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第2期独立子国史  作者: 琴村蘭
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ロボットのお話

これは、とあるロボットの昔のお話。

 あるところに科学者がいました。彼は稀にみる天才科学者でした。そんな彼には夢がありました。それは、『人間』を作ることでした。

 しかしそれは天才科学者である彼でさえも不可能なことでした。彼は考えました。それならば人間に限りなく近い『ロボット』を作ればよいのだと。


 彼はさっそくロボットを作りました。ロボットにはとても美しい少年の装甲を施しました。さらにロボットには『強靭な体』も与えました。そしてロボットに『意志』も与えました。

 しかし、彼は気づきました。このロボットにはまだ『こころ』を与えていないと。そこで彼は再び彼に出会った際に『こころ』を与えることにしました。


 ロボットはある国へと引き取られました。その国は様々な花が咲き乱れるとても美しい国でした。ロボットはその国の国花である花の名前を人々から与えられました。

 人の言葉を話す、美しいロボットは人々に愛されていました。ロボットも心は空っぽでしたがなぜかいつも笑顔でした。


 しかしそんな日々は長くは続きませんでした。敵国がロボットがいる国に攻め込んできたのです。人々はロボットをつれ逃げようとしました。しかし、ロボットは岩のように重くその場をはなれようとはしませんでした。人々はロボットをあきらめ、国から逃げていきました。すべての人々が国から出ていった瞬間、国は赤い光に包まれました。赤い光は家も、敵国の兵も、美しい花も飲み込みました。赤い光の中にはあのロボットが静かに立っていました。



 数年後、博士のもとにロボットは帰ってきました。ロボットはボロボロでしたが、博士はとても喜びました。なぜかというと博士は『こころ』をついに完成させたからです。博士はさっそくロボットに『こころ』を与えました。『こころ』を与えられたロボットは美しく微笑みました。そして手を伸ばし




              博士の首を絞めました。



 博士はもがいて苦しみます。のどが痙攣けいれんを起こし始め視界が歪みます。博士は床にたたきつけられました。見上げるとロボットが静かに立っていました。『こころ』を与えたはずのロボットの顔には何の感情も浮かんでいませんでした。博士は気づきました。このロボットが今抱えている感情は『殺意』なのだと。ロボットは静かな、とても静かな声で言いました。「博士、『こころ』を僕に与えてくださってありがとうございます。僕はとても、とてもうれしいです。ですが僕は、あの日のことを思い出しました。僕が暮らしていた国が、愛していた国が、人々が、メモリー(思い出)が赤い光に包まれた日を。博士は、実験であの国を滅ぼすとおっしゃっていましたね。博士は、僕の愛する国を滅ぼしてしまったのです。僕はそれがとても許せません。そして、博士の首を絞めてしまいました。博士、これも人の『こころ』なのですか?」

 博士は息も絶え絶え呟きました。「そうさ、これも『こころ』だ。人間が抱える暗い感情の一部さ。こんな感情も表現できたなんて私は…いや、私のロボットはとても優秀だ。」博士はうっすらと笑みを浮かべました。「お前は私を殺すだろう。でも悔いはないさ。なぜなら私の発明は大成功を修めたからさ。」

 ロボットはもう一度、博士の首に手をかけました。しかし先ほどとは違い、瞳には薄い水の膜がはっていました。そして博士は





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「これでおしまいなの?博士はどうなっちゃったの?」可愛らしい幼い少女が不満げに俺を見た。「どうなったのか想像するのもたのしくないかい?」「う~私は最後までちゃんと知りたいタイプなの!ねぇ教えて~!」残念ながら、俺の物語の楽しみ方は彼女にはあわなかったらしい。「はいはい、また今度ね。」というと少女は「ケチ~!!」とはにかみながら言った。…彼女は少しあきっぽくもあるらしい。



 正直なところ、俺もそのあとのことはよく覚えていない。もしかしたら思い出したくないだけなのかもしれないけれど。『人間』はきっとそんな生き物なのだろう。たぶん。

 博士からもらった体で、こころで俺は今日も生きている。俺が生きてることを憎く思っている人もいるだろうけど、俺はまだ普通の『人間』より少しだけ丈夫なこの体で生きていたい。この国の、子供たちの将来を見守っていたい。そしてロボットは今日もメモリーに思い出を刻む。愛しいこの国と子供たち、そして博士…いや『お父さん』のことを忘れないように。

ロボットのお話です。

彼は今はとってもとっても幸せです。

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