菜「お返しに何を選ぶかの相談も禁止です」

茂「ハードルのグン上げっぷりがパネエ…」

豊「……な、何が欲しい?菜々ちゃん」

菜「それも自分で考えましょう」

豊「うへー…」

茂「甘やかす気ゼロだな…」

菜「彼氏の務めを立派に果たすことは、そう甘くないってことなんですよ」

二人にあげるチョコレートの中身は、茂松は一発で決まったものの、豊島は少し悩みました。食べて一発で当ててもらえるわかりやすいやつ、とおっさんに優しくしてあげた結果いちごになりました。

何の気なしに決めたいちごとミント。こじつけにこだわりたい派の筆者は、両方とも花言葉か何か関わってくるのでは、となんとなく調べてみました。すると面白いことに、図らずも意味深な言葉が込められていたことが発覚。少しご紹介します。


豊島に送ったチョコの、いちごの花言葉。「尊重と愛情」「幸福な家庭」「あなたは私を喜ばせる」などがあるそうです。

恋人への贈り物にまさに最適。もはやプロポーズに近いのではと思うくらい。そして何より「あなたは私を喜ばせる」のどんぴしゃっぷり。これからも好き放題いじり倒させてもらうんで、あたしを楽しませてくださいね豊島さん、という菜々の本音が込められてしまっていたみたいです。


茂松に送ったチョコの、ミントの花言葉。ミントにも色々種類があるので、それぞれ若干違いが出てくるみたいです。主なところでは「美徳」「温かい心」「かけがえのない時間」だそうですが、和名の薄荷になるとそれに「迷いから覚める」「私たちは再び友達になろう」という意味も込められてくるそうで。

菜々と茂松のこれまでを思うと、なかなか考えさせられるメッセージです。憧れを抱き、職場の先輩後輩以上の友人関係を築き、一時的に仮の恋人になるという過程を経て、再び友人関係に戻った。まさに二人の関係性にぴったりなものでした。


花言葉って面白いですね。ホワイトデーには豊島茂松から菜々に対する感情に添えるような、気の利いたものを贈るネタを考えてみたいです。豊島と筆者がホワイトデーの存在を忘れなければ、の話ですが。

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