【第3回】バトンごっこ
菜々「今回は登場人物の徹底解剖編だそうです」
茂松「それって比喩的な意味で?それとも物理的に?」
豊島「俺らで人体実験しようが誰得だし、そもそも制限無しでそんな描写は無理だ」
菜「二人ともすでに真面目に回答する気ゼロですよね」
茂「だって、要は俺らの設定を徹底的に掘り下げる質問されんだろ?」
豊「で、本編中で伝えきれない俺らのイメージを補足していこうと企んでるわけだ」
菜「やっすい企みですよね」
豊「三人とも呆れちまったら、企画倒れだろ」
茂「そもそもシリーズ総じて誰得な内容だし」
――お三方、どうか真面目にご回答願います。
1)どんな家に住んでますか?
菜「コンビニバイトの収入じゃ家賃払うにもきっつきつなマンションでーす」
茂「の割には、あんま生活きつそうな感じねーよな」
菜「光熱費は無理なく最小限に抑えられてますし、誰かさんと違って無駄に浪費しがちな趣味もございませんので」
茂「誰のことですやらー」
菜「それに金欠の時は、職業柄食費も極力抑えられますので」
豊「やっぱり期限切れの弁当とか、持って帰れたりするもんなの?」
菜「やってるのが公然とバレたら、本当は怒られちゃうんですけどね。いい人なんですよ店長」
茂「さっさと同棲して生活楽にさせてやれよ、裕太」
豊「……考えてねーわけじゃねーけどさ、色々と問題があって」
菜「そーそー。あたしは豊島さんの家に引っ越す気でいたのに、店との通勤距離が遠くなっちゃうから駄目だって、豊島さんが」
茂「過保護か」
豊「うるせー。とにかく、同棲はもう少し先だ」
菜「豊島さんのアパートだったら、二人で暮らす分にはちょうどいいと思うのになー」
豊「ぶっちゃけ、家の中整理すんのに相当気合いが必要で、なかなか手つけられなくて」
茂「あの部屋のどこ片付けるとこあんだよ」
菜「そうですよ。しっかり整頓されてて掃除も行き渡ってて、すっごく綺麗なおうちじゃないですか」
豊「ゲームやらDVDやらフィギュアやら、見えるとこに置いてるやつとしまってあるやつ、総ざらいで整理しねーと気が済まねーし」
茂「秘蔵本は厳重に封印しとかねーとなんねーし」
豊「……ねーよ、そんなの」
菜「ないんですか?薄い本」
茂「あるよ。今度隠し場所教えるわ」
菜「わーい」
豊(最優先でなんとかしないと…)
菜「カナちゃんさん家も綺麗ですよね、意外なことに」
茂「意外は余計だ」
豊「目につくとこは片付いてても、なかなかの量のゴミ溜め隠してっからな」
菜「薄い本もですか?」
豊「それはしっかりカモフラージュしてあって、意外な場所に平気で置かれていたりする」
菜「なんですとお!?」
茂「なんで薄い本ばっか食いついてくんだ、なっちゃん」
菜「てか、豊島さんとカナちゃんさんのアパート、ご近所さんだったじゃないですか。シェアとか考えなかったんですか?」
茂「ぜってー嫌だ」
豊「生理的に無理」
菜「えー?楽しそうなのに」
茂「楽しくなるのはなっちゃんの掛け算妄想だけだ」
2)血液型は?
菜「B」
豊「A」
茂「AB」
菜「綺麗に分かれましたね」
豊「日常系の漫画アニメにありがちなパターンだよな、無駄にキャラの血液型バラけさせるこだわり設定」
茂「ちなみに野田は?」
菜「Oですね」
豊「マジであるあるパターンに寄せてやがったか」
茂「何の怨恨もなく平穏に過ごしてたら、今頃は性格不揃いな四人でほのぼの日常ドラマを送ってたかもしれねーわけだ」
豊「そんな世界線なんか存在しねーよ」
菜「とぅっとぅるー」
茂「違和感なさすぎ」
3)兄弟は?
豊「姉が一人」
茂「野郎三兄弟で、俺は真ん中」
菜「……いないです」
豊「やっぱり」
茂「予想通り」
菜「えっ、あたしそんなに一人っ子感あります?」
茂「甘えたがりなのに甘え下手な辺りが特に」
豊「まさにそれ」
菜「いいなあ兄弟…」
茂「お前んとこの姉貴、もう一人目産まれたっけ?」
豊「いつの話してんだ。とっくに産まれてつかまり立ちまでしてるわ」
菜「やっぱり可愛いですか?」
豊「それがさ、贔屓目無しにめちゃくちゃ可愛い。頻繁に顔合わせることないのに、何故か俺にすっげー懐いてくれるんだ」
茂「図体でけーのに、昔っから何故か子供に懐かれやすいよな、裕太は」
菜「ロリをタラシこむスキルが標準で備わってらっしゃるとは、ロリコン冥利に尽きますなあ」
豊「…甥っ子なんだけどね?」
菜「ショタでも全然アリです」
豊「…身内なんだけどね?」
茂「俺んとこのクソガキどもなんか、ほんっと生意気だぞ。顔を合わせりゃ、やれ戦隊ごっこの悪役になれだの、やれサッカーに付き合えだの、人使い荒いのなんのって」
豊「懐かれてんじゃねーか」
菜「おじちゃん冥利に尽きますねえ」
茂「小学校低学年と幼稚園児のくせに、いっちょまえに色気づきやがって。こないだなんか『まだ結婚してないの!?』とか言われたもんだから『うるせーわ!』って軽くキレたら、兄貴にぶん殴られた」
豊「ガキと同レベルか」
菜「カナちゃんさんの兄弟の話、前からお兄さんの話しか聞いたことなかったんですけど、弟さんもいるんですよね?」
茂「いるにはいる。なっちゃんの何コか下じゃなかったっけか」
豊「結構離れてんだな」
茂「そいつもご多聞に漏れずばっちり色気づきやがってよ。学生時代から付き合ってる彼女と、結婚秒読みらしいわ」
菜「板挟み状態なんですねえ、次男坊カナちゃんさん」
豊「行き遅れた方の子を見る親の目ってのは、めちゃくちゃ心に刺さるんだよ、菜々ちゃん」
茂「そーそー。一人っ子が兄弟に憧れる気持ちはわかるけど、兄弟なんていない方が実は気楽なんだぞ」
菜「あたしの場合、離婚したり色々あったりしたんで、心配した親からそんな目で見られてますけどね」
豊「俺らなんかとは事情が格段に違うからな…」
茂「なっちゃんの親が次の彼氏に掛ける期待は、生半可なレベルじゃねーってこと、覚悟しとくんだぞ?」
豊「……プレッシャー半端ねえ」
4)私服のこだわりは?
茂「なっちゃんくらいだろ、こだわってんのは」
菜「全然こだわりなんてないですよ」
豊「そうか?普通におしゃれな服着てくるじゃん」
菜「ほとんど奈津美に選んでもらってるんですよ。あんたいい歳してテキトーな服着ないの!こういう服着なさい!って感じで」
茂「やっぱ母親だわ」
菜「カナちゃんさんだって割とおしゃれな方じゃないですか」
茂「見た目いかにもオタクっぽく見られねーように、それっぽい服選んでるだけ。まともそうな奴の見よう見まねだよ」
菜「いかにも秋葉系な格好とか、普通に似合いそうですもんね」
茂「そういうのは裕太に着せてやれ」
豊「…チェックのシャツでも着ればいいのか」
菜「豊島さんは似合わないと思うけどなあ。ガタイよすぎるし」
茂「てかさ、常々疑問に思ってたけど、なんでパーカーばっか着るんだよお前は」
豊「なんでって、楽」
茂「そんだけ!?」
菜「色違いとかデザイン違いとか意外と豊富に持ってるのに、みんなパーカーなんですよねえ」
茂「秋葉系の服着せてみるより何より、まずこいつのパーカー縛りセンスをなんとかしてやれよなっちゃん」
菜「うーん。買い物デートで服選んだりすることはあるんですけどねえ。どうもやっぱり、パーカーのイメージが定着しちゃってて、違う系統の服合わせてもなかなかしっくりこなくて」
豊「で、買い物行くたびに俺のパーカーストックが充実する」
茂「駄目だこいつ…早くなんとか…」
菜「ならないでしょうね、豊島さんは」
豊「……なんか、ごめんなさい」
5)茂松さんの彼女にはどんな人がふさわしいと思いますか?
茂「やめてー。露骨なぼっちいじりやめてー」
菜「最低限、オタク趣味に理解がある人じゃなきゃ駄目なんでしょうね」
豊「もはや趣味に付き合ってくれる人がいいなんて贅沢言ってられねーしな」
菜「せめて百合好きは改善しないとですね。ある程度理解してくれる人だって、同性愛ばっかりはさすがに抵抗を感じる人が大多数でしょうから」
豊「俺も抵抗ある派なんだけど」
菜「それを理由にあたしのこと嫌いになったりします?」
豊「しない。だって、今さらだし」
菜「豊島さんはある程度知識が備わってますし、同性愛好きな人との付き合いに慣れてますからね。これが何の前知識もない非オタな彼女さんだったら、恋人関係の修繕なんて不可能なレベルでドン引きされること、請け合いですよ」
豊「確かにな」
菜「深刻な問題ですよねえ…」
豊「どうしたもんかねえ…」
茂「……聞いてる?」
6)豊島さんのロリコン趣味は改善すべきだと思いますか?
豊「だから、俺は、ロリコンじゃ、ない!」
菜「時々、本気で心配になるんですよ。デート中にどこかから聞こえた小さい子の声に反応して、ふーっとそっちを見たりする豊島さんを見てると」
茂「そん時のガキの年齢層は?」
菜「高確率で未就学児童です。しかもそのくらいの子って、声だけだとロリかショタか聞き分けられないじゃないですか。なのにほぼ間違いなく幼女にしか反応しないんです」
茂「高性能すぎるな、ロリコンレーダー」
菜「さすがに下心はないとは思いたいんですけど、アニメに登場するロリキャラは超真顔で堪能するし、軽量キャラが扱いやすいとかもっともらしい前置きわざわざ入れて格ゲーでは幼女キャラばっかり使うし」
茂「さすがにネタじゃ済まされねー領域かもしんねーな…」
菜「ゆゆしき事態ですな…」
豊「……聞き入れてくれないことくらい知ってた」
7)最後に菜々さん、豊島さんと茂松さんの掛け算妄想を好きなだけ語ってください。
菜「掛け算って言うのはやっぱり攻め受けをどっちにするかが物凄く大事なんですけど、お二人の場合はどちらを前にしても後ろにしても遜色がないんです。いわゆるリバって奴ですね。どっちが正統カプなのかは一概には決めがたいんですけど、あたしは前々から茂×豊派なんです。そりゃ豊×茂も捨てがたいですよ?身長差のあるカップリングの王道といえば、やっぱり背の高い方が攻めっていうのがセオリーですから。壁ドンなんかも画的に映えますからね。実は体つきも微妙に違うっていうのが、これまた絶妙にいいんですよ。背丈はそんなに差がないのに、豊島さんの方が若干筋肉があって、カナちゃんさんはかなり線が細い。初対面の人に『このお二人の攻め受けをお答えください』って言えば、ほぼ間違いなく豊×茂という答えが返ってくると断言できるほど、見かけで言うとまさに王道の組み合わせなんです」
茂「なっちゃん、ラストオーダー何頼む?」
菜「冷や三合でお願いします。それでも、それでもですよ?あたしが是非とも推奨したいのは茂×豊なんです。これはあたしの妄想内で検証に検証を重ねて、お二人の人柄を綿密に研究し尽くして、途方もなく長い時間を費やして導き出した答えなんですよ。やっぱりお二人が一線を画した関係を築くきっかけを作れるのは、カナちゃんさんの方が適任だと思うんです。具体的な展開例を一つ挙げるとすると、カナちゃんさんがいつものように豊島さんをからかっているうちに、ふと特別な感情が芽生え始めたことに気付いて、本能の赴くがままにあーんなことやこーんなことをいたしてしまうわけなんですなあ。そんな展開に巻き込まれた時に遺憾なく発揮されるであろう、豊島さんに備わっている受けの素質というのも、優秀なことこの上ない。ありがちな組み合わせの代表例として、落ちこぼれ部下×エリート上司なんてのは、王道中の王道ですからね。ふざけたがりでお調子者のカナちゃんさんと、真面目で常識人の豊島さんを掛け合わせるなら、そんな王道に則ってあたしは茂×豊を全力で推していきたいんです」
豊「ごめん菜々ちゃん、煙草一本ちょうだい。切らしちゃった」
菜「ツケておきますね。とにかくあたしは、これだけは声を大にして言いたい!お二人の掛け算は無限の可能性を秘めていると!青春時代を共に過ごしてきた腐れ縁でしかも同僚。なんの気兼ねもなくプライベートも共有できる親密ぶり。おまけにこれまでは寂しい独り者同士として肩を寄せ合っていた関係から、片割れが異性の恋人を得たことによって、少しずつ変化していってしまう二人の関係性。それまで長い時間を掛けて築き上げてきた二人の固い絆が、あたしという障害によってさらに形を変えていくんです。お互いを見る目が少しずつ変わっていくことへの戸惑い、不安、かつての二人の関係のままでいる方が満ち足りていたと気付かされてからようやく知ることになる禁断の感情!このまま世間体を建前に異性の恋人が出来たと満足したふりをして、カナちゃんさんに対する自分の本当の想いから目を背けたままにしていいんですか豊島さん!?親友の幸せを陰で支える立場でいようと妥協して、かけがえのない時間を共にしてきた豊島さんを簡単に手放しちゃっていいんですかカナちゃんさん!?後から自分の気持ちに気付いたって、あの頃に戻りたいと強く願ったって、もう何もかも遅すぎるんですよ!わかってますか二人とも!?」
豊「……」
茂「……」
菜「……」
豊「……あ、もう終わった?」
茂「わりわり。ストップウォッチ準備してたけど、スタート押すの忘れてたわ」
豊「まあ新記録だろ。計らなくてもなんとなくわかる」
茂「こんだけ喋らせときゃ、当分この話題は聞かずに済むな」
菜「なんで聞いてくれないんですかあ!!いっつもいっつもおー!!」