ドS彼女
時系列・・・「涙の魔法」完結後のとある土曜日。
豊島と茂松を心ゆくまでいじり倒すのが大好きな菜々。そんな彼女が何やら彼らに主張したいことがあるそうです。
菜々「この際はっきりわからせてあげます」
豊島「何を」
菜「あたしがSじゃなくて、Mだってことをです」
茂松「唐突すぎね?」
菜「そもそも、あたしのどこがSっぽいと思うんですか?二人とも」
茂「俺らを二人まとめて彼氏にしたとこ」
豊「容赦なくいじり倒すとこ」
菜「確かに、そんな一面もあります」
豊「ほぼそんな面しか見せてない気がするけど」
茂「逆にさ、これだけは誰がどう見てもMってとこあんの?なっちゃんに」
菜「ありますよ」
茂「例えば?」
菜「二人に挟まれて並んで立った時に、身長差で見下ろされながら話してるとぐっときます」
豊「わかりづらい…」
菜「豊島さんに真面目にお説教されてる時は『もっと叱ってー!』って思ったりしますし、カナちゃんさんに馬鹿にされて笑われてる時は『もっとからかってー!』って思いますもん」
茂「無理矢理M主張しようと話盛ってねーか?」
豊「それな」
菜「むー…」
茂「無理しねーでSだって認めちゃえば?」
菜「だからMなんですよあたしは!普段から人に言えないレベルのM妄想しまくりなんですから!」
豊「んなこと堂々と言われても」
茂「その宣言自体Sだわ」
菜「あたしが絡むM妄想するついでに、豊島さんとカナちゃんさんのめくるめく薔薇色妄想も堪能しつつ…」
豊「掛け算禁止!」
茂「腐女子乙!」
菜「あー、それそれ。二人に全力でツッコんでもらうのも、M心にぐっとくるんですよ」
豊「…ツッコませたくてわざとボケたくせに」
茂「やっぱSじゃねーか…」
菜「もー!こうなったら奥の手を使います!」
豊「どんな手?」
菜「こないだ『男子に言わせたいドSなセリフ百選』ってまとめサイト見つけたんですよ」
茂「それ読んで影響されて唐突にSM談義を始めたわけだ」
豊「なるほど」
菜「なので、この記事の中であたしが気に入ったセリフを二人に言ってもらいます」
豊「それなんて公開処刑」
茂「言わせる側のSっぷりがパネエっす」
菜「つべこべ言ってないで、まずはカナちゃんさんからです」
茂「へいへい。どれどれ?」
菜「このセリフでお願いします」
茂「……『お前が好きなのは俺だけなんだろ?だったら他の男といちゃついてた罰与えても、文句言えねーよな?』」
菜「うきゃー!堪らんですうー!」
豊「はっず」
茂「うっせー。こういうのは大抵二番手が余計恥ずかしいこと言わされるだろうから、先に済ませたんだ俺は」
豊「え」
菜「じゃあ豊島さんは、このセリフです」
豊「…………うわあ」
茂「な。俺のがまだマシだったろ。あんま変わんねーけど」
菜「豊島さんは大本命なんですから。持ち前の低音ボイスであたしのM心をがっつり掴むように頑張ってください」
豊「ハードル上げないでください…」
茂「シャイボーイな裕太にはハードすぎるわ。イケボとか感情込めてとか注文抜きにして、読み上げるだけで勘弁してやれ」
菜「ぶー……じゃあとりあえずお願いします」
豊「……『余計なこと考えないで、俺だけ見てりゃいいんだよ。そしたらお前が望む通り、好きなだけ愛してやる』」
菜「はにゃー!幸せすぎますうー!」
豊「あー…なんなんだ、この喪失感は…」
茂「MP吸い取られた感半端ねーよな…」
菜「めっちゃくちゃ回復しましたよ、あたしは」
豊「でしょうね」
茂「攻撃としてMP吸い取る行為はSがすることなんじゃねーの?」
菜「……それもそうですね」
豊「はい論破」
何を隠そう、このネタを提供してくださったのは、豊島のモデルになった御方なのです。お題をもらって小説を書きたいという話を彼にしたところ、特に悩むことなく「じゃあドSで」と返ってきました。むしろその際のやり取りのスピード感といったら「安価」「ドS」「把握」の2文字フレーズたった3ターンで済みました。
これを彼に読ませたのは、菜々が奥の手を使う前までの前半部分だけでしたが、面白いと言ってもらえました。実は初めて彼にまともに私の小説を読ませた作品がこれなのです。日頃から創作活動をされている方から感想をいただくのと、創作に全く関心のない人に読んでもらって「すげーな」とだけ言ってもらうのとでは、思ったより満足度に大きな差はないものなのですね。彼だから特別、というわけでは決してなく。