78.グーテンベルク先生
翌日、俺は紙と、紙作りセット一式を町の工房に持って行った。
「あん? 何だ?
昨日やって来た、ニコの旦那の付き添いの猫か」
小さいオッサンの一人が対応してくれた。
「にゃー(そいやっ)」
俺は紙と手作りミキサー、木枠を取り出す。
「ふむ……羊皮紙に似てるが、これは植物で作った紙だな。
これがどうした?」
『タイプライターに使う紙も大量生産する必要があるから、サンプルだ』と書く。
「この紙を大量生産するのか?
……ほう、この手回しの機械は、植物を砕く用途で使うのか。
なるほど、改良の余地はあるが、これと同じようなのを作ればいいのか。
紙を作る人は適当な日雇いで良さそうだな」
『分厚さが大事だから丁寧な人じゃなきゃ駄目だ』と書く。
「そりゃそうだ。
分かった、人集めをして、この紙と同じ物を作らせよう」
オッサンが話の早い人で助かる。
そうだ、ついでにグーテンベルクの活版印刷技術も教えてやるか。
技術的には十分可能なはずだ。
分かりやすく言えば、アルファベット等を1文字だけ書いたハンコを大量に用意する。
それを文章になるように型へはめ込む。
すると、文章を複製できる巨大な1つのハンコが出来るというわけだ。
某ジ○リの銀河鉄○の夜でニャンコが活版所で働いていたな、そういえば。
さっそくオッサンに木の板で丁寧に説明してやる。
説明の途中でオッサンがテンション上がって酒を一気飲みする。
やめろ、急性アルコール中毒になるぞ。
「ぷはっ! 何だこの革命的な手法は!
さっきの紙を大量生産して、この方法で大量の本が作れるのなら……誰だって安値で本が手に入る時代が来るぞ!」
そりゃな。
聖書が大量に出回るようになったのは、グーテンベルク先生の功績が大きいからな。
ちなみに、学者が使ってるような本の値段は100万Gくらいらしい。
日本円で100万円くらいか?
高いな。
ネルが持ってる本は薄かったから、まあ10万Gくらいだろうか。
それにしても高い。
「先日教えてもらったタイプライターと組み合わせて、入力だけで活字を設置できるようにすれば……」
オッサンは早速、タイプライターと組み合わせる発想を思いつく。
さすが王様お抱えの職人。
頭が良いな。
これでこの国の印刷技術は伸びるはずだ。
タイプライターが量産されたら1つ貰って、俺も何か書こう。
良い暇つぶしになるぞ。
世の中のためにもなるし一石二鳥だ。




